第4話(ボイスドラマ) また第三野球部の話してる……(´・ω・`)

 バンッ、と勢いよく扉を開いて花子フローラが飛び込んでくる。


「ごきげんよう、皆様! 挨拶はさておき……た、大変ですわ!」


 なかなか律儀な彼女に、ルナとカヲリが感心したような反応を返す。


「お~、お嬢様っぽい挨拶してきたねー……さすがおチン夫人♡」


「最初からその感じでいけたら良かったのにな、ペニスの商人」


「そのアダ名やめろや! シバき倒しますわよ!? って、そんなことより……!」


 不名誉なアダ名(※第二話参照)にキレつつ、けれどそれ以上に優先すべき事項があるらしく、花子が述べたのは。



「さっき見たら、この部屋の表札プレートに――〝エロ研究部〟なんて悪意ある落書きがされてましたわ――!?」


「「…………」」



 その恐るべき事実に、ルナとカヲリが――怪しい含み笑いを漏らした。


「「……クックック……」」


「!? な、なんですの……なぜ、なぜ笑ってるんですの!? ……まさか……」


 おののく花子に、明確な答えを返したのはルナだった。


「その通りよ、花子ハナコちゃん――それを書いたの、アタシでーす♡」


「ハナコじゃなくフローラだっつってんでしょーが! それはともかく、なぜそんな自ら奈落へ身をとすような真似を……いやホントなぜですの!?」


「だってアタシ達、〝エロ研究部〟だもーん♡ 〝文芸同好会〟は世を忍ぶ仮の名前……闇にまぎれし真実こそ、〝エロ研究部〟なのよ――!」


「闇に紛れし真実を堂々どうどうと表札に書くのどうかと思いますケド……まあそれはともかく、なんてことですの。わたくしったら気付かぬ間に、そんなとんでもねぇ団体に所属していたなんて……くっ、不本意ながら、この非日常的なシチュエーションっ……テンション上がってきましたわ……!」


花子ハナコちゃんもナカナカな子ね……まあでも、ふふふ、こうして名を大々的に示して活動してる以上、アタシ達の存在は徐々じょじょ認知にんちされてくハズ! 〝エロ研究部〟の名が学園にとどろくのも、そう遠い未来じゃないわ――!」


 ぐっ、と拳を握ってテンション上昇中のルナ――に、すみれが横から水を差す。


「あ、ここの表札とかほとんどの生徒は見ないはずですし、悪目立わるめだちする心配はないと思いますよ?」


「「「……………えっ」」」


「いやあの、この部屋、どこにあるか分かってますよね? ……えっ、私以外、把握はあくしてない感じですか? この学園の生徒なのにそんなことあります?」


 呆然とするルナ・カヲリ・花子に、すみれが告げる驚愕きょうがくの事実とは――



「ココ、もうほとんど使われなくなった、旧校舎ですよ。……あと本校舎の他に、部活棟ぶかつとうとして使われてる校舎も別にありますので……三番目ですね、この校舎」


「「「………………」」」


「だからまあ、他の生徒さんも用件がない限り、ほとんど近づきませんから。表札なんてよっぽど見ない、っていうか……あ、あの……皆さん、大丈夫です……?」



 唖然あぜんとしていた三人の中から――代表してルナが声を上げた。


「もっ……もう完全に第三野球部じゃんアタシら――!?」


「別に第三野球部にたとえなくても良くないですか?」


「や、でもっ……旧校舎っていう割りに、すごい綺麗キレェじゃないこの校舎! ほぼ新築って言っても通りそうなのに、もったいなさすぎでしょ~!?」


「まあ私立のお嬢様学園なので……資金は潤沢じゅんたくなんじゃないですか?」


「でも、にしたってでもっ……旧校舎なのに壁とかにヒワイな落書きとか無いし、〝オウ全裸でマラソンしてこいよ!〟とか言ってくる不良フリョーとかいないし!?」


「だからお嬢様学園なんですってば。というかなぜ第三野球部に寄せようとするんですか。そして今のご時世じせい、誰がこのネタ分かってくれるんですか」


 割と容赦ようしゃなくツッコんでくれるすみれ。助かる。

 まあそれはそうと花子が、苦笑いしつつ提案した。


「ま、まあまあ、すみれさん。本当に色々とアレですけれど……せっかくメンバー全員集まってるんですし、親睦しんぼくを兼ねて喫茶店にでもお茶しにいきませんこと? わたくし、オススメのお店を紹介しますわよ」


「ハナッ花子フローラさん……そ、そうですね、そうしましょうか。私、楽しみです」


「ねえすみれさん、ちょいちょい思ってたんですけれど、微妙にハナコって言いかけてませんわよね? わたくし、すみれさんだけは信じてんですけども、信じても大丈夫ですわよね?」


