第22話 優平くんブチ切れる
「はーっはっはっはっ!!我が芦谷家へようこそ!鬼娘!!」
と大声で笑うミッキーくん。
すると隣のドアから
「うるっせええええんだよ!!隣の外人!!ぶっ殺すぞ!!」
とバンと怖い男が顔を出して私とイズミさんを見てポッと赤くなった。
「ちっ!イケメン外国人だからって、女連れ込んでイチャイチャしやがって!!てめえ、1人くらい寄越せや!!」
と睨みつつも私たちにはニヤケ顔をした。
「はぁ?何のコトデースカ?ミーワッカリマセーン?日本語ムズカシーネ。ハーイ」
とすっとぼけた。
「ちっ!これだから外国人は!いいか!とにかく静かにヤレよ!?」
とバンとドアを乱暴に閉めた隣の人。
「……んー…コホン…じゃあ、し、静かに入室しろ…」
と急にボソボソ喋りだしたミッキーくん。
とりあえず私達は静かに入室した。
部屋の中を見るとやはりボロボロだった。何か天井も補修したりしてある。懐かしいオンボロ我が家を少し思い出した。全焼したけど…。
「粗茶です」
と勧められたのはお水だった。
「おい、イズミ…お茶っぱは?」
「そんなもんありま千円」
「くっっっ!貧乏が…憎いっっ!!」
とミッキーくんは泣いている。
しかもぐうぅっとミッキーくんはお腹が鳴っていた。夜の21時過ぎだし。
「夕ご飯は食べたのですか?」
「……………」
「これからですよ、ねっミッキー様」
とイズミさんはガサガサと何かを取り出した。
それは…半額シールの貼ってある、とっても小さなシャケの入ったお弁当だった。
「……………」
「何だよ?何か文句あるのか?俺が貧乏でおかしいか?そうさ、俺は貧乏だ!親父達は借金で夜逃げするし、芦谷家は陰陽師と言ってもおまえんとこの土御神の貴族と違って民間の陰陽師というか本当は呪術師なんだよ!そっちのが専門だった」
「そうなんですか」
「そうだ!だが土御神のライバルとまで言われた御先祖様を誇りに思うし、俺にも力が宿ってることに感謝する!!」
「でも…確か、聡明様が家を開けている間に聡明様の奥さんを堂満さんが寝とってそれで聡明様に怒りをかったんでしょ?それって酷いですよ?浮気じゃないですか!不倫です」
「知らん!そんなこと!!」
とキッパリとミッキーくんは言った。
「ええ…知らないって…」
「御先祖様をバカにすんな!男女の揉め事はそれはそれでこれはこれで俺は堂満様のお力を称えているんだ!!大体お前んとこは十二神将て鬼まで従えてるのに、まだお前みたいな使役鬼まで囲って何なんだあいつ!!」
「違います!私は優平くんのお嫁さんです!!」
と言うとミッキーくんとイズミさんは驚く。
「は?嫁?何だと?お前が?鬼じゃん!!」
とジッと見て今しがた気付いたように何か赤くなった!!
「お、お前!!よ、よよよく見るとすっっげー綺麗な顔してる!!それに人を食った感じもなしか…何だよお前!?」
「私はだから優平くんのお嫁さんの鈴です!!」
「よ…嫁か……」
ミッキーくんはうーんと考えて何か思いついたのかふっと笑った!
「ふはははは!即ち!お前を俺のものにしてやれば御先祖の仇を取れるな!!」
と私に触れようとするとパチンとまた何か痛みが走った。
「いてっ!!……そうか…お前…凄く変な呪いがかかってんぞ?生身の男がお前に触れない呪いだな…あいつ以外」
えっ!?そんな呪いが!?確かに私が1200年眠ってる時男は触れないとか聞いたような気がする。まさかまだ有効だったの?
「はっ!面白い!俺が解いてやる!呪い専門だしな!!」
とミッキーくんは紙にマジックで六芒星を描き始めたが、途中で擦れだす。
「うぐううう!おい、出ない!インクが擦れて出ないいい!」
「困りましたね、ミッキー様…シャーペンも芯が切れてますし。あ、これはもう血で描くしかないですネッシー」
「えっ……やだよ!痛いじゃないか!!」
「でも…変わりのはありま千手観音」
「…………くっ!!!」
とミッキーくんは歯で噛んで指から血を出して泣きながら何とか六芒星を描き
【解呪!】
とパァンと手を打つと私の身体から何か飛び散った気がした。
「よし、解けた!」
ガシっと私の手を両手で包み込み、どうだどうだ!凄いだろ!とはしゃぐミッキーくん。
イズミさんは
「あ、…来た…」
と言うと
天井がミシミシ言い、バキャバキャ派手な音がしたと思うと天井に穴が開き、そこからなんと優平くんが入ってきた。鬼の血は浴びていなかった。
戦わなかったの?しかし剣は握っている。
「おっ、おま…結界…いや、てて、天じょっ…」
と言う前に顔面に剣を握ったまま殴りつけた。
「んぎゃ!!」
とボロい壁に激突する寸前でイズミさんがミッキーくんを壁との間に入り受け止めた。
「ちっ、この野郎…。人の嫁に手を出してんじゃねぇよ?本当はさっき鬼門が開いて黄鬼と遭遇したけど、朱雀と天空に任せて来たんだよ…。鬼よりお前の血でも見てやろうと思ってさあああ?」
とギラリと刀を向ける。
「ひぎゃ!何だよ!こいつ!この前はまともそうだったのに!何か雰囲気違うし!!」
「おい、鈴、何かされたか?」
「し、してないよな!!?」
