15.実戦を積む


 町から少し離れた草原に、ロシィの声が響く。

「えいっ!やぁ!えいっ!」


 彼女は不慣れながらも、掛け声に合わせ、豊がガッチリと押さえつけてる、ライトリザードに少しずつダメージを与える。



【ライトリザード】

 巨大なトカゲ、中型犬程の大きさ。肉食であり、獰猛な性格をしている。鋭い牙と爪、強靭な顎を持ち、どんな獲物も噛み砕く恐ろしい魔物だが、鱗が固く腹が柔らかい、食用にもなる。




 今回は繁殖し過ぎた結果、住処から人里まで出てきてしまった一部の魔獣を討伐する依頼を受け、ロシィの修行も兼ねた稼ぎを行なっている。


 実力者が魔物の攻撃を引き寄せる。

またはダメージの肩代わりなどを行い、

経験値を積ませる方法、


 オンラインゲームなどで俗に云う【養殖】という行為だ。



「まずは振り下ろしだ、ロシィには体重がないから、短剣の重みをそのまま相手に与える、慣れてきたら短剣を引くように斬りつけるんだ」


「はい! ごしゅじんさま!」



 ロシィは両手持ちした短剣を、目一杯振り下ろし、ライトリザードは、豊の巨体に押さえつけられたままなす術なく絶命した。



 組合で受けた討伐依頼は、ライトリザード三匹の討伐。

耐久性に優れた皮や鱗は防具になり、肉は食べられるので重宝される。


 普通なら数人がかりで倒す程には手強いが、

豊の体重を利用した寝技には敵わなかった。



「暴れるなよ……暴れるなよ……」

「えいっ! えいっ! えいっ!」


 二匹目討伐完了。


「てめぇ! 逃げられると思ってんのか! 正義の寝技覚悟しろ!」

「えいっ! えいっ! えいっ!」


 三匹目討伐完了と同時に、ロシィのレベルが二になったのを、レベルカードで確認した。続けて能力値ステータスを確認しておく。


―――――――――――――――――――

【ロシィ】6歳

レベル2 神の使いの奴隷


HP.30/30 MP.6/6

STR(strength)2

VIT(vitality)1

AGI(agility)5

DEX(dexterity)4

MGI(intelligence)2

LUK(luck)3

―――――――――――――――――――


「上々だなロシィ」


「はい! ごしゅじんさま! ふしぎです! つよくなりました!」


 早速、冒険者組合で依頼達成を報告。


 報酬――――――――

ライトリザードを納品し、

ギルダム銀貨2枚とギルダム銅貨50枚を報酬として受け取る。

 ――――――――獲得


「初報酬だぞロシィ!」

「やりました! ごしゅじんさま!」



 つい数刻前、依頼に出掛けた二人が、

ライトリザードを担いで帰ってきた事により、ギルド内は騒然とする。

凄腕ならともかく、若造と子供がライトリザード三匹を

一日かからずに狩って帰ってきたのだから当然ではある。



「えっ……怖っ……なんなのあの二人……怖っ……」

「ひえっ……近寄らんとこ……」


 他の冒険者が、若干引いていた。


「よし、次の討伐行くか!」

「はい! ごしゅじんさま!」


 豊は、ボードの討伐依頼書を手に、颯爽と受付へ向かった。


「ちょっと待っててな。受付してくるから」




 豊が受付へ向かっている隙に、

一人の物好きが、ロシィに話しかけた。


「お嬢ちゃんのお兄さんって何者なの?」


「ごしゅじんさまは、フォルトゥナさまのつかいです! とてもやさしくてつよいんですよ!」


 ロシィは、自分の事の様に話すと、受付を終えた豊とギルドを出て行った。



「「まさかなぁ〜〜〜!!」」



 その場に居合わせた一同は、

顔を見合わせて、笑い合った。

噂になり始めている救済者。


 女神フォルトゥナの使いが、ドガルドの街にいるはずがないと


 数刻後モンスターを担いでギルドを訪れた二人を見て、

一同はまた笑い合った。

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