新たなスキルはエロによるもの
「明日、男だけが住む街に行くことになったの」
「……え?」
セレスさんの言葉に、俺は目を丸くした。
「仕事か何かですか?」
「えぇ、鬼族の姫と人間の女性たちの計十人くらいでね。あの街の教皇さんや他のお偉い男たちとの会議よ」
「……なるほど」
鬼族の姫っていうワードが気になったが、詳しく教えてもらうことに。
セレスさんが他の女性たちとあの街へ訪れる今回のことは、数年に一度あるかないかの会議のためらしい。
「あ、それが前に話してくれた男に姿を見られてってやつですか?」
「そうよ。だから面倒だけれど、また鎧を引っ張り出さないとね」
「やっぱり嫌なんですか?」
「少しの肌を見せないための全身鎧だから蒸して暑いのよ。体を少しでも涼しくさせようとしても、あの街の中で魔法を使う素振りを見せたらそれだけでうるさくされてしまうから」
「……その、同じ男として申し訳ないっていうか」
この世界において貞操観念がおかしいのもそうだが、男と女の間に決して埋めきれないほどの大きな溝があることは知っている……それに俺が何を言っても他の男に理解はされないしされるつもりもないが、それでもやっぱりここまで徹底的にしなくても良いじゃないかって思う。
「カズキさんがそんな風に思う必要は無いわ。私もそうだけど、ニアやメルトだってあなたを他の男と同じとは思ってないもの。あなたを他の男と同じようには見れない……だってもう……そのね? 凄く大切な存在になってしまったから」
そう照れ臭そうに言われてしまい、俺もドクンと心臓が跳ねた。
嬉しい……素直にそう思えるほどに、セレスさんの言葉に俺の心は歓喜に震えていた。
ここに来てからの数日間で稼いだ好感度のおかげだろうけど、それ以上にセレスさんのような美女から大切な存在だと言われたことがシンプルに嬉しくて仕方ない。
「ズレてるかもしれないですけど、男だけが住む街……そこにセレスさんが行くのが心配にも思ってしまうんです。もしも何かあったらと思うと凄く嫌なんですよ」
「……そんな風に心配されることは今までなかったわね――大丈夫、特に何事もなく……それこそ呆気なく私の用事は終わるわよ」
「……そうですか」
「えぇ」
これ……普通の世界というか、貞操観念が逆転していない世界だとフラグのオンパレードなんだけど、本当に心配する必要がないことくらい分かっている……それでも俺はこう言わせてもらおう。
「……それでも一応は、心配させてくださいよ。本当に心配が要らないことも、セレスさんが強いことも分かってる……それでも俺だってあなたのことを大切に想ってるんですから」
「か、カズキさん……っ!」
ダッと立ち上がったセレスさんだが、そこから動こうとしない。
どうしようか迷う彼女の胸に俺から飛び込むと、セレスさんはギュッと背中に腕を回して強く抱きしめてきた。
(……プニプニや)
顔を包む乳が最高だ……まあ、ちょっとシリアスな空気だったけどこれもまた狙っていたわけだ……やったぜ!
「本当にカズキさんは……あなた本当にもう!」
「嬉しいですか?」
「嬉しいに決まってるわ!」
「じゃ、じゃあ俺も嬉しいです! こうやってセレスさんのおっぱいに包まれていることとか!」
ええい、もう欲望をこれでもかと言っちまえ!
思い切った言葉ではあるが、俺が女性を好きだということと大きな胸が好きなこともセレスさんは知っているので、やはり嫌そうにはせず嬉しそうに微笑んだ。
「あぁもうカズキさん……っ! カズキさんカズキさんカズキさん!」
「おぉ!!」
それからしばらく、感極まったセレスさんの弾力を楽しんだ。
(こんな風にラッキースケベ的な展開は多いし、何なら俺から彼女たちの体に触ったりは日常茶飯事だ……でもこれ以上先に行かない……)
ちょっとだけ……ちょっとだけそこが不満だ。
俺の知識の中では貞操逆転世界だと、俺みたいなムーブをしていたらすぐにエッチなやり取りに発展するはずなのに……まだ全然そういうことをしていないのだ。
(まあ……俺も恥ずかしがってストレートにエッチなことしたいとか言えないのもあるんだけど)
だが、これはチャンスかなと俺は勇気を出した。
「セレスさん、もう少しこうしていても良いですか?」
「全然構わないわ!」
「では……っ!」
勇気を出して谷間に顔をイン!
