第21話 ミッキーの使役鬼

 あれから優平くんが何故そこにいたのかという事とかあの怖い人は鬼神の1人だったり、金髪の男は聡明様のライバルの子孫であることが判明した。


「そう言えばあの金髪さんに触った時ビリってしました…ちょっとだけ痛かったです」

 と言うと優平くんは


「えっ!?大丈夫?」

 と手や指を見るがなんともない。


「まぁ、もう会わないように気を付けよう…」


「でも…あの人外国人なのに日本語を喋ってましたよ!?」

 と言うと優平くんは


「まぁ、ハーフか何かじゃないかな?芦谷堂満の先祖に異人…外国人がいたみたいだから」


「そうなんですね…あんな明るい金の髪に蒼い瞳を間近で見たのは初めてです。ドラマやアニメでも良く見ます」

 するとカップ麺にお湯を注いでいた優平くんの手が震えてバシャリとポットのお湯が手にかかった!!


「ぎゃっ!!あっっつつつつ!!」


「優平くん!!」

 大変だ!優平くんが火傷しちゃう!すぐに冷たいお水で冷やさないと!!


 私は優平くんを引っ張りキッチンに連れて行き蛇口をひねりしばらく流水をかけるように言った。


「もう!何してるんですか!優平くん!注意しないと!!」


「ご、ごめん…鈴さんが…あんなヤツを間近で見たとか言うから…」

 と優平くんは何か不満そうだ。


「間近と言ってもそんな近付いてないですよ?」


「でも…もう会わないでね…。もし外であいつを見つけても近寄っちゃダメ…。何か嫌だし」


「それは…ライバルだからですか?」


「うーん、ライバルって言っても先祖同士がでしょ?僕も初めて会ったし…向こうはなんかライバル視してたけど。…なんか絡むと疲れそうな気がしたしね」

 と言った。


「あの芦谷の人も陰陽師なんですよね?式神や鬼神の玄武さんも見抜いたのでしょう?向こうも鬼退治してるんですか?」


「さあ…判らないけど、そんなことどうでもいいよ…あんまりあいつの話しないで」

 と優平くんは膨れた。これ以上言わない方がいいのかな。


「火傷は…」


「うん、大丈夫かな…すぐに冷やしたから」


「良かった!私のかかさん…えと、お母さんが私が子供の頃、お鍋のお湯ひっくり返してすぐに川のお水に手を付けていたんです。だから私も跡は残らなかったんですよ」


「川の側に住んでいたんだね?」


「はい!で、でもお魚は漁師さんの許可ないと勝手に取っちゃダメって言われて…」

 と言うとぐうっとお腹がなる。


「ふふっ、鈴さん、カップ麺が伸びちゃうから食べようか」


「はい!!楽しみです!!」

 と優平くんは一応保冷剤も冷蔵庫から出して少し手に当てている。


 そして私は初めてカップ麺を食べた!!

 何これ、初めての味…。不思議な味だ。普通の麺ともまた違う気がする。


「中々独特ですけど、美味しいですね!!」

 と言うと優平くんは


「これはあんまり栄養もないんだからそんなに食べたらダメ」

 と言う。うーん、まぁ確かに民代さんが用意してくれるお料理の方が素材を生かしていて生きてるお料理って感じもする。


「判りました!たまになら食べます!」

 とにっこりするといい子いい子と頭を撫でられる。


「母さんと父さんが生きていてこんなの食べたらびっくりすると思います…」


「……鈴さん…」


「ごめんなさい…私…お墓も作ってあげられなか…った…から…」

 優平くんはソッと抱きしめてくれた。


「これからも僕はずっと鈴さんの側にいるからね?………あ、そう言えばご褒美何がいいかな?ちゃんと買い物出来たしインターネットで何か選ぶ?」

 と聞くから私は首を振り


「じゃあ…キスがいいです…」

 と言うと優平くんは赤くなるが、判ったとうなづき顔を近づけ私はドキドキしながら待っていると…

 ピクリと優平くんは真面目な顔になって止まった。

 ど、どうしたんだろ。いえ、カッコいいですけど。


「何だ!?この感じ…」


 すると庭の方からドォンと何かが落ちた音がして、民代さんに使用人達が集まっていた。


「何事ですか!!?」

 と優平くんが声をかけると、


「あ、優平様!!……あの…何か判らないですが、あれは鬼ですか?」

 と庭にいる白衣に黒いシャツと黒い短パンを履いた鬼の女の子がいた。髪はボブくらいで角が生えている。


「今晩わんこそば!」

 と右手をピッと優平くんに上げた。


「ダジャレ!?」

 と優平くんは言う。ダジャレさん??


