また一つ、国を救おう
「……えっど!!」
ニアさんが置いて行ってくれた魔法の鏡では、セレスさんとサキュバスのやり取りが見えていた。
サキュバスの名前はミューズさんとのことだけど、一旦ミューズさんと呼ばせてもらおうかな――うん、凄く良い!
「これがサキュバスかぁ……ま~じでエロいわ!」
セレスさんたちもエロいのは当然だけど、ミューズさんは振り撒くエロさの質がヤバイ。
流石サキュバスってところなんだろうけど本当に凄いのだ。
というかなんだあの服装は! セレスさんたちも大概だが、ミューズさんの恰好は凄まじい。
「でもなんか、見たことあるなああいう服……前世でよく見たやつだ」
まず、ミューズさんは大事な部分しか隠していない。
パンツはともかく胸の部分は中央を隠す布が通り、それが首から垂れるハート型リングに繋がって支えられている。
あれだけたゆんたゆんと揺れるし見せる服装なので、ちょっとでも歩いたらポロリしそうだ。
「……って、泣いてる?」
ミューズさんは、自分の体をじっくりと見た後泣き始めた。
ボロボロと大粒の涙を流すその姿は、体だけが大きな子供が人の目を気にせず泣いているのと同じにも見え、それだけミューズさんにとって凄く嬉しかったんだろう。
「良いことをするってのは気持ちが良いな」
お礼におっぱいを好き放題触らせてくれないかな、なんてことを考えるくらい調子に乗ってしまうけれど、やはり嬉しそうにする女性を眺めるのが俺は大好きなようだ。
泣くミューズさんを抱き寄せるセレスさん。
二人の爆乳美女が寄り添う姿は、この世のどんな宝石さえも霞むほどの素晴らしい光景で、ずっとこの映像を残して家宝にしたいほどだ。
「それにしても……本当にお婆さんの姿だったな」
今はもう若さを取り戻したミューズさんだけど、ニアさんが言っていたように老人の姿だった。
ただ俺が知る老人よりも明らかに体は丈夫でしっかりと動いていたのを見るに、やはり肉体だけが若さを保てずに老いたようだ。
「ただいま戻りました」
「あ、ニアさん!」
魔法の鏡から視線を外し、戻ってきたニアさんに目を向けた。
彼女が部屋を出る前に胸に挟む形で絞られたのだが、セレスさんのように体に入れることはなかったのでニアさんの見た目はいつも通りだ。
ただ皮膚から僅かに吸収されたらしく、今のニアさんは普段よりも元気そうである。
「見ておられたのでしたら結果もお分かりですね。極少量とはいえ、カズキ様の精を取り込んだミューズ様はあの通りでございます」
「……その、いきなり変わってビックリしましたけど」
「驚いたのは私とセレス様もですよ。必ずミューズ様を助けてくれるという直感はありましたが、あそこまで効果が早いとは思わなかったので」
「……流石サキュバスというか、めっちゃエロいなって思いました。でもそれ以上に、ああやって喜んで笑みを浮かべている姿が嬉しくて……思い切って提案して良かったなって思いました」
「その優しさに、果たして何人の女性が救われましょうか……いえ、既に私たちエルフは救われていましたね」
ニアさんもどこか感極まった風に目を閉じたので、俺はつい彼女に駆け寄って手を握りしめた。
「俺のスキルも何もかもが偶然ですけど、本当に良かったです。俺、本当にこの国に来て良かった……みんなに会えて良かったと思っています」
「カズキ様……っ!」
涙を流すニアさんの目元に手を当て、涙を拭う。
なんかこのやり取りが凄くイケメンっぽく見えたけど、よくもまあこんな気の利いた行動が取れたものだと自分自身に驚く。
「さてと、流石に精を提供した以上はどういうことかを説明しなければなりません。ミューズ様に会うのはいかがですか?」
「全然大丈夫です!」
「分かりました。それでは参りましょう」
いつものローブを受け取り、しっかりと顔まで隠して移動する。
セレスさんとミューズさんが居る会議室には彼女らしか居らず、誰も入らないようにと言っているらしいので安心だ。
ミューズさんは、サキュバスの初めて出会う彼女はどんな反応をするだろうかと、俺はドキドキしながら入室した。
「来たわね」
「っ!」
さっき見ていた時よりも、ミューズさんは落ち着いた様子だった。
ニアさんに手を引かれて二人の前に立った時、ミューズさんがサッと動いて膝を突いた。
俺のすぐ前で頭を下げるミューズさんに、俺たちは困惑した。
「あなた様……なのでありますね? 私に奇跡を齎してくれたのは」
「えっと……」
「その声音……もちろんあんな特濃で素晴らしい精をお届けしてくれたのですから男性なのは疑いようがありませんけれど、まずはとにかくお礼を言わせてもらえばと思うのであります!」
なんというか、いくつもの顔を見ている気分にさせられた。
