第2話 ゾンビ化? ヤンデレ化?
「『剣豪』を持つあなた、名前は何ですか?」
「
「それはおって話します。まずは、そうですね。盛大な打ち上げでもしましょう。あなたの望むものすべてを差し上げますよ。ただし、私たちにお力を貸してくだされば。――もちろん、私も参加しますよ」
すると女は、豊満な胸を権蔵に見せつけた。
ごくりと生唾を飲んだかのように喜び始める。
しかし俺と同じ浮かない顔をしている同級生がいた。
クラスメイトの藤崎
俺と違って学年で有名な美少女だ。頭もよくて、ただ少しばかり正義感が強く、それで何度か権蔵や気の強い女子と喧嘩しているのを見たことがある。
怯えて、震えている。
彼女はこんな世界の事なんてまったくわからないはずだ。
俺は、そっと近づこうとした。
するとそこでなぜか権蔵が、藤崎さんに近づき、右腕を掴んだ。
「きゃっああ――」
「よぉ、藤崎お前のスキルは何だ? これ、他の奴らのスキルは見れないのか?」
「自分だけしか見えませんね」
ほう、と笑う権蔵。藤崎さんを掴んで、スキルを聞き出そうとしていた。
気づけば俺は駆けていた。
「その手を放せよ、権蔵!」
「何だ霧島か、弱虫がどうした? ――オラァ!」
すると権蔵の手が光り輝いた。俺は黒い剣で切りつけられて吹き飛ばされる。
腕から血が流れていく。何だコイツなんでいきなりこんなことができるんだ!?
「ハッ、すげえこれが『剣豪』か。それになんか興奮してきたぜ。――おい藤崎、早く答えろ!」
「い、痛い! ……『光耐性』と書いて――」
「何だそれ? おいこいつのはつええのか?」
「残念ですが、ハズレですね。熱に少し強いくらいで、レベルあげても『炎耐性』には遠く及びません」
「そっか。じゃあ、こいつはいらねえか」
僕は身体の力を振り絞りながら立ち上がる。そして、ふたたび駆けた。
だが辿り着く前に、権蔵は藤崎さんを放り投げる。
僕は思い切り受け止めるも、壁に激突して、背中からぶつかった。
「ハッ、雑魚が」
そのままクラスメイトたちは「当たり」と言われて、権蔵たちと神官と消えていく。
残った僕と藤崎さんに、神官たちが近づいてくる。
「ハズレは飛ばします? 証拠は残さないですよね」
「そうね。よろしく頼むわ」
「な、何をする――ぐぁぁつああ」
すると兵士たちは、驚いたことに僕たちを剣で突き刺した。
ありえない、なんでこんな――。
「おっと、これぐらいにしとかないとな。ここで死なれたら面倒だ。よし、適当に
その言葉の後、僕と藤崎さんはまた光に包まれた。
目を覚ますと森の中だった。
急いで身体を起こすと藤崎さんが倒れている。
血を流して、腕を掴むと凄く冷たい。
「藤崎さん! 大丈夫!?」
声もあげられないほどの重症だ。
おかしい。でも僕も刺されたはずだ。なのになんで、痛みがないんだ?
いや、そんなのはどうでもいい。それより、どうしたら――。
そうだ。スキル――。
「ゾンビ、って何が出来るんだよ」
そう叫ぶと、目の前に文字が浮かびがった。
【 スキル 】
噛みつくことで部下にすることができます。
僕は、ゾンビ映画を思い出した。
映画ではおそろしいほどの自己再生を持つ。
ゾンビ化すれば治る? いや、でも――。
考えている暇はない。
「――藤崎さん、ごめん」
僕は、藤崎さんの首にかみついた。
血を吸っているというよりは、
やがて、藤崎さんの血行がよくなっていくのがわかった。
すると、声がする。
【 部下を手に入れました。レベルが上がります】
【 名前 】 霧島 真悟
【 スキル 】
【 レベル 】 2
【 力 】 10
【 魔力 】 10
【 部下 】 1人
【 手に入れた
目の前に【ステータス】が表示された。
部下1人? 光耐性って、藤崎さんが持っていたやつじゃ――。
「……ん」
「藤崎さん!?」
驚くべきことが起こった。藤崎さんの身体から流れていた血が戻っていくのだ。
これが、ゾンビ化?
いや、まず――。
「大丈夫!? 藤崎さん!?」
「……大丈夫……です」
「良かった……本当に良かった」
よくわからないが、ゾンビはやはり部下にすることで自己再生能力を強くできるらしい。
部下1人って、どういうことだろう。
するとそのとき、藤崎さんがなんと、僕に抱き着いてきた。
「
「ごしゅ――え!?」
引きはがそうと思ったが、もの凄い力だった。これが、女の子の力……か!?
「ずっと、ずっと好きだった。霧島くんのこと。ずっとずっと。でも、今はもっと好き。凄く好き。愛してる。ねえ、好き」
するとそのとき、またもやステータスが見えた。
これは、俺じゃない――藤崎さんの!?
【 名前 】 藤崎 雫
【 状態 】 ゾンビ状態
【 スキル 】 光耐性
【 レベル 】 1
【 力 】 10
【 魔力 】 10
【 手に入れたスキル 】 自己再生能力、身体強化、
この
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