第29話 雨の日の贈り物
「よしっ!!勝ったああ!!」
と相撲を見ていた太陰お婆さんは、ガッツポーズで喜び、テレビと座布団をしまい、変態の優平くんを見て、お婆さんは
「全く!すぐに血だらけで服を汚す当主じゃな!」
と手を翳して月の光りを優平くんに当てた。するとドロドロの血が浄化されていった!
「んぎゃ!!な、何をする太陰ばばあ!!血が!!綺麗になっちゃったじゃねーか!!」
「クリーニングしてやったんじゃから有り難く思わんかい!!」
と叱りつつも太陰お婆ちゃんは木札に戻った。
身体は綺麗になったけど、雨で濡れた優平くんに私は駆け寄る。
「へっくし!」
とクシャミをする優平くんは傘を差した私に飛びついて(剣を持ったまま)
「寒いよおおおお、鈴ううう!!俺を暖めてくれ…。」
とグリグリ肩に頭を押し付けた。私は濡れた優平くんを片手でさすったりして、
「早く帰って、お風呂で暖まりましょう?この後、ミッキーくんの所に行くんですよね?」
と言うと優平くんは傘で片手が塞がってるのをいいことに濡れた手でやっぱり太腿を撫でたりするから私の制服も湿ってくるじゃない!!
と私の胸に顔を埋めた瞬間に、私は片手で優平くんの首に、いつもみたいに手刀を喰らわせた。倒れる瞬間に身体を支えて連れ帰る。私も鬼だから力はある。何とか連れ帰り、
男の使用人が優平くんをお風呂場まで連れていき、彼は風呂に浸かりながら目覚めて上がったらまた土下座して謝ってきた。
それからミッキーくん達の家に向かった。
*
神社で不覚にも鼻血を出して倒れた俺は目が覚めるとオンボロアパートに帰ってきて寝転んでいた。どうやらイドミが運んで移動させたらしい。
…にしても何でこいつ…狭い押し入れの下の段の俺の横で寝ているんだ!?
し、しかもよく見たらいや、見てないけど白衣に下着姿かよ!!
ああっ!!イドミの替えの服があんまり無かったことを思い出したわ!でもだからって!!何でだ!!いつもの黒い服は昨日イドミは洗濯していたように思う。
「イドミ起きろ!バカ!!俺の服を着ていいから!!」
と指示するとモソモソとイドミは起き上がり寝ぼけて俺にキスすると俺のTシャツを着始めた。下のズボンもぶかぶかだけど何とか履かせた。これから優平達がくるしな。
制服はイドミが干していたけど乾くだろうか?
そんな心配をしていると時刻は20時になり、お腹が空いてきた。結局今日は夕飯を我慢するかと諦めていたらチャイムが鳴り、優平達が荷物を持ってやって来た。
「や、やあ…ミッキーくん?元気?」
とちょっと照れくさそうに言う。
「契約を一部変更するよ。少しなら鈴さんとも喋っていいよ。僕たちお友達だもんね?」
とにこりと言うこいつが恐ろしい。
少しって…どのくらいなんだ!?どのくらいが基準値なのかと思う。
しかし目の前になんと牛丼持ち帰りの袋を2人分置かれて俺の脳内は吹き飛んだ。
「ぎゅ…牛丼…だと!?」
「お肉です。ミッキー様!」
俺は震えた。
「一体何が目的だ!?まだ酒呑童子のことは判らないぞ!?まさか何か面倒な依頼か!?誰かを大量に呪いにかけるから手伝えとか!?」
と言うとキョトンとした優平は
「え?ち、違うよ?普通に奢りだよ。友達に牛丼を奢ったら悪いの??」
と言う。くっ!!なんだこいつ!?ライバルの俺を急に友達扱いしやがって!!
あ…牛丼のいい匂いが!!
「早く食べないと冷めますよ?」
と鈴さんが言い、俺とイドミはもう我慢できなくなり牛丼を口に入れ、幸せタイムを満喫した!!
ジューシーな肉が俺を捉える。うっま!!普通のしゅき家の牛丼なのに!!それでも半額弁当で我慢していた俺たちにとって、満足いくものであった!!
「あ、それからこれ」
と優平と鈴さんが紙袋をいくつか俺とイドミに渡した。女物の服に下着に俺の服も入ってた…。洗剤もあった!!