(改めて見ても……すんごい美人だ)
美人ではあるが、とにかくエロすぎる。
サキュバスとしての特性をモロに感じるのは分かっているけれど、だとしてもこんなにエロい女性が居るのかと思わせられるほどだ。
もちろんセレスさんたちも同じくらいエロいというのは当然だが、このミューズさんに関しては根本的に何かが違うと感じる。
「ミューズ、彼は顔を隠しているけれど分かるの?」
「もちろんであります! その……私は男性の精を頂いたのは初めてなのですが、サキュバスとしての本能がこの方が恩人だと囁くのであります」
どうやら、サキュバスとしての本能とやらで顔を見せずとも俺が男だと分かったらしい。というよりサキュバスのことだから匂いとか、そういうので勘付いた部分もありそうだけど。
「サキュバスとしての本能ね……あなたの所のサキュバスクイーンでさえきっと感じたことのないものでしょう」
「リリス様を差し置いて申し訳なさはありますけれど、今はただこの幸せに浸りたい気分であります……あれ?」
「どうしたの?」
ミューズさんがいきなりモジモジし始め、セレスさんがどうしたのかと尋ねた。ミューズさんは自分でも何が何だか分からないと言わんばかりの表情で、こう言った。
「体が……凄く熱いのであります。セレス様、もしよろしければ少しだけ時間をもらえるでありますか?」
「……あぁ、そういうこと。我慢しなさいと言いたいけれど、サキュバスとして久しぶりの感覚だろうしダメとは言わないわ」
「ありがとうございます!!」
えっと、何の話をしているんだ?
クスクスと微笑みながらセレスさんは隣に並び、俺の手を引くようにしてソファに座らせた。
「せめてカズキさんは、私のおっぱいを目隠しにしましょうか」
「え?」
だからどういうことぉ!?
そう思った瞬間にはセレスさんの爆乳に顔を埋めており、よしよしと頭を撫でられる。あぁやわらけぇ幸せだぁ、なんて浸ろうとした時に鼓膜を凄まじい嬌声が刺激した。
「わ、忘れてた感覚がぁ! これぇしゅきぃ……お゛ぉ♡」
「っ!?」
ま、まさか……まさかまさかミューズさん!?
可愛らしい声とは裏腹に響く下品な声は、とてもじゃないが普通のことをしているとは思えなかった。
理解した、俺は全てを理解した!
サキュバスとしてのあまりに久しぶりすぎる感覚とはつまり、エッチなことをするという感覚だ!
「っ……」
なんやこれ、なんやこれ!
こんなん俺の興奮まで凄いことになるぞ!? セレスさんとニアさんが俺の事に気付きながらも、結局そこから五分はジッとしていた気がする。
事を終えた後、綺麗だったピンクの髪が肌に貼り付いてしまうほどに汗を掻いたミューズさん。そんな彼女の足元は凄まじいまでの大洪水だ。
「ふぅ♡ 幸せであります。思った以上にハッスルしてしまって脱水症状が近いかもでありますね」
「ほら、お水を飲みなさい」
「ありがとうございます!!」
俺の俺は全く落ち着いてないが、ミューズさんも対面に座った。
ただ流石はサキュバスらしくジッと俺の股間を見つめ続けてくるのが恥ずかしいというか、ちょっと集中出来ない。
そんな状態ではあっても話は進められ、俺がここに居る経緯と合わせてどんな人柄なのかも伝えた。
「そんな男性が居るのでありますねぇ……セレス様ではなく、私たちサキュバスの元に来てくださっていればって言うのはダメでありますね」
「当たり前でしょう。もう私やニア、他の彼を知っている者からすればカズキさんに会えないのはあり得ないことよ」
「セレスさん……」
涙脆い俺氏、見事にセレスさんの言葉で涙を流す。
「……私、今とても幸せであります。でも、私だけというのは心苦しいものがあるのであります。あなた様、もし……もしも我儘が許されるのありましたらどうか……どうかお恵みを他の同族にも……っ!!」
「ふふっ、どうするの?」
こんなの、俺が頷かないわけがなかった。
聞けばサキュバスの総数は千にも満たないとは聞いたものの、俺の体が正直持たないという悩みがあったが、それは簡単に解決出来ることに。
「本来であれば、魔法を使うことによって栄養は失われます。ですがあなた様の精は魔法によって保存しても栄養は失われず、ある程度細分化させても大丈夫なのであります! 私はサキュバスでありますから、そこまで断言出来るのであります!」
「そうなの? 本当にカズキさんは規格外なのね」
「……ほんとに俺ってなんなんですかね」
ということで、色々と話は進んで行ったわけだが、また一つ俺は種族を救えることになりそうだ。
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