立て続けに起こす奇跡

 セレスさんが居ない間、傍にメルトさんが居てくれることになった。

 相変わらずのダウナー系爆乳エロフぶりに俺のテンションはマックスだが、セレスさんが居ない間はニアさんが軽く代役をやっているので傍に居ないせいでもある。


「くっくっくっ! 今日はあたしがカズキさんを独占っす!」


 ニコニコと微笑みながら隣に座るメルトさんだが、何も俺は隣に居るアドバンテージを生かして大きな胸ばかり見ているわけじゃない。

 セレスさんが居た間に聞けなかったスキルのことを、改めて詳しく聞いていたのである。


「これもまた魔法によって国の植物を軽く見て回ったんすけど、そこから見える木々や花々はもちろんで、大きめの果樹園を営んでいるエルフたちは突然のことに驚きつつも大喜びだったっすよ」

「へぇ……」

「強靭な生命力と耐性を持たせたことで、元気のない枯れ際の花でさえ蘇っていたっす。更に言えば、果樹園に関しては成長を促進する効果もあったようで大きな果物が出来てたっす」

「そ、そんなことまで起きてたんですか?」

「はいっす! あたしのおっぱいくらい大きなイチゴがあったっす!」

「……………」


 ちょ、デカすぎん!?

 ちなみに俺の巨乳スカウターによれば、メルトさんのバストは三桁は余裕で越えているほどだぞ……? この世界に存在するイチゴも前世と特に変わらないんだが、それがメルトさんの胸と同じ大きさというのはかなり大きい……てか大きすぎる。


「むふふ~! 気になるっすか? あたしのおっぱいをイチゴみたいに思ってあむあむしても良いっすよ?」

「……えっ!?」


 突然の提案に思いっきり反応してしまった。

 俺の強すぎる食い付きにメルトさんはハッとするように顔を赤くし、舌を向いて冗談だと言った……そこは冗談であるな! 俺にその豊満な果実をあむあむさせてくれ!?


「その、ちゃんと持ってきたっすから!」

「はえ!? で、でっか!?」


 魔法によってスッと手元に現れたイチゴはでかかった。

 それこそスイカクラスのでっかいイチゴの姿に、俺は小さな子供のように歓声を上げた。


「凄くないですかこれ!」

「凄いっすよ! でも……こういうことっす」


 メルトさんは恥ずかしそうにしていた表情から一転、真剣な表情になって言葉を続けた。


「この成長促進はもちろんっすけど、そもそも枯れかけていた花にさえ生命力を与えた……今はまだそれだけっすけど、考え方によってはカズキさんは大きな火種になる可能性があるっす」

「火種……」


 それはつまり、俺を巡って争いが起こる可能性ってことか……。

 その言葉に大きな衝撃を受けたのは確かだが、俺自身が客観的に考えてもそんな能力があったとしたら……それこそもっと強い何かを出来るのであれば手元に置いておいて損はないからだ。


「カズキさん、あたしが話の発端っすけど難しいことは考えないでくださいっす。ましてや自分の存在が迷惑になるとかならないとか」

「……ちょっと考えそうになりましたね。というか、男である俺を保護してくれた時点で何度か思いましたし」

「男性は守られるべき存在っす……まあでも、あたしたちにとってはもうカズキさん以外どうでも良いっすけどね」

「あはは……」

「だからどうか、カズキさんは普通通りにしてくださいっす。むしろここまで親しくなれて、それでどこかに行ってしまうとかは嫌っす。そんなことあったらあたしは悲しみで死んじゃうっす」


 そこまで言われてしまっては、一瞬であってもマイナスなことは考えられないなと笑った。

 ただ……ここいらで少しエッチな想像を一つ。

 成長を促進するということは、おっぱいを大きくすることも出来るってことぉ!?