それに…
「あ…制服…」
「替えのやつだよ。傘はコンビニで買ってきたよ」
と玄関にビニール傘が置いてあった。
「それから明日から民代さんが君達の分のお弁当作ってくれるってさ」
「!!!?」
「良かったでスネーク。ミッキー様」
とイドミが言う。
「な、何でそんなに俺たちに良くするんだ!?まさかっ!恩を売って100倍返しを狙っているのか!?」
すると優平はポンと俺の肩に手を置いて…
「い、今までごめん!ミッキーくん!!本当に気持ちだから受け取って?100倍返しなんて狙ってないからね?
酷いことしたりしてごめんね?もう先祖の因縁は捨ててくれると有り難いけど…。
後、これ、僕が使わなくなった古いノートパソコンだけど、ネットにも繋がるようにしといたから。連絡する時用にスマホも渡しとくね。もちろんこちらが通信費用持つよ」
と今度は機械類を渡してきた!!
スマホなんて…使ったことない!!
しかし優平はちょっと涙を溜めて
「…何か困ったことがあったら言ってね?僕たち友達なんだから!!」
を強調して、また来るよ!とか言って帰った。
「…………………」
「ミッキー様?良かったですネス湖!パソコンにスマホですって!!おまけにインターネットもできるみたいですね!!」
「ふ、ふん!あいつに返す金が増えただけだ!!
レンタルだと思っておけ!!こんなの!!」
しかしイドミは興味深そうに動かしていいかと聞いた。
「パソコンがあれば在宅ワークできるかもしれま千円!!」
と言いったので
「なっ!何だと!?在宅ワーク!!き、聞いたことはあるが大丈夫か?」
「はい!稼ぎは少ないかもしれませんが、私のエロ画像を売ったら…」
「やめろ!!変な商売すんな!バカっ!」
と、そこでイドミは可愛らしい猫動画の映像を流した。こないだは鼠にされてギラついた猫共だったが、まだ子猫で可愛いのが映るといいなと思った。
って!違うし!!
癒されてる場合じゃないし!!
「ま、まぁ、それなら俺が外でバイトしてる時はイドミは家で在宅ワークできるな!」
「はい!お任せくだサイン!!」
とイドミは敬礼してまたいじり始めた。
「あ…ミッキー様」
「何だ?」
急にイドミは思いついたように言う。
「いえ、このパソコンを介して酒呑童子の行方を探せませんでしょうか?怪異の情報とか、オカルト好きは専用のコミュニティを立ち上げてるっポイント」
「……そういうの、ほとんどがデマだろうけど、まぁ少しでも役立つならそっちも探っておいてくれ。ていうかお前パソコンの使い方、上手いな!」
はじめてのくせにこいつ何か上手いぞ!これならすぐ仕事出来そうな……
『あっ…はんっ!うっふん!』
と急に画面からいやらしい画像が流れて固まった。
「いじってたらなんかのサイト踏みました…」
するとその画面に
【閲覧料金が発生しました!下記リンク先をクリックの上、連絡先をご記入ください】
俺は青ざめた。
「何変なサイトに入ってんだ!!なんだこれ!?いくら請求するんだ!?こええええ!!」
思わずどうしたらいいのか判らず優平に電話してみたら…
「………それリンク先クリックしたらダメだよ?ウィルスか架空請求詐欺だから。無視して一旦パソコンの電源切った方がいいよ」
と説明され俺は滝のような汗からやっと解放され電話を切り高笑いした。
「はーっはっはっはっ!!架空請求詐欺だと?そんなのに引っかかってたまるか!!この俺を騙そうだなんて100年早い!よし!この動画流した奴をとりあえず呪う!!」
と俺はゴソゴソとその辺の草を乾燥させたヤツに紐でくくった人形を取り出した。そしたら隣人が壁をドン!と叩いた。
「大声出すんじゃない!クソ野郎!!」
と言われ、
「すみません!!」
と伝え静かにした。
するとイドミはすっと箱を取り出した。
「ん?何だそれ?」
箱にはお詫びと付箋が付いていたから開けるとなんと!!
「ひっ!!こ、これって…」
何と白いケーキが入っていた!!誕生日でもないのに!!しかもホール!!初めてホールなんか我が家で見た!!
ゴクリと唾を飲みケーキを切る手が震えた!!
するとイドミが手を添えて一緒に切ってくれた。
「なんか…結婚式のケーキ入刀みたいですね」
と言うから俺はボッと赤くなり、小声で
「バカ…へ、変なこと言うな!!ほら、食うぞ!あまりこれ残しておけないからな」
イドミにそう言いケーキを2人で夢中で食べる。
甘いっ!!
「ミッキー様泣いてルンバ?」
「…………泣いてねー…」
しかしイドミがクリームを胸に垂らしてしまい
「勿体ないから舐めてくだサイデリア」
とおねだりしてきたから俺は無視してさっさと片付けて押し入れに入って寝たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます