第5話 やけに波立つ水面
「ピューッ、ビューッ」と風が強い日なんかは、水面が波立つので、移動が厳しくなる。台風とか爆弾低気圧なんかが近づいてきているとなおさら波は高くなる。
しかし、今日に限っては何かおかしい。穏やかな風で天気も快晴なのに、波が異様に高いのである。
「もしかして地震?地上付近で何か起きた?」
とも疑ったが、ほぼ丸一日波が高い状態がずっと続いているので地震ではなさそう。
水没していない近隣地域の人たちにも特に変わった様子はないので、たぶん違う。
波立つ原因はこの時点ではまだ、わからなかったが、後に行われた調査で「水底に沈んだかつての街から、謎のガスが噴出して止まらない!これが異常な高波の原因と思われる。」というまさかの現象が起きていた。
専門家の方が、「噴出しているガス自体、基本的には無害で影響はない」と発言したことから、噴出に関するニュースは地元のみで全国向けのニュースで報じられることはなかった。
ガス噴出が収まると、水面も通常の高さに戻った。
その一方で、数日間ガスが噴出していた影響によって水面にはおびただしい数のゴミが浮くようになってしまった。
「…尋常じゃないくらい、街がゴミまみれだ…。なんで我々は毎回こういう災難に遭うんだ!」
住人のほとんどが「街の水没」で疲弊状態で、精神的にやられている中で起きた今回の「ガス噴出騒動」で住人の疲労はピークに達していた。
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