「私、芦谷光邦様こと、ミッキーの使役鬼でございマンモス!」


「え?あいつの?何で…結界は?」


「はい、強力な結界を見つけましたので土御神家のものだとすぐに判りました。普通に入れそうに無かったので少々結界の薄い隙間からなんとか穴を開けさせていただきましたンゴ!」

 と上を指すと結界に1人分の穴が空いていた。

 この鬼…強いの??


「っ!一体何の用だ!?」


「はい…ミッキー様が何度やっても電話番号繋がんねぇ!どうなってやがる!!?あ?出鱈目かこれ?畜生!あの野郎!許さん!おい、イドミ(イドミとは私のことです)土御神の陰陽師見つけ出して果し状渡して来い!!…との事です」

 となんか可愛らしい模様の封筒を何故かボインバインの胸から出して渡された。


「何この封筒…」


「あ、家に地味な封筒が無くて離れて住む妹さん用に買っておいたレターセットを使ったんでスナメリ!」


「は、はあ…」

 ガサガサとその場で封筒を広げて中を読むと


「明日の夕方17時に烏丸トンネルの前で待つ!」


「何で僕が行かないといけないんですか?因縁つけるのもいい加減にしてほしいです。先祖同士がライバルだったからって…」

 しかしイドミさんは


「はい、そうでマントヒヒ。ですが、ミッキー様はとりあえず今の貴方と会えて興奮しているんです。あれです、強えヤツと会ってオラ、ワクワクすっぞ!早く戦ってみてえ!!!って言う心境デスティニー」


「えええー…っ…」

 そしてチラリと私を見るとまた豊満な胸からゴソゴソ何かを出し、それを放った!!

 なんと幾つかの紙束に鼠花火と書いておりそれを投げるとシュルシュルと回る火花が現れ、それをそこら中に投げられる!


「わっ!!」

 優平くんが驚いて飛び退くと座布団が燃える」


「きゃあああ!」


「早く火を消すのです!!」

 とワタワタしだした使用人達を潜り抜け一瞬の隙で私はイドミさんに捕まってしまった!!


「ひゃあ!!」

 と叫ぶと優平くんが


「鈴さん!!な、何するんだ!!」

 と木札を出そうとするがぴっと私の首に長い爪を突きつけて


「ということで、動くと頸動脈を切り裂きまスシ。そういう事なので明日は指定の場所に来てくだサイン!」

 と私を抱えてあっという間に高く飛び上がり入ってきた結界の穴から抜けていく。


「鈴さん!!!」

 小さくなり、青くなる優平くんが見えて消えて、イドミさんはピュイっと指笛を吹くと真っ黒な大きな犬が現れた。額には六芒星が描かれていた。


「よちよち、さぁ土御神の鬼娘さん捕まりなさい。鬼門が出てくる前に移動しますヨッシー」

 と私が犬にイドミさんと捕まると瞬きする間に知らないオンボロアパートに連れてこられた。ここにも結界があるが、イドミさんは結界に手を翳すと結界がグニョンと開いて私は犬に捕まりつつも潜り抜けた。


 そしてカンカンとなんか今にも壊れそうな綻びた階段を上がり一部屋の前まで来たらバンとドアが空いた後、仁王立ちで金髪のミッキーくんが不適な笑みで立っていた。


「はーはっはっはっ!!土御神の使役鬼だな!?おまえを人質…いや鬼質にして明日の夕方奴とどちらが先に鬼門の鬼を退治できるか勝負してやる!!御先祖様!見ていてください!敵はこの子孫の光邦が打ちます!!」

 はーっはっはっはっ!とミッキーくんは笑った。


 *

 その頃、鼠花火の火を消してひと段落した土倉家で僕は震えていた。

 怒りで!


「ゆ、優平様…」


「…………鈴さん…鈴さんを拐うなんて……ど、どうしよう…ああ、あいつ…あの野郎…あああ」

 と暴走しかける僕にスパンとスリッパで叩かれた。


「落ち着きなさい!優平!」


「か、母さん…」


「何やら本家が騒がしいから来てみたの。勝手に入ってごめんなさいね?」


「い、いいよ…」


「そんなことより結界は塞いだの?」

 と言われる。唇を噛みしめて血が出たが、庭に出て結界の穴をとりあえず閉めた。


【複!】

 ブヨンと結界は塞いでいき、強固にしておく。


 鈴さん…!待ってて!!


「あら、出掛けるの?これから?勝負は明日なんでしょう?」


「明日まで悠長に待てないよ…」

 母さんと民代さんはため息をつくと


「優平…変態もほどほどにね?」

 と背中を押されて僕は駆け出した。


 木札から天空と朱雀を呼び出して白い大きな梟の式神に乗って移動した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る