こうしていたいとは言ったがこれ以上とは言ってなかったので、セレスさんの体がビクッと震えるくらいには驚いたようだった。
そして、豊満な双丘に包まれた状態で顔を上げた時……俺はおやっと首を傾げた。
「カズキさん……うふふっ♪」
「……………」
セレスさんの表情が思ったのと違った。
というのも顔を赤くしているのは確かなのだが、どこか崇高な物を見るような目というか……とにかく思っていたのと違ったのである。
けれど、こうしていることに落ち着きを感じるのも確かだ。
「気持ち良いかしら?」
「とっても……凄く落ち着きます」
セレスさんはそれ以降何も言うことなく、優しく頭を撫でてくれた。
だがそんな時間を過ごしながらしばらくした時、セレスさんがえっと困惑の声を上げた。
「どうしまし……た?」
そして俺もまた、目の前に広がった光景に困惑した。
セレスさんの体にあの紋様が現れただけでなく、俺の手の平にも不思議な模様が現れて点滅していた。
金色に光っては消えてを繰り返すそれは、足を付けている床にも伸びてどんどんと広がっていくではないか。
「な、何が起きて……」
「これは……」
その光は窓をすり抜けて外にも広がり、木々を揺らしながら街並みを照らしていくかのよう……このトンデモ現象は間違いなく俺たちを起点として広がっているので、焦りに焦る俺だがセレスさんはこう言った。
「これは……カズキさんの魔力が、大地の生命力に変換されている?」
「……えぇ?」
セレスさんが窓際に向かい、俺もそれに付いて行く。
「やっぱり……あそことあそこを見て――地面から生える花であったり、木々やそこにある果実に力強い生命力を感じるわ」
「……………」
「これもまた調べる必要があるけれど、カズキさんの魔力がエターニアそのものに波紋として広がり、私たちに良い影響を齎したのと同じことが起きたのかもしれないわね」
それって……なんか俺って凄くないか?
(……もしかして勇気を出してセレスさんと色々したいって思った気持ちがこれを起こしたとか?)
今までにないほどにエロいことを考えたから魔力が広がった……?
だとしたらあまりにも変な力だとツッコミを入れたくなるけど、取り敢えずは調べないことには分からない。
「カズキさんは本当に神様みたいな人ね。こんな奇跡を起こすんだもの」
「……まだ分からないですけど、少なくともセレスさんと抱き合ってたからなのもありそうです。やっぱり俺の力は、あなたたちを想うと発揮されるのかもしれませんね」
だが何となく確信がある……この考えはきっと間違ってないのだと。
「っ……また明日にでも、ここを発つまでに軽く調べてみるわ。でもカズキさんは本当に……どれだけ私たちエルフに幸せをくれるの?」
「これが本当に俺の力だとするなら嬉しいことですよ。セレスさん、ということで末永くよろしくお願いします」
「……えぇ♡」
その時のセレスさんの声は、今までにないほどに熱が籠っていた。
▼▽
翌日――セレスは朝の早い段階でエターニアを出た。
それよりも前にカズキも目を覚ましていたので、昨晩の現象について調べられたことを聞いたのだが、やはりカズキの魔力が国全体に波紋として広がったとのことだ。
その効果が齎したのは生命力の強化と耐性の強化……植物にとってや立ち並ぶ木々にとって絶対なる自然の力を手に入れたも同然だった。
「……俺のエロに対する探究心が奇跡を起こしたって?」
バカバカしい想像だが、ある意味でそれも正しかったわけだ。
更にメルトが詳しくスキルについて解析したことで、あの現象がカズキの力であることも分かった。
カズキの女性に対するエッチな感情と、大切に想う気持ちに呼応して発動する力――カズキが心を許す相手だけでなく、自然界にも影響を及ぼす力であり……それは正しく神にすら匹敵する力であり、カズキが仮に男でないとしても誰もが求める力でもあった。
「凄いっすねカズキさんは……あんな影響を齎したのが私たちに対する感情……あぁもう! やっぱりカズキさんは素敵っす!!」
メルトがずっとカズキにそう言ったり、ある種の実験としてずっとカズキに引っ付いても居た。
さて、そんな風に自分の新たな力を知り、爆乳エロフとよろしくしていた頃――長が一時的に抜けたエターニアに侵入する影があった。
「……………」
長い耳に日焼けしたような肌……ダークエルフだ。
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