第30話 風邪と夢の事実

「クシュン!クシュン!!」

と優平くんが風邪を引いた。昨日の戦闘で雨に濡れて風呂に入り、またミッキーくんの家に行って荷物を贈ったりしたから。

民代さんが


「あらー…38度ですね。今日は学校をお休みですね。鈴さんも移ったことにして休まないと、シャーペンの術が使えませんからね……それに…」

すると優平くんは起き上がりスマホを手にした。


「もしもし…ゲホン…ミッキーくん?昨日の今日で悪いけど、ちょっと帰りに僕の家に来て結界守ってくれる?」


『ああ?もしやお前…風邪引いたのか!?柔な奴だなぁ!!はーっはっはっ!!仕方ない!俺が代わりに鬼退治してやるか!たまには!!…帰りにそっちに向かう』


「夕方までは何とか…結界保たせるから…」

と優平くんは電話を切った。


「流石にご病気になられると、この家の結界も弱くなって鬼が優平様の血を狙いに沸いてくるんですよ…」


「そんな!!わ、私にも何かできることはないんですか?私だって鬼なのに…」


「鈴様の中にも僅かに優平様の血が入っているので同じ様に狙われることをお忘れなく!」


「そ、そうだ!十二神将の皆様は?」

すると優平くんは木札を取り出して、


「朱雀を呼んでみるから見てて」

と言うと木札からボワンと朱雀……さん!?


「じゃなくて赤い鶏いいいい!!!?」


「あ、酷いです。鈴様。私ですよ!朱雀ですって!ご当主がご病気で力が弱まると私達にも影響されて、こんな姿になっちゃうんですよ…。、とほー。健康第一ですよぉ」

とテコテコ歩いた。


「こ、これじゃ無理ですね…。今までご病気の時はどうしていたんです?」


「今まではご病気になっても何とか夜まで安静にしてましたし、優平様も病気には気を付けて暮らしていました。熱が出ても37度くらいの微熱程度で薬ですぐに良くなりましたし。こんなに酷いのは久しぶりですねぇ」


「大丈夫。寝てれば治るよ…。薬も飲んだし夜には何とかなるよ…鈴さんも移るから寄らなくていいよ」

と優平くんは私と民代さんを追い出した。


「優平くん…大丈夫ですか?看病したいです…」

しゅんとしていると


「そうですね、可愛い奥様の看病なら優平様もすぐ元気になりますよ!」

と民代さんが言い、私はお粥を作ることにした。くつくつと粥を煮るのは久しぶりだった。1200年前は、こんな白米ではなかったけど庶民はよくお粥みたいなのを食べたのだ。特に私のような貧乏な村人は。白米を食べれるのは貴族の方々だ。


しかし、この未来のお粥はとても美味しくできると思う。卵も贅沢に入れられるし。氷枕や冷えピタなども用意して私はマスクを付けさせられた。これなら優平くんも許してくれるだろう。

ドラマではヒロインはマスクもせず、移ってもいいと好きな人を看病して、そのままキスしたりする展開がよくあるんだけど、あれだけは病人なのに何してるの!?と思う。翌日今度はヒロインが移るし。


それより風邪菌が移ってはいけない!現実は徹底しないといけない!私はアルコールを手にして、よく殺菌した。優平くんの部屋の襖は既に使用人が消毒していた。優平くんを苦しめるウイルスめ!除去しつくしてやるわ!!


私は部屋の外から声をかけた。


「優平くん…鈴です。食欲はありますか?」


「ゲホン…ごめん。あまり無い…」


「喉は乾きましたか?」


「う、ううん。ちょっとだけ…」


「じゃあ水分補給だけでもしましょう!入りますね」

と襖を開けて、布団に寝ている優平くんは苦しそうにしている。まだ熱が上がり始めたばかりで薬は効いてないようだ。あまり汗もかいていない。


起きるのをサポートして、お水を飲ませるのを手伝う。


「ありがとう鈴さん…」


「いえ、これからきちんと眠って汗をかいたら身体を拭いて着替えて安静にしましょう。食欲が出てくるのは夜かもです。いつの時代も病気になったら休むのは当たり前ですから」


「うん…。あ、鈴さん…。眠るまで手を握ってくれる?」

と手を差し出したから私はそっと握ってあげるとしばらくして優平くんは薬が効き始めたのか眠りだした。

よし、と私はソッと部屋から出て、シュッとアルコールを手にかけてウイルスを殺した。はず。

また、ちょくちょく様子を見にこよう。



真っ暗な中、僕はゆらゆらと歩いていた。

何処だろうか?ここは?

そこに…男の人が苦しんで頭を抱えていた。


「あの…どうしたんですか??」

と僕が声をかけると顔をあげたその男の人は僕を見ると


「ああ…主は…ずっと先の世の私か…」

と言った。顔…僕に似てる。…。

まさか!


「聡明…様!?」

うわっ!夢でタイムスリップでもした気分!!


「何、私は夢で不思議なことをよく視る…。先の世の私と会うこともあるだろう…。こんな…時でも…」


「こんな時とは…!ま、まさか…。お嫁様を堂満様に寝取られ、殺した後ってことですか!?」

すると聡明様が顔面蒼白になった。


「そうかそこまで知っているとな?いや、残っているのか?主の世でも!?なんと情けないことよ……。よもや、この聡明が唐に行っている間に……」


「………」

でもこの後、鈴さんと出会わないと…僕と鈴さんが未来で会えなくなる!?それは不味い!


「あ、あの御先祖様…。いえ、聡明様…!今はそんな女の人はもうスッパリ忘れた方がいいですよ?もっと可愛い鬼の娘さんが…生まれ変わった僕のお嫁さんになるんですし」


「鬼の娘だと?お主は何を…!鬼は使うか退治するものではないか」


「……いずれ判ります。貴方様が僕ならば、鈴さんに出会った瞬間に必ず恋に落ちてしまいます。


でも年齢差で貴方様は鈴さんには手を出せません。この時代の貴方様には既に奥様とのお子様が居るはずですからね…。


堂満様と同じようになっては子供が不幸になり、土御神の血筋は絶えます。すると僕も生まれなくなり、僕の世で復活する酒呑童子の生まれ変わりとも対峙できなくなります。


歴史を変えることはできないのです。聡明様」


すると聡明様は…


「そうか…酒呑童子の生まれ変わりか…。あのような危険な鬼が、お主の時代に…それは私でないと倒せぬ。だから先の世から忠告しに来たと申すのか?」


「えっ!!?いや、それはよく判らないです。偶然熱が出て…!?


とにかくこの後鈴さんに出会っても、決して手は出さないで1200年の封印をして眠らせてください!!必ずです!


それから他の男の人に触れないように…。あ、女の人は可能です。眠っててもお世話とかしなきゃだし…」


「ふむ…そうか…。で、ではそのように計らおう」


「封印を解く方法も子孫に残し伝えてくれないと、僕が封印を解く方法が判りませんからね」


「して…その方法とはどのようなことだ?」

えっ!?何これ?なんだこれ?さっきから思ってたけど、もしかしてこれ!鈴さんの目覚めって僕が聡明様に指示してんの!?


「え、ええと…鈴さんに唯一触れる者が貴方の生まれ変わりの僕のという事になるので…。とにかく僕の血を飲ませることで目覚めるのです」


「ふむ…そういうことになるのか…。その鬼娘に会うのが楽しみだ。その娘は何処にいる?」


「え…?そ、そこまでは…。鈴さんはどこかの村で暮らしていて、鬼だけど人は喰っていない。人に近い鬼ですから見た目は普通の娘です。


でも鬼から生まれた子であり、村八分を受け、鈴さんが出かけている隙に家を村人に焼かれ、両親は殺されて鈴さんも殺されそうになり、古寺に逃げて聡明様に出会って眠らされたと…」


「ふむ…古寺か…。幾つかあたって見ようぞ」

と聡明様はうなづいた。


「あ、あの!鈴さんに会ってもこの事は言わないで初めて会ったように振る舞っていただけると…。まぁ初めて会う事になるけど…」


「もとい、嫉妬から嫁を殺してしまった私にはもうこの世で女子を愛することは出来ない…。許してくれ。叶うことなら主がその鬼の娘を幸せにしてやってくれ……。そう言えば主の名は?」

と聞く聡明様…


「あの…僕は…」


とそこで名乗ろうとしたが、僕は嫌な気配を感じた。戻らなければ…。そう感じた。


そして目を開けるといつもの僕の部屋で寝ており汗がビッショリだ。この気配…。結界が…。


「くっ!!鬼…か…」

まだ頭がクラクラするし、体力も戻りきってない。

しかし…まさか…鈴さん…!ようやく判った…。君はやはり僕のお嫁さんだったんだ!!

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