第28話 帰り道の雨

 僕はスマホを思わず落としそうになった!

 視てると頼さんがイドミさんにキスしたりセクハラしたりして、ミッキーくんは何か辛そうだった。あれ、ミッキーくんはイドミさんが好きだったのかとようやく気付いた。頼さんが帰ったら2人はいい感じになりキスとか始めたから慌てて術を解いたら予鈴が鳴り、鈴さんと急いで教室に戻った。


 鈴さんは席に着いて僕も授業を受けたが、何か他人のキス現場を覗き見してしまい罪悪感に覆われた。後、ミッキーくんに対してちょっと反省もした。彼のことは調べていたけどあんなに切羽詰まっていたとは知らなかったし…。いつも馬鹿みたいに突っかかってくるけど…本当は良い奴なのだと。


 後、頼さんの好きな先輩もさっき初めて知った。中々言わなかったからどんな人かと思ったけど片伯部先輩は本当に美少女じゃないか?ってくらい有名な先輩だ。あれで男とか凄いって僕も思うくらい。話したこととかはないが学校中の噂になるくらいには有名人だ。線も細いけど足は凄く早い陸上部のエースだった。


 ………まぁ…頼さんに猛攻されるのはご愁傷様としか思えないけど。


 午後の授業が終わるとやはり雨が降ってきた!!僕は用意していた傘を取り出して鈴さんと帰ることにした。雨だから式神が使えないんだよね。紙だし。


「ごめんね、鈴さんちょっと遠くなるけど…雨の日のバスは混むし、絶対鈴さん痴漢されるから乗りたくない!!ああ、ごめんね!!」

 と謝ると彼女は首を振り


「私のことを心配してくれたのですよね?優平くん…。ならいいです。優平くんと相合傘できるならいいです」

 とピタリとくっ付いて傘に入る。

 相合傘…。まだ鈴さんの傘を買ってないからそうなる。ならこれが最初で最後の相合傘なのかな。

 僕は勇気を出して鈴さんが濡れないよう肩を抱いて引き寄せる。


 鈴さん…が近い。目が会うとドキドキする。紫陽花の花を通り過ぎ、、いつもより時間をかけて帰る。鬼門が出てくるだろうと思うのだがまだずっとこうして歩いていたいと思う。


 *


「梅雨なんて嫌いだ…」

 雨を見ながら俺とイドミはまだ学校の玄関にいてうろうろとしていた。

 今日はバイトはないけど夜20時過ぎになるとスーパーでは半額シールが貼られるからそれを狙いに行く準備をせねばならない!!


「朝は晴れていたので余り傘は残ってませんべい」

 もちろん、貧乏人なので傘なんて無駄なものを買う余裕はない我が家!!


「このままここに居ても陽が暮れるだけだ」


「そう言えばさっきネズミの優平様の式神が私に言伝に来ました。20時頃君の家に行くと」

 俺は苦い顔をした!

 何で20時!?半額弁当買えないじゃん!あの野郎!嫌がらせなんじゃないか!?友達とか言っておいて!いや、友達じゃないから!あんな奴!!


「くっ!」

 と俺は制服の上着を脱いでイドミの頭にかけて鞄を頭につけて


「帰るぞ!!」

 と走り出した。


「あっ!ミッキー様待ってりやきチキン!!」

 とイドミも走ってくる。

 途中で少し雨が強くなったから神社で休憩した。鞄とか意味なかった。ビショビショだ。制服も優平の野郎が用意してくれたけど…クリーニング代ないしな…。家で洗うか…。洗剤が残り少ないから薄めるしかないか…。


「しかし…夕飯今日はなしか…すまんイドミ…」

 とイドミをふと見ると…

 イドミのデカイ胸は雨で透けている!!

 しかも可愛らしいブラつけてる!!何だそれ!?いつ…。あっ、制服貰った時か!?

 あの民代っておばさんがイドミに何か渡していた紙袋を思い出した。我が家はブラを買う金すら…。つかこいつ、今までずっと……


「グハっ!!」

 とそこで限界で俺は鼻血だして倒れた!!


 *


 俺は図書室で参考書を探していた。雨が上がるまでと思ったけどまだ止みそうにない。下校時間ギリギリまではいられるだろか?それまでに止んでくれればいいけど。今日は陸上部も休みだし。


 とあった!!あの本…。しかし高いな。微妙に届かないな。いや、頑張れば届くはず!

 と手を必死に伸ばすと上から白い手が触れてスッと本を取ってくれる。

 ゾワリとした。

 こ、この気配って!!


 振り向くと恍惚な顔をした、イケメン男みたいな顔で胸は一応あるけど下はズボンを履いてる変な後輩女…そしてあの日着替え中にいきなり入ってきていきなりキスして俺のアレをジロジロ見て触って行った変態九条頼子がいた。


「ひっっ!!」

 と俺は俺より少し背の高いその変態女を視界に捉えて逃げ出そうとしたが逃げ道を長い足でドンと又下で塞がれる!!


 いやああああ!何だよこいつ!!ストーカーだよ!!絶対そうだ!!


