第一章 分岐点②
「では、
「はい、お父様。初めましてフィリオ、私がこれから
私のほうが年上なのだから、お姉さんらしくしっかりしなくては、と思いながら
「よろしくお願い
紹介された男の子は最初おどおどした様子だったが、私が差し出した手におずおずと自分の小さな手を
その手の温かさに胸がきゅうと締め付けられる。紹介されたフィリオは線が細く、美少女と
「お
「はい……お義姉様」
「こちらにいらっしゃい、一緒に遊びましょう」
「はい」
ひとめでフィリオを気に入った私は、握った手を軽く引いて応接間をあとにする。
義弟が出来て私はひたすら
母からは貴族に見くびられないよう
けれども他家と接点のないフィリオが来てからはそうした遊びもこっそり出来るようになったし、相手がいないと遊べないボードゲームも、いつでも自由に出来るようになった。人形遊びもカードゲームも乗馬も、フィリオはなんでも付き合ってくれた。そしてそんな遊びを通してフィリオが
権力が集中している母の家門のディボルフ公爵家に対し、フィリオを
当時の私は、母の王座に対する並々ならぬ
「お義姉様、今日もお勉強の日なのですか?」
まだ幼いフィリオは私に懐くと、逆に
「ごめんなさい、フィリオ。夕方になったらまた、
八歳の私には、あまり自由がなかった。自由になるのは、学問の間の
講義を終わらせ部屋を出ると、フィリオは
こうしてフィリオは、私が講義を受けている最中は傍で大人しく一人用の
「お義姉様、今日の講義ではなぜ出題に関係のない過去の季節や天気について
「ああ、あの場合の
「なるほど、流石お義姉様です」
母が私に王たるものの知識を
父は私を
フィリオだけが私と共に成長し、そして
知識を詰め込むだけの
「お義姉様は必ず、とても
フィリオだけは、私が「聖痕持ちだから」ではなく「努力をしているから」善王になると言ってくれた。
「ありがとう、フィリオ。けれども私、本当は勉強が苦手なのよ」
「ええっ? そうなのですか?」
私の
まだ幼い義弟ならば、
「ええ。お母様に
実際、学べば学ぶほどそう感じることも多い。どんなに権力があっても、国民全員を幸せになんて出来るわけがないのだ。
勿論それを目指して
「それなら僕は、将来お義姉様が幸せになるよう、早く大人になって
フィリオはごく
「そんな、お母様の言葉を額面通りに受け取らないでいいのよ?」
フィリオはレアを支えることだけを考えて生きなさい、という母の教育がフィリオに行き届いたことを知り、胸が痛んだ。
第二の私にさせるつもりはない。フィリオには、もっと子どもらしくいて欲しい。
「違います、心からそう思うのです!」
ムキになるフィリオの小さな身体をぎゅっと
「ええっ……」
フィリオはショックを受けたような表情を
フィリオの
「フィリオがそんなに早く大人になってしまったら、少し
そう伝えると、私たちはその日も二人で深い眠りに落ちた。
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