あまりの迫力にミッキーくんはびびってる。
「さっき、私にかけた男に触れない呪いを解いてみせて私の手を握りました」
と正直に言うと
「はぁ?お前何勝手にそんなことしてんの?鈴が俺以外に触れるようにわざわざしたのか?ああ、お前が鈴の身体に触りたかったのか?この野郎!!ぶち殺す!!」
と完全に優平くんは目がイッテる。
「ま、待て!勝負は明日の夕方って言ったよな?」
「は、んなもんはどうだっていい!お前を斬ってお前の血を浴びてやる!!」
「ぎゃーっ!!怖い!!く、狂ってる!!」
「ゆっ、優平くんダメええ!人殺しは流石にいい!」
と私は優平くんを止めようと後ろから抱きついた。
「くっっっ!!鈴!やめろ!離せ!お前の胸は柔らかいけど、今はっ…!この男を殺さないと気がすまねぇ!!」
「ひいっ!イズミっ!助けて!」
とミッキーくんはイズミさんに抱きついた。
その時ドンっと壁から隣人が怒鳴った。
「うるせええええ!何やってんだ!!うるせえんだよ!!通報するぞ!!」
と言われて
「ひっ!すすすすみませんでしたあ!!友達と劇の練習なんですっっ!!静かにしますから!」
と隣人に返してイズミさんに抱きつきながら
「あの…場所変えません?ていうかお前がここで暴れたら俺の部屋全壊するから…お願いします」
と涙目でボソボソ言うミッキーくん。
「もう、帰りましょう優平くん…、人殺しはダメです!そんな優平くんは嫌ですよ」
と私が言うと優平くんは睨みつけたまま、ちっと舌打ちし、
「芦谷の子孫!鈴に免じて許してやる。次俺の嫁に指一本でも触れたらぶっ殺すからな!」
ミッキーくんは凄い速さで首を縦に振り、泣きながらイズミさんにしがみ付いていた。
優平くんは私を姫抱きにして天井の穴からひらりと上がった。そこには2人の鬼神さん?がいた。
「初めまして鈴様。俺は天空。助かって良かったっスね!!」
と優しげだけど、どこかのんびりした男の鬼だった。そのファッションは何というか個性的?だった。頭はパッションピンク?というあり得ない色だし服は夏前だけど黒のツヤツヤの革ジャンに何かおへそが見えるくらいのピチピチのTシャツ。Tシャツには髑髏の絵、それからズボンもなんかテカテカしていてブーツも履いている。そしておへそにはアクセサリー、ヘソピアス?耳も唇にもピアスがしてある。
もう1人の赤い髪の毛の鬼神さんは
「どうも私は十二神将の朱雀です。お見知り置きを」
愛想がよく、礼儀も正しい。服は男性用のお着物を着ていた。
「朱雀…黄鬼退治ご苦労だった。戻っていい」
「はい、ご当主様。では、お先に失礼するよ、天空」
「ほい、朱雀さんまたっス」
と朱雀さんは木札に戻る。
優平くんがジロリと天空さんを睨むと解っているとうなづき、天空さんはポケットから筆を取り出して空中に丸を描いた。
「はい、どうぞー」
と優平くんは私を抱えてその丸の中に入っていく。天空さんは
「そんじゃ、終わったら…お知らせくださーい」
と丸の外で手を振り丸は閉じた。
な、何ここ?と私はキョロキョロ見ると、神社みたいな所だった。周りは真っ暗だけど赤い鳥居を潜り、五芒星の提灯や曼珠沙華の花が揺れている。優平くんは石畳を通り社の襖がスッとひとりでに開きそこへ私を連れて入る。中はまるでお堂だ。壁には大きな五芒星に床には大きな白と黒の模様みたいなのが見える。
優平くんはそこに私を寝かせて
「口少し開けてジッとしていろ鈴」
と剣は持ったまま、自分の腕を剣で少し斬り流れ出た血を口に含むと私に口付けて更に喉の奥にその血を流し込んだ!!
ゆ、優平くんのち、血が!!
私はドクンと何かがまた包むような気がした。角が生えて瞳が赤くなっていく。
心臓が熱くなり鼓動も早まった。
【おん まか らぎゃ ばぞろ しゅうにしゃ ばざら さとば じゃくうん ばん こく ソワカ!】
と優平くんが唱えると床の模様が光り、暫くして落ち着いて瞳の色も角も引っ込んだ。
「これでいい…男避けをかけ直した。…まぁ鈴は可愛いからすぐに虫が寄ってくるがな」
と言われて赤くなる。
「ここどこなのですか?」
「……ここは常世だ。土御神聡明が作った現世にないもう一つの空間と言われていて、ここで聡明は瞑想したり呪術を編み出したり筋トレしてみたり妄想したり…毎朝ここで呪文を唱えたり。
よーするに精神と時の部屋的な空間だな。修行と銘打ってやがるがプライベート空間だ。まぁ、本当は嫁を寝取られて塞ぎ込んだ聡明がしばらくここに引きこもってたんだよ。管理は天空に任せてるから掃除も行き届いて綺麗だ」
と優平くんは説明した。
「私の男避けをかけ直す為にここに連れてきたのですか?ならもう、用はないから天空さん呼んで帰りますか?そういえば土倉のお家…火は消えましたか?」
と拐われる前のことを思い出した。
「ああ、大丈夫だ…火は消えたよ」
と優平くんは剣を置いた。
あ、いつもの優平くんに戻るかな?って思ったけどなんかあれ?雰囲気変わらない…な、何で??元に戻んない!!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます