迫る魔の手?

“魔性のマッサージ”

“癒しと恵みの雨”

“精のエリクサー”


「……………」


 メルトさんに協力してもらい、新たにスキルの確認をしている。

 魔性のマッサージは以前と何も変わっていないのだが、それ以外に増えた二つのスキルもイカれた力を持っていた。


「癒しと恵みの雨……そのままっすねぇ」

「ですね」


“癒しと恵みの雨”

スキル所持者が強く好意を向ける相手と触れ合い、興奮の度合いが強くなることで発動する。

雨が触れた全ての存在に生命力を与え、奇跡を与える。

雨に降れた者はありとあらゆる状態異常などに耐性を持ち、生命力の増加は体の治癒力を劇的に高めると共に、即死級の傷さえも生きてさえいれば治癒させ、後遺症も残らない。

※効果の適用範囲は、スキル所持者が心を許した者が治めている国にのみ癒しの雨は降り、もしもこの恩恵を受けた者が裏切った場合、雨の効果は反転してしまう。


「……チート?」

「傷が治るのは確認済みでしたっすけど、即死級の傷も治せるって流石に凄すぎっすね……」


 今、傍に居るのはメルトさんだけだ。

 それ故に俺と一緒にスキルの確認をしているのはメルトさんだけだが、判明した内容に改めて大きなリアクションをしている。

 前半の内容は既に目にしていたことだが、後半に書かれている内容はこのスキルのデメリットとでも言うべきか。少しばかり怖いことが書かれているものの、その肝心な反転内容は記されていない。


「スキルの反転……か」

「そのまま考えると、生命力を奪い不幸を与えるってことっすかね? この言葉を全部反対にするとそれは恐ろしいことばかりっすけど、そうなる理由に関しては心配する必要がないっすね」

「裏切ることはないってことですか?」

「そうっすよ。あのセレス様が……まあ今はオリエ殿もっすけど、あの二人が裏切ると思うっすか?」

「……思えないですね」


 セレスさんとオリエさんが裏切るなんてことは、非常に嬉しいことだけど全く想像出来ない。


「あんな素敵な人たちが俺を裏切ることになる……それってきっと俺がそうせざる得ない状況を作った時だけですね」

「それでも離れていくことはないと思うっすけど……ま、あり得ないことは話さないでおくっすよ!」


 そうですねと、俺は頷きいよいよ次のスキルについてだ。

 正直一番知りたかったスキルはこれであり、名前からしてある程度は察することが出来てしまうものだ。

 ちなみに俺とセレスさんがしたことは、メルトさんとニアさんにも伝えており、二人とも心底羨ましそうにしてくれたのは男として嬉しかった半面、セレスさんの身に起きたことを聞いたら逆にお祈りをされてしまったのも記憶に新しい。


“精のエリクサー”

スキル所持者の体で作られるモノ。

女性にのみ効果を及ぼすモノであり、スキル所持者の精を体に取り込むことで魔力の増加と身体の強化、更に外部からの如何なる攻撃に対しても強い耐性を持つだけでなく、その時点で体に残る疲れやバッドステータスも全て打ち消す。

発動条件は非常に厳しく、スキル所持者が自分で考えている以上に相手へ心を許している場合にのみ発動する。

そして実際に発動された場合、精を与えられた女性はスキル所持者に向ける愛が更に強くなり、その愛が強ければ強いほど増加した魔力が視認出来るほどになる。


「……………」

「……これまた凄いっすねぇ」


 精のエリクサーについて、これも説明が長かった。

 とはいえ一度読んだだけでほぼほぼ理解するのは簡単であり、セレスさんの身に起こったことや、あれからの日々の中で今まで以上にセレスさんから向けられる視線についても理解出来た。


「ほんとに……俺ってなんなんですかね」

「神様みたいな人っすね! って言いたいところなんすけど、カズキさんはあくまで普通の男性として在りたいってことっすもんね。ならあたしはそう思うことにします! カズキさんは他の男と違って優しくて最高な普通の男性っす!」

