この世界は現実で、ファンタジーなんてなくて、ただ、そこには空想があった。
この世界は現実で、ファンタジーなんてなくて、ただ、そこには空想があった。
俺はマジシャン。
魔法のような体験を届ける、誇り高き魔術師だ。
そうだな、どうして俺が魔術師をやっているのかについて語ろうじゃないか。
最初に出会ったのはサーカスだった。
きらびやかなショウ、不思議な技の数々。
そこで出会ったマジシャンに、俺は魅せられたのさ。
幼い頃から本の世界にのめり込み、ファンタジーを夢見ていた俺が、のめり込まないわけがなかった。
マジシャンをやっていれば、いつか本物のファンタジーに出会えると信じて、技を磨き続けたさ。
そして、俺は出会ったんだ。
◇
マジシャンが技を競い合う、そんな大会があるのを知っているかな?
大規模な世界大会から個人開催の小さなものまで、色々な大会が乱立している。
これは、その中では小規模な方の、とある大会に参加した時の話だ。
楽屋でマジックの練習やら、小道具の準備やらをしている最中、俺は出会った。
そいつは、明らかに他のマジシャンよりも上手くて、不思議な雰囲気を纏っていた。
まさに、魔術師といった感じだったね。
俺は気になって話しかけてみた。
「どうも……すごいですね、タネの隠し方と視線誘導が素晴らしく上手い」
「はは、そんなに褒めるな青年。私は君の求めるファンタジーとは程遠い存在だよ」
「おっと、なんでわかるのかと言いたそうな顔をしているね。目を見ればわかるのさ、君は私と同じだと。ファンタジーを求めていると」
「先輩として、一言忠告をしておこう。ファンタジーに出会うことに固執してはならない。君はどうしてマジシャンになったかね? きっと、魔術師に魅せられたのだろう?」
「マジシャンというだけなら、面白い手品を披露していればいいだろう。でも、魔術師は違う。
「さて、これだけ言えばわかったかな? 君がどうするべきか」
そう言って、その魔術師はどこかへと去っていった。
その日、僕はファンタジーを追いかけるのを辞めた。
でも、決して諦めたわけじゃない。
ただ、子供たちが夢を見れるように。
俺は、魔法のような体験を届ける。
そんな、誇り高き魔術師なのさ。
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