17.開拓の村①

 ドガルドを出発し、噂で聞いた開拓村へ向かう途中

魔物に襲われていた馬車を助けた。



 その馬車は、目的地である開拓村へ

物資を運んでいる最中との事で、助けたお礼に

二人は村まで乗せてもらうことになった。




「ごしゅじんさま、倒した魔物はどうしましょう?」

「嵩張るんだよなぁ……持って行くけど……」



 行き着いた開拓村では、

人々が日夜、開拓作業に追われている。



 最近、引退したとある騎士が

現役時における数々の功績を称え

王より貴族の位と領地を賜わる事で、領主となった。



 引退後の人生も、王と領民の為に力を尽くすと誓った

という話を、馬車内で聞いたが

実際は、他国から流れてきた難民を受け入れきれず。


 領主に開拓民として、余っていた土地を丸投げした。

というのが正しいらしい。


「まあ、炊き出しでもして、開拓民の皆様には元気に仕事をして頂こうじゃないか」


「ごしゅじんさまのおりょうりは、せかいいちですからね! みんなうれしいとおもいます!」


「ありがとうロシィ。いっぱい食べる君が好きだよ♥」


「えへへ……」




 開拓の村では、一見行きかう人々で活気があるように見えたが

皆、だいぶ疲れが溜まっているようだった。

豊は、支援活動の申し出をする為、領主の家へと向かった。


 訪問の内容を門番に話すと、客室へと通され、しばしの時間がたった後

初老の男性が、急ぎ足で客室へと駆け込む

その様子から、業務が立て込んでいることが窺える。


「初めまして、私が領主のアルバド・シャムシールです。あなたが各地で支援活動をなさっている、フォルトゥナ様の使者殿ですか」


「お初にお目にかかります領主様、私はユタカと申します、こっちは従者のロシィです」


「よろしくおねがいします!」


「これはこれは、元気の良い子ですな。私の孫と同じくらいの歳であろうか?」


「六さいです!」


「おお、ならば、是非孫と友達になってくれないか?」


「はい! おともだちになります!」


「それは嬉しいな、後で紹介するとしよう」


「はい!」



 豊の噂は、行商人や吟遊詩人等を通じて、各地でも噂になっていた為

支援活動に関する話は、円滑に進めることが出来た。



「では、ユタカ殿、我が村でも支援を行なって頂けるというお話でしたが」


「えぇ、まずは炊き出しによる食料支援の用意があります。他に出来ることがあればなんなりと、お申し付けください」


「おお、なんとも頼もしいお言葉食料支援は本当にありがたい事です……。我々は一応、国から開拓の為に支援金を頂いては居ますが、どうしても開拓にはこれがかかりまして……。毎日の食事も満足に出来ず……。かといって食料確保に力を入れれば、開拓は進みません」


「お困りでしょう。そちらで出来るだけ大きい鍋と、人数分の食器をご用意して頂けたらすぐにでも取り掛かりたいと思っています」


「すぐに用意させます。よろしくお願い致しますユタカ殿」




 第三の術により、過剰なる糧による粥が

領民に振る舞われた。

 作ってはなくなり、また作ってはなくなるを繰り返し

豊とロシィは女性達の手も借りながら、炊き出しを終えた。


 領民は皆腹一杯飯を平らげ、元気に仕事へと取り掛かった。

豊とロシィは一仕事終え、用意された個室で遅めの食事を摂っていた。




「わたしはこのおかか、というのがすきです!あとこんぶ!」


「この味がわかるとは流石はロシィですな。さぁロシィも働いた分しっかり食べて力を蓄えるのですぞ」


「おいしいです!ごしゅじんさま!」


 ハムスターの様に、頬いっぱいにして飯を食べるロシィの姿を見ながら、食う飯に

豊はいっときの幸せを感じていた。


ピンポンパンポーン♪


【第三の術、過剰なる糧の熟練度が一定値を超えました。メニューが追加されます】



「なにっ?」

 突如光りだし、ステータスを映し出すレベルカード。

詳しく調べると、過剰なる糧の項目欄に、【追加メニュー】と赤く光る表示があった

「丼モノ、メイン、サブメニュー、ドリンク」と書いてあり、その中にはなんと


「カツ丼とからあげがある!勝った!第三部完!!!」



 豊の大好物であり、全てのデブのアイドル

カツ丼とからあげが存在したのだ。


「あっ、新メニューは有料なんだ……。でも全然オッケー!カツ丼とからあげの為なら銀貨だって惜しまない!!!」


新メニューは全て現代通貨価値で安く、

リーズナブルであり、銅貨数枚分の値段だった。


「神様ぁぁぁぁぁぁあ! ありがとうございますぅ!!!!」


 主人の歓喜に面を食らうロシィであったが

第三の術の詳細は知っていた為、

事の次第がすぐに理解できた。




「ごしゅじんさま、もしや!?」


「やったぞロシィ! やったぞ!」


「やったぁ〜!!」


「早速食うぞ!」



 さっき食べたばかりの糧は、腹の何処に消えたのか、

ウッキウキで新メニューを選ぶ豊。


 もちろん、カツ丼とからあげと烏龍茶だ

揚げたてアツアツのカツ丼と、からあげに冷静さを欠こうとしながらも

腹八分目だったロシィの分のからあげも体現させた。


 目の前に現れた魔性のカツ丼と魅惑のからあげ。

出来立ての香しい湯気が立ち上り、二人の食欲は

空腹時と同じように高揚している。


「「いただきます!!」」


「揚げたてのカツにフワッフワの卵と白い米が、見事な調和を作り出している……甘辛く味付けされたそれはまさに悪魔の食べ物……ッ!」


「ごしゅじんさま! からあげおいしすぎます! あっ♡あーっ♡」


「からあげしゅきっ♡からあげぇ♡もうラメッ♡あーっ♡しゅきっ♡」



 数分後


「ふぅ……! カツ丼とからあげで絶頂するなんて初めて……♡」


「おいしかった……おいしかった……」


二人は、揚げ物による幸せを噛み締めながら横になった

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