第一章 分岐点①
私は、一国の王である父、オズワルド・ウェインザーと、
代々男が王座につく王国であったにも
「レア、私の
母はそう言って
聖痕は、この国に
長い歴史の中でその証を持った十人の王は
そのため、聖痕を持った者は末子であったとしても、王族ではなく貴族の家門に生まれたとしても、後継者として
よって聖痕の発現自体が、身分に関係なく将来王となることを国が認めるということと同義となった。それほど、アヌカルンダにおいて聖痕の
アヌカルンダではここのところ、聖痕を持たない王が三代続いていた。よって私の父も、聖痕持ちではない。しかし私は父を、多少気が弱いところや押しの弱いところはあっても、人情に溢れ、人の話をよく聞き、
そんな中生まれたのが、聖痕持ちの私だった。
聖痕が女に現れたのは初めてのことだったが、母やその後ろ
母は元々王家から独立したディボルフ公爵家の人間で、王家の血を引いているという意識が強く気位も高い人だ。そのため必ず女王になるのだという、自分に対する母からの大きな期待を感じながら私は育った。
そして母が父と私室で言い合いをしているところを何度か見たことがあったが、
「なぜわざわざ王家に
「レナータ、少し声を落としなさい」
その日も、そんなやり取りが応接間から
「お父様、お母様」
「あら、レア。少しうるさかったかしら、ごめんなさいね」
「ああ、レア……すまないが、今は少し席を外してくれないか?」
父は部屋に入った私にそう声を
二人は、フィリオという男の子を家族の一員として引き取るかどうかで
フィリオはつい最近まで、
しかし先日、勤務時間外で街に出ていたフィリオの母親が
そしてその爆発で、視察に向かう予定だった私の父は護衛の多くをその爆発のあった現場に
結局護衛一人の
本来であればフィリオの父親の生家である
フィリオの父親は騎士を
女性騎士との
母親が身分を手に入れフィリオが生まれたといっても、許されないまま結婚した二人は、父親の生家と
このままいけば両家ともフィリオの養育権を
「単なる貴族が王族の養子になるなど、聞いたことございません。それに、ひとつの家門を優遇することとなれば、陛下こそが非難を受けますわ!」
母は父にそう食ってかかる。母の
「ひとつの家門の優遇とは? フィリオは、本来後ろ盾となるべき伯爵家からも子爵家からも見放された身だ。そうでなければ、そもそも私が保護する必要などないだろう。そんなフィリオを迎え入れたところで、私がどの家門を優遇したことになる?」
「では、その伯爵家か子爵家に命じればすむ話ではないですか!」
「確かに私が命じれば、どちらもそれに応じるであろう。しかし、そんな『命じなければ
「そんなこと私の知ったことではございません! なんの関係もございませんもの!」
「フィリオの父親は、私の親友だった。そして、私を守って私の目の前で死んだのだ。それなのに、なんの関係もないと?」
「それは……」
父にそう
ある日には、
「オズワルド陛下、陛下には
母に呼ばれたディボルフ公爵はコホンと
「直接血の繋がった聖痕持ちのレアと、直接的な血の繋がりはなく聖痕も持たない遺児を比べて何になる? 聖痕持ちでさえあれば、性別や生まれなど関係ないことは、お前たちもよくわかっているだろう?」
「も、
「確かに、国民の声は大事だな」
「ええ! そう、その通りです」
ディボルフ公爵は自分の言葉に同意を示した父に大きく
「私も
「……!」
「フィリオの母親は元平民だ。そんな子どもを王族に招き入れたところで、王になれないことはわかりきっている。しかし、国民はどう受け取るだろうな。他人の子どもを引き取り余計な争いを招く
父の問いに、ディボルフ
「し、しかし、聖痕を持たないオズワルド陛下がこうして今無事に天下を治めていられるのも、我が家門が後ろ盾となったからこそだということはゆめゆめお忘れなきよう」
それは結局、負け犬の
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