「……メルトさん!」


 ガバッと、もはや遠慮も何もなしだと言わんばかりにメルトさんに思いっきり抱き着いた。

 前世も含めて最大級のバストに顔を埋めるこの感覚は、どんな言葉でも表現出来ないほどに気持ち良く、俺を幸せの境地へと運んでくれる。


「あははっ、あたしもこうされることになれてきたのが喜ばしいっす。もちろん体は震えて色々と大変になっちゃうのはそうっすけど、カズキさんがこうしてくれるのが最高っす♪」

「メルトさんは最高の女性ですよ! なんか……セレスさんやニアさん、それにメルトさんと接してるとこう……幼児退行と行かないまでも甘えたくて仕方なくなるんですよね」

「ほうほう! じゃあもっと甘えてくれて良いっすよ!」


 ママぁ!!

 なんて言うことは決してないが、許されたことでメルトさんの胸の間へと更に顔を差し込んでいく。

 ただ双丘の弾力を感じるのでも気持ち良いし幸せなのだが、こうやって顔を挟んでもらうのもまた最高の快感だし瞬間でもある――この世界、やっぱり最高だ!


(でも……こうなるとまたそういうことをしたい空気になった時か、色々と考えないといけないんだな……大変だぜ)


 贅沢な悩みだとは思いつつも、今は沢山この爆乳の中で悩みながら過ごすとしよう。

 そして、そこからセレスさんとニアさんが合流した。

 二人にも俺のスキルについて書かれた紙を見せ、一旦はスキルについて把握してもらい、やはり色々と気を付けなければならないという意見で一致した。


「……?」

「どうしたの?」


 セレスさんから紙を返してもらった瞬間、ピカッと光った。

 俺を含めて全員がどうしたのかと首を傾げる中、“精のエリクサー”の説明文に続きが現れたのである。


スキル所持者が未成年の場合は、定期的に抜く……別の言い方をするならば発散する必要がある。そうしなければ体に魔力が溜まり続けてしまい、良くない影響を及ぼすからである。そして更に、受け止める女性には大なり小なり体に影響が出るが、それは悪いモノではない。ただ体に良すぎる影響がこれでもかと出るため、周りからの視線には気を付けるべきだ。


 っと、そんな一文があった。


「定期的に発散ね……それってつまりそういうことよね……っ!」

「良すぎる影響ですか……それがセレス様のあの様子。とはいえ、定期的に発散ですか……っ!」

「悪くはないにしても、影響は考えるべきっすね……でも定期的に発散っすか……!?!?」


 三人が期待を込めたような、けれども尊重するような視線をこれでもかと向けてきたのでビクッとしてしまうが、俺も定期的に発散しなければならないという一文には大いに反応した――つまり、セレスさんとしたことを俺はやらなければいけないということだ。


「そ、その……もしまた我慢出来なくなったら相手を――」

「するわ!」

「是非!」

「させてくださいっす!!」


 食い付きの良い三人に、俺はやったとガッツポーズをするのだった。

 スキルのことも詳しく分かっただけでなく、俺の野望に向けて一歩どころか何歩も前進したその頃――俺は、まさか大きなうねりが近付いていることを想像さえしていなかった。

 部下が読んでいるとセレスさんが部屋を出て行き、それからしばらくして戻ったセレスさんは一枚の紙を手に持っていた。


「……全く、面倒なことになったものね」

「え?」


 その紙には、男だけが住む街の統括者である教皇の言葉があった。


『この世界に降り立った、神に等しき力を持った男がどこぞの国に囚われている可能性が浮上した――全ての生き物に奇跡と温もりを平等に届ける尊き存在の力を確認した。至急、情報を求む』


 何だそれはと、俺は他人事だった。

 だが後に続く奇跡の力だの温もりを与えるだの、詳しく読み解いていくとある一致する事実があった。

 それは俺のスキルによって齎されたことの全てを、教皇の言葉が言い当てていたのである。

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