天津風 あまつかぜ

４

「あ」

　宵は逢瀬くんの姿を見た瞬間に、その姿をふすまの後ろにすぐに隠した。

　それは、あまりにも気を抜いた普段通りの格好を（ペンギンの柄の入ったセーターにジーンズ）宵がしていたからだった。

　でも、神社の中にいた三人は、もちろん、宵のことに気がついた。逢瀬くんとも、目と目がばっちりとあってしまった。

「宵。どうかしたの？」

　ふすまの向こうからお父さんの声が聞こえる。

「なんでもない」

　宵は言う。

　それから宵は（大変、失礼だとは思ったのだけど）顔だけを出して、「こんにちは」と逢瀬くんと逢瀬くんの隣にいる大人の男の人に挨拶をした。

　その大人の男の人は、どうやら逢瀬くんのお父さんのようだった。

「こんにちは」と逢瀬くんのお父さんは言った。

　逢瀬くんは小さく頭を宵に下げただけだった。

　それから宵のお父さんが「確か、暁くんと宵は同じクラスだったよね？」と逢瀬くんに言った。「そうです」と逢瀬くんは端的に答える。

　すると、逢瀬くんのお父さんが「暁。ここはいいから、山野さんのお嬢さんと一緒に、少し散歩でもしてくればいい。あとの話は私が山野さんとしておくから」と言って、それからにっこりと笑って、宵を見た。

「え！？　いや、……でも」

　その逢瀬くんのお父さんの提案自体はとても嬉しかったのだけど、あまりに突然のことで、宵はなんだか自分がどうしていいのか、よくわからなくなった。

「わかった」

　逢瀬くんは逢瀬くんのお父さんにそう言うと、宵のお父さんに頭を下げてから、移動をして、宵のすぐ目の前までやってきた。

　宵は逢瀬くんから、今の服装をまだ隠したいと思っていたのだけど、それはさすがに無理だった。

　逢瀬くんは神社の外に出ると、ゆっくりとふすまを閉めた。

　それから宵のことを見た。