『壁』
『雪』
『壁』
人は何か大きな壁にぶつかった時、その選択を迫られるのだろう。
即ち、その壁を避けて別の道を歩む事を選ぶのか、或いは歯を食いしばって壁を上るべくみっともなく手を伸ばすのか、はたまた衝動の赴くがまま壁をその道諸共破壊してしまうのか。
別に自分が特別な人間だ、などと思い上がるつもりは毛頭ないし、一度だってそんな事を感じた事もない。平々凡々どころか多少他人より理解力が足りていないのでは、と感じる節がそこかしこに転がっている。
遥か上を見上げては理解の及ばない領域至る者達の思考回路に首を傾げ、その途方も無い格差にそっとため息を零す。才能は勿論の事、努力も熱意もまるで追いついておらず、ただ彼らの残した足跡を見失わないように必死に辿る。
ふとした瞬間に自分のこの行動に意味はあるのだろうか、とその意義を己に問い掛けてみても「正しい答え」はまるで分からない。
実らない努力ほど虚しいものは無いけれど、それは必然である。
自分には背中を追う人々ほどの熱量は在りはしない。自分が一歩進む間に二歩も三歩も先を行ける人々にどうして追いつける道理があるだろうか、そんな諦めにも似た仄暗い感情を何処かで抱えている、これが全力だと言いながらも、何処かでブレーキを掛けている自分が確かにいるのだ。
人生のレールがどうなっているかなんて、終わりを迎えるその瞬間まで自分ですら分かりはしない。故にその道を歩む事にどれだけのリソースを注ぎ、他を犠牲にするのか、それが正解かすら不明瞭で不確定なのである。
もう少しでも楽観的であれば、或いは衝動的であれば良かったのに、と思ったことは一度や二度ではない。そうすればこれ程苦しむことも、或いは悩むことも無かったのだろう。
熱意と理性の狭間で揺れ動く感情に、臆病で矮小な本心が静かに楔を打つ。もがく事も振り切る事も出来ず、今もまだ壁の前に呆然と立ち尽くしている。
『壁』 『雪』 @snow_03
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