 無駄にイケメンな顔をニヤリとさせ九条は


「やあ、片伯部先輩!!こんな所で会えるなんて運命の赤い糸でやはりボク達は繋がれているに違いない!!」

 と言う。


「いや…帰って欲しい…」

 と言うと九条は


「先輩…この本を借りたいんでしょう?」

 と本を見せる。


「ああ、そうだよ!次の試験で必要なんだ!」

 と言うと九条はニヤリとして


「じゃあ今度デートしませんか?片伯部先輩!そしたらこの本渡します」

 と言う!


「なっ、何で!?俺がお前みたいな変態とー!!」

 しかし九条は止まらずに


「ああ、先輩その時はこの服とウイッグを付けてきてください!絶対に似合いますから!!」

 と紙袋を渡した!!

 恐怖に震えながら紙袋を覗くと…何と!女物の服にウイッグが入っている!!


「馬鹿にしてんのか!?俺は男だ!!よく女みたいって言われるけど!男なんだからな!!ていうかデートなんかしないし!!」

 もう参考書なんかいいわ!と図書室を出ようとするとガッと掴まれた。


「先輩、ごめんなさい。意地悪して。でも、もう少しここにいるといいよ?巻き込まれたくないならね…」


「え?」

 意味が判らないが真剣な表情をしていた。何だか判らないけど…仕方ないので俺は机に宿題を広げた。

 するとなんか後ろからはぁはぁと変態が見ている気配にゾッとする。

 俺は見た目が本当に美少女顔でしかないからもう女の子と交際するのは諦めていたんだけど…先日わけもわからないうちにこいつにキスされた。何でだ!!?

 やたら運命運命と言い出し、ストーカーだと思って逃げ回っている。


 その時雷が鳴り


「ひゃっ!」

 と悲鳴が上がった!っ!?

 驚いて振り向くと耳を塞ぎ目を瞑る変態。

 雷が弱点とは!!


 まぁうるさいのが黙ったからこれで宿題を集中させられる。しかしまた雷が鳴った時後ろから抱きつかれてしまう。

 ガタガタ震えているのが伝わり俺はどうしようと黙る。変態の以外と内面女子な部分を見てしまった。これは…使えると思った。


 *


 陽がくれた。

 鬼門が現れると中から緑鬼が顔を出した。やはり人の形ではないが動きがゆっくりで芋虫のような身体に頭に目が三つあった。優平くんは傘と鞄を渡し、木札で鬼神の1人を召喚した。


 木札から十二神将の1人太陰という老婆が現れた。


「太陰お婆さん。どうぞ鈴さんをよろしくおね…」

 と優平くんが頼もうとすると


「30秒でぶっ倒しな!!」

 と睨む。

 ええ!?


「え?30秒は無理で…」


「30秒だよ!!あたしゃねぇ、この時間相撲をテレビで観戦することにしてんだ!!雨の中呼び出されて老婆をなんだと思ってんだい!これだから最近の当主は!!


 ……ん?あんた…聡明様の生まれ変わりじゃったね?ありゃ、うっかり…」

 と太陰お婆さんは頭を掻く。


「はぁ…ボケてる…」

 と優平くんは頭を掻く。

 すると緑鬼は地面に潜り始めた!


「あっ!」

 優平くんは急いで剣を出して構えた。


「太陰ババア!!ボケてんじゃねーぞ!!鈴を守れ!!」


「やれやれ、年寄り扱いが酷い」

 と太陰お婆さんは


【月光】

 と唱えると私達の周りが明るく照らされた。そこだけ綺麗に雨が避けられていた。

 そしてお婆さんは空間からTVと座布団を出して


「娘!何しとる!あんたもこっちに来て応援するんだよ!!」

 と相撲をつけた!!

 ええええ!?応援するのは優平くんでは!?


「ちっ!…」

 と優平くんは舌打ちする。すると足元が盛り上がり優平くんはそれを避けて飛び上がる。


 緑鬼は


『土御神いいいい!!』

 とボコリと足元から地面に大きな口を開けて優平くんに襲いかかりバクリと喰われてしまった!!


「きゃあああ!!優平くん!!」


「叫ぶんじゃないよ小娘!」


「でも!優平くんが!!」


「あんなの大丈夫さ!変態は長生きするから!全く」

 どういうこと?

 と思っていると

 地面が盛り上がりそこから破裂するように血が吹き出して中から優平くんが飛び出してきた。


「ふはああああ!!体液とも血とも判らないドロドロの中に入ってしまった!!き、気持ちいいいい!!」

 と変態になってる!!

 緑鬼は地面に潜り、辺りはシンとなった。それに優平くんは


「おいおい、地中で眠って回復か?なんて惰性な奴だ!戦闘中に眠るなんてマナー知らずだ!!居眠り禁止だろうがあああ!そんなに眠りたいなら永遠に眠っていればいい!!」

 と優平くんは白い剣で身を守り、黒い剣でいつもみたいに印を切る。


【青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女】


 するといつもの巨大な網が現れると地面にスウッと吸い込まれるように消えてその直後地響きが起こり地面からドバッと網に捕まった緑鬼が出てきてジタバタと苦しんでいる!


「ようやく顔を出してくれたな?大丈夫、安らかな眠りを与えてやろう?眠ったことにも気付かないな?」

 優平くんは芋虫に剣を向け2本を交差させ


【六根清浄急急如律令】

 と唱えて白と黒の混ざり合った光りの球が回転しズバズバと芋虫を引き裂き血が出る。

 優平くんは既にドロドロの血塗れ状態でそれを眺めてうっとりしていた。

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