Little boy & Giant tree🌄



これまでと同じ場所で、何十本もの枝を失ったものの、それでもしっかり立っていたのです



神さま達を奉った石像も、島を囲んでいた森もーーわたしが助かったのは、きっと森のおかげでしょうーー人けもありません しかしときどき忘れたころに、だれかの泣き叫ぶ声が幻聴のように聞こえてくるのでした



とにかく死の静けさが、どうしようもなく満ちているのです



あたりまえだった日常は何の前触れもなくかなぐり捨てられ、一寸の希望も残らず、歴史にとって価値のない化石のセグメントに成り果ててしまうなんて・・・



しかしそんな中でも、わたしにとってひとつの微かな望みが、漠然とした期待が胸の隅っこで渦巻いていました



ララク・・・!



わたしは早くあの子の顔を見て安心したかったんです



夜になれば、きっと会うことができる



だって、星を見る約束をしていたんだから



そう信じていました・・・



しかし、宵が深まってからも



あの子はあらわれませんでