12.おばけ大樹②


 その後、おばけ大樹を追加で二体

丸太に変えて村に戻ると


 豊は、村長に話を通して

裏庭であるものを準備していた。


「一体何をやってるんだい?」


 不思議そうに豊を見ていたリカンナが

疑問を投げかける。



「窯を作ろうと思いまして」


「窯って……まさかアンタ、おばけ丸太を炭にしようってのかい?」


「はい、軽くて水分が抜け易いのでどうかな……と」


「炭ならウチらも作ってるけど、流石におばけ丸太で作ろうとは思わないよ……。火を付けるとあっという間に燃えてしまうし……」


「何事も挑戦ですぞ」


「……ぞ?」


「おっとつい口調が……普段リカンナさん達は、どうやって炭を作りますか?」


「どう……って窯の中に木を並べて火を付け、蒸し焼きにして……。全体に火が付いたことを確認して……。温度が上がったら密閉して、完成まで二週間くらい待つ……だけど」


「今から僕が作るのは、白炭しろずみと呼ばれるものです」


「白炭?」


「ですので炭窯から作る必要があるんです。……我が前に発現せよ!第四の術!」


時を駆ける創造クイック・クリエイト



 時を駆ける創造とは、材料と魔力を消費し

あらゆる道具を作り出す魔術である。



 豊が、小学生の頃夏休みの自由研究に

みんなを驚かそうとして独自に炉を作り

其処から様々な道具を作り出した体験が

魔術となって覚醒した術である。


 この術の真価は、ものを作る早さにある

作るものの大きさに多少差異はあるが

全て、およそ五分で仕上げることが出来る。

 ただし、出来は平均値であり

武器の業物を作ったりは出来ない。



 白炭を作る高温を出すためには

窯の下地を石にする必要があった

故に、新しく窯から作ったのだ。


「それではご説明致します」


豊は、黒炭と白炭の作り方の違いと

その使い道、価値の高さを説明した。




「なるほど……アタシ達の作る炭より高熱で焼き、消し粉で鎮火……出来た白炭は臭いを吸収したり、燃料にすると長時間持続する……と」


「更に言いますと、お肉や魚を焼けば、美味しくなったりもします」


「白炭を高級特産品として売り出せば、おばけ大樹の討伐に時間を費やしてでも、お釣りがくる……と」


「品質は良い訳ですから、後は如何に上手に売り込むかです」


「アタシが、知り合いの商人に頼んでみるよ」


「僕も、今試しで作ったおばけ白炭を、各地で売って宣伝しておきます」


「こりゃあ近いうち、おばけ大樹で炭を作るのが専業になっちまうかもねぇ」


「ははは、かもしれませんねぇ」


 成功の感覚を掴んだ豊は、時を駆ける創造を使い、窯を数基用意。

手元にあるおばけ大樹を全て、白炭に作り替えた。


 その後、豊が作った【おばけ白炭】を使って炭焼きを試して見たところ

肉は大変美味しく焼きあがった。



 村人はその美味さに感動し

『忌々しいおばけ大樹が、これ程役にたつ炭になるとは』

と、皆驚きを露わにしていた。


 翌日、別れを惜しまれながらも

豊は次の救いを待つ場所へと旅立った


 その後、この村はおばけ白炭で大成功をし

皆幸せに暮らしたそうな。

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