「……いや、それは流石にないか?」

「何がっすか?」

「……………」


 ごめんメルトさん、流石にこれは恥ずかしくて聞けねえや。


「成長を促進というと寿命を早めるみたいな想像するかもっすけど、それもないみたいっす。だから凄いっすよこれは」

「俺……凄いんすね」

「凄いっす! 素敵っす!」


 それからずっとメルトさんは俺を褒め続けてくれた。

 そして、メルトさんは更に確かめたいことがあると言った――それは俺の感情によって作用するのがどこまでなのか、それをメルトさんが直々に感じたいらしい。


「そ、そのあれっす! 別に今の状況を利用したいとか下心は一切ないっすからね!? あたしがまだ実際にされてないから確かめたいだけっすからね!?」

「あ、はい」


 メルトさんの勢いに押されて頷く。

 だがまあこれは良いことだ……だって俺も自分の力を更に確かめる一環としてメルトさんにお触り出来ないか機会を窺っていたから。


「じゃ、じゃあやりましょうか!」

「は、はいっす!」


 ということでメルトさんをベッドに招き、上半身裸になってもらう。

 顔を真っ赤にして胸を隠す姿にときめきつつ、メルトさんの背中からマッサージを開始した。

 セレスさんとニアさんとの経験を通して慣れたのか、魔力の込め方やマッサージの指の動きだったりが洗練されている。


「こ、これぇ……凄いっすぅ……体の力が抜けるようで……あ、ちょっとごめんなさいっす!」

「え?」


 ビクンと体を震わせたメルトさんだが、特に何もなかった。

 息が荒いのと蕩けたような表情はセレスさんたちと変わらないので、俺はそのまま続けた。


「……あ」


 そして、メルトさんの体にも紋様が浮かんだ。

 メルトさんの呼吸と呼応するように点滅する紋様だが、そこでメルトさんが不意に体を起こす。


「ちょっ!?」

「見てくださいっす」

「っ……」


 見てくださいと、そう言われて目を開けた。

 何も隠すことなく体を向けているせいで、メルトさんの体の全てを俺は目撃した。

 俺の魔力が巡る紋様は胸のてっぺんや腰……多くの場所に伸びている。


「この巡り方……凄いっすね。あたし自身の魔力回復、ちょっと寝不足だったんすけどそれも改善されて……おまけにたぶんっすけど、これ魔力の巡っている位置も意味がありそうっす。これは主に女性が気持ち良く感じる場所なので」

「あ、そうっすか……」


 そ、それはちょっと聞きたくなかったけどエロすぎんだろ……!


「……うん?」

「どうしたっすか?」


 ふと、俺の視線は彼女の股……足の間に向かった。

 メルトさんは俺の視線の意味に気付き、近くにあったタオルを股に当てながら顔を真っ赤にして慌てだす。


「ちょ、ちょっと暑かったのかもしれないっすね! でもほら、マッサージって汗が出やすくなるみたいなのもあるっすから、それでこんな風に汗がダラダラ出たのかもしれないっす!」

「あ、はい」

「絶対にそうっす! 決してこれは感じすぎて出てきたとか、そういう不名誉じゃないっすけど恥ずかしいことじゃないっすからね!?」

「あ、はい」


 ……なるほど、それだけ俺のゴッドハンドに感じてくれたと。


「……むふっ」


 っと、気持ちの悪い笑みが出ちまった。

 でもこれは可能性ありありじゃないか……? ただ、やっぱりこれ以上に発展しそうにない謎の嫌な自信があるのはなんだ……?


「セレス様も言ってたっすけど、カズキさんは本当に尊いお方っす。神様のような方っすね……是非、ずっと守らせてほしいっす」

「是非守っていただけると! ただ俺は神様なんかじゃないですよ……俺はただ、セレスさんやニアさん……メルトさんが大好きなだけです」

「っ……」


 メルトさんは下を向き、しばらく声を発することはなかった。

 だがある程度時間が経てばメルトさんもいつもの雰囲気を取り戻し、落ち着いた様子で空を眺めながらこう言ったのだ。


「そ、そう言えば……今回のことは本当に大助かりっす。というのもここ最近はずっと雨が降らなかったっすからね」

「え? そうなんですか?」

「そうっす……魔法で水を降らせるのも悪くはないんすけど、やっぱり自然の物には自然に生まれる物が一番っす。だから……?」


 その時、ポタッと音が聞こえた。

 俺の手の平とメルトさんの体に現れた紋様が少しばかり激しく光ったかと思えば、空が急激に暗くなって雨が降り出したのである。


「雨……? えっ!? 二ヶ月振りの雨っすよ!?」

「二ヶ月振り!?」


 ここに来て数日だったのもあるし、天気については聞いていなかったので知らなかったが……そんなにも長く雨が降らなかったのか。

 そしておそらく、この雨もまた俺の力……?


「カズキさん……いいえ、カズキ様と呼んだ方が良いっすか?」

「……………」


 俺が俺自身に聞きたいよ……なあ俺、一体俺はどこまでのことがやれるんだいってさ。

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