『リィフの告白と、ディアの封印』(3)

その時、いつの間にか背後から近寄ってきていた女子生徒が、リィフに話しかけた。


「あの……リィフ先輩、いいですか?」


小柄なポニーテールの少女はオドオドしていて、アイリ以上に気弱そうだ。


「ん?なんや?」

「私は、1年A組のカーナです。ディア様ファンクラブに入会したいのですが……」

「おぉ!もちろん大歓迎やで!ほな、カーナちゃんは会員番号536番やで!」

「ありがとうございます。会長、よろしくお願いします」


ディア本人が目の前にいるというのに、なぜか会長と会員で盛り上がっている。

しかしアイリは、その会員番号が特に気になった。


「そんなに会員がいるの!?ディア、大人気だね……」

「……恐縮です……」


もはやディアは遠い目をしている。

536人という事は、確実にこの学校の生徒数より上。

ディアファンクラブの会員数は学校という枠を越えて、魔界中に広がりつつあった。

ディアの写真集や、ディアの魔獣ぬいぐるみが城下町の店に並ぶ日も、そう遠くない。

リィフが起業する予定のファンクラブ運営会社も、大企業に発展する事は間違いない。





リィフの件も一件落着して、あとは卒業を迎えるのみ。

そして、アイリが高校を卒業する数日前の夜。

ディアはある決意を胸に、魔王の私室へと向かった。

こんな時間にディアが魔王の私室で二人きりになる事など、ほとんどない。

魔王はディアを部屋に入れると、ソファに背中を埋めて堂々と構えた。


「魔王サマ。申し上げたい事があります」

「なんだよ、改まって。さっさと言え」


ディアの態度と時期からして、アイリの事だろうと魔王はすでに見抜いている。

さすがの魔王でも、それを先に口にするような野暮な真似はしない。


「もうすぐ、私の『封印』の期限が切れます」


魔王が魔法によって封印した、ディアの恋愛感情。

その封印の効果は、アイリが高校を卒業するまで。

つまり、アイリが年齢的に大人になった時点で、ディアの恋愛感情は解放される。

その期限を設定して魔王に申し出たのも、ディアの意志によるものであった。


……アイリが大人になるまでは、自分を抑える。

……アイリが大人になった、その時は……


「その後は、アイリ様を私に下さい」


それが、ディアの決意。

魔王であり、アイリの父でもあるオランに、アイリとの結婚の許可をもらう事。

それも聞いても、魔王にとってはディアの心などお見通しなので、今さら驚く事でもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る