第一章 分岐点③
連れてこられたばかりのフィリオは、中々眠りにつくことが出来なかった。そんな夜はフィリオを
そうした日々を
けれどもやはり、両親を一度に
私に気づかれないように、部屋の
そして小さな手を握り締めて、「フィリオのお
最初はフィリオに厳しい言葉を浴びせ冷たい態度を取っていた母も、私がフィリオを可愛がり、フィリオが私に懐く様子を見て態度を
私はそんな母が、元々の優しい母に戻ったと
フィリオが家族の一員になった日からおよそ半年後、フィリオは六歳の誕生日を迎えていた。とはいってもその日は母の圧力があったのか、
私からのプレゼントは何にしようと
「お
どこか行きたいところはあるかしら、とフィリオに尋ねて返ってきた答えはそれだった。聞けば、過去一度両親が
じわ、と
「そう、わかったわ。お父様ならお墓の場所もご存じだと思うから、聞いておくわね」
父の仕事の合間に
「フィリオの父親は、母親と
そう言って故人を
誕生日当日は朝一番でお墓参りに向かった。墓所は
二人で前日に作っておいた
お父様を守っていただきありがとうございます。
フィリオは私と一緒にたくさんのことを勉強しています。
フィリオはとても
これからも健やかに育つよう一緒に見守ってください。
そう報告して、真っ青な空を見上げた。
母のみならずディボルフ公爵家のフィリオに対する風当たりは強く厳しい。それでもフィリオは
このままではいけないと思ったからこそ、まだ剣を
午前中をその墓地で過ごした私たちは、城下町のレストランでお昼を食べ、そしてフィリオが過去に両親と立ち寄ったという店を
「お義姉様、ありがとうございます。ところで、この
色違いで私の分もどうかと遠回しにおねだりされたが、私はそれをやんわりと断った。
「ごめんなさい、フィリオ。おそろいのアクセサリーは
「はい……」
しょんぼりと
子どもの
一人反省しながらフィリオの足の向くまま城下町を散策していると、とある家の前でフィリオが立ち止まる。そこはフィリオが家族三人で住んでいた借家だった。
城下町巡りをしたフィリオの誕生日の夜、フィリオは久しぶりにベッドの中で涙を流した。懸命に泣いていることを
「フィリオ、泣いていいのよ」
「うぅ……っ」
フィリオはとても
「毎年一緒にお墓参りに行きましょう。フィリオの成長をご両親にもしっかり見ていただきましょうね」
「……今日は、楽しかったです。ありがとうございました、お義姉様」
そんな姿に胸を打たれながら私は
「フィリオが楽しかったなら、良かったわ。フィリオ、お誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。義弟になってくれて、ありがとう」
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