「もちろんですよ花子フローラさん。信じてください花子フローラさん。間違えませんよ、私はホラ、本ばかり読んで話慣はなしなれてないので、ちょっと言葉をんじゃいそうになるだけで……」


話慣はなしなれてない人のツッコミぶりじゃない気もしますけれど……この文芸同好会の良心であるすみれさんが言うんだから、信じますわ。信じますわよ?」


「もちろん、もちろんですよ花子フローラさん。……アッ、窓の外、ホラッ。ちょっと小雨こさめってきましたね。どうしましょう、少しくらい濡れても強行軍きょうこうぐんで――」


 若干、話をらしている気がするすみれだが――本当になぜか、ルナが床に両手を突いて弱音を吐き始めた。


「む……ムリだよーっ! 雨に濡れながら喫茶店なんて、いけるわけないよーっ! いいじゃん、雨がやんでから行って……適当にお茶して終わればイイじゃん~!」


「いえまあ普通にそれでもいんですけど、だからなぜ第三野球部ノリに寄せようとするんですかってば。どんだけ好きなんですか――」


「る、ルナ、このバカヤローッ! ホントのクズになっちまってイイのかーっ!」


「いやカヲリさん? ちょっと小雨に濡れて喫茶店に行った程度で〝僕たちはクズじゃない!〟とか烏滸おこがましくて言えないですし、もう第三野球部の話はいいんですってばもうホントもう」


 ツッコミを余儀よぎなくされるすみれだが、ルナとカヲリはそれなりに満足したのか、普通に立ち上がって支度したくを始める。


「おし、んじゃいこっか~。アタシ、ケーキ食べた~い♡ ……そして食べながら読むのもイイわよね……あ〇なろクンの活躍をね」


「そだな。確かに古い漫画と呼ばれても仕方ないかもしれない。しかし今のご時世だからこそ、再び盛り上がるコトもあろうってもんだぜ。何せ今は、かさばるコトもなく読みやすいコンテンツがあるだろう……そう、電子書籍ならね」


「もちろんそれは第三野球部に限ったハナシじゃなく、多くの名作漫画やラノベ・小説、諸々に言えるコトよ。そういう意味じゃ、今やメジャー級の登録作品数をほこり勢い上昇中ジョーショーチューの『DLsite comipo』を推したいわ。アタシは長いモノに巻かれ、大きなモノにすり寄るコトに躊躇ためらいの無いオンナ。ふふっ、言葉だけ聞いてるとエロ研究部っぽさアルわね☆」


「さすがだなルナ、ウチも負けてらんねーや。負けないといえば電子書籍ストアにはそれぞれ特徴があるもんだけど、『DLsite comipo』は特にボイスコミックが強い印象だぜ。これも素晴らしい声優さんが音声作品を制作ツクって『DLsite』を舞台に活躍してて、その歴史があるからこそ生まれた、誰にも負けない独自性オリジナリティなんだなぁ」


「お二人のダイマがなぜか熱いのは、この際だから良いですけど……その柔軟フレキシブルさは、何だか見習わなくちゃなぁって思っちゃいましたよ今」


 変な感心をするすみれ、の横から今度は花子が声を上げて。


「……お、お待ちになって! わたくしとしては国内最大級の『BOOK☆WALKER』も忘れてはならないと念を押させて頂きますわ! もちろん『DLsite comipo』も素晴らしい個性を持つストア……けれど選択肢は二つあってもいい、両者にリスペクトを持つのもよいのではなくって――!?」


「まさかあなたまで乗っかるとは思いもしなかったですよ花子ハナコさん」


「えっすみれさん完全に今ハナコって――」


花子フローラさん気のせいですよ花子フローラさん。目に錯視さくしがあるように、耳にも錯聴さくちょうというのがありますから。きっと色々と呼ばれすぎたせいですね……サア、早く喫茶店へいきましょう、サア。ケーキは別々の種類を頼めば、食べ合いっこできそうですね♡」


「えっなにそれ嬉しいですわ……なんかすげぇ友達っぽいですわ……え、ええ! 全力ではげませていただきますわ――よろしくてよ!」


 何だか誤魔化されている感あるし、若干の闇深やみも感じる花子だが、ご機嫌のご様子なので良しとしよう。


 こうして各々おのおのが身支度を整え、喫茶店へと向かうべく、部屋を出ようとする――その直前、すみれが思うのは。


(……結局、今日ほぼ第三野球部の話だったな……)


 何ならエロ研究することのほうがレア

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