この世界は現実で、ファンタジーなんてなくて、ただ、そこには〇〇があった。
文字を打つ軟体動物
この世界は現実で、ファンタジーなんてなくて、ただ、そこには奇跡があった。
この世界は現実で、ファンタジーなんてなくて、ただ、そこには奇跡があった。
私はどうやら、奇跡というものに愛されているらしい。
逆子だったり、分娩に時間がかかって難産だったり。
産声が上がらなかったり、赤ん坊のころから風邪になったり。
小さい頃からアレルギーに溢れていて、食べさせられるものが極端に少なかったり。
とにかく、小さい頃からずっと、死にかけていた。
そして、私はどれだけ死にかけても、すんでのところで、奇跡的に生き残ってきたのだ。
事故にあったり、遭難したり、誘拐されたり。
そんな碌でもない目に幾度も会って尚生き残る私を、いつしか周りの人達は奇跡の子だなんて呼ぶようになっていた。
どんな不運に見舞われても、苦しくても怖くても、私は生き残ってしまう。
この不運と奇跡に対する負の感情は、私の中でどんどん肥大化していった。
しかし、それでも。
私はこの奇跡を愛せずにいた。
◇
これは私が旅行中に、無人島に漂着した時の話だ。
他にも3人が流されていて、私達は一緒に無人島脱出のために協力することになった。
私はそのうちの1人、同年代の女の子と仲良くなった。
同性が彼女しかいなかったのもあって、私達はまるで竹馬の友かのように語り合った。
そして1日目の夜、全員がなかなか眠りにつけなかったため、自己紹介も兼ねてそれぞれ自分自身の話をすることになった。
国境なき医師団に所属する男性が語る戦場の恐怖、アイドルのマネージャーが語る芸能界の闇、一般JKの語る流行りのコスメ。
そして、ついに私の番がやって来た。
私は自分の不運と奇跡について、そしてその奇跡を愛せない苦しみについて語った。
空気は凍りつき、私に厳しい目が向けられる。
この状況の原因かもしれないのだから、当然のことだ。
その中、彼女は言った。
「ラッキーガールとアンラッキーガールを兼ねてるなんて、絶対に面白いじゃん!」
「面白い……? 苦しいだけだよ、こんなの」
「だってさ、普通はできない経験ができるじゃん! それで、毎回生き残れる。苦しいのは、ただ楽しもうとしていないだけなんじゃないの?」
その言葉は、私の認識を覆すのに十分だった。
同年代の女の子の何気ない一言によって、私は救われて……変わった。
私は、自分の奇跡を、愛せるようになったのだ。
無人島から生きて帰って、彼女と親友になったのはまた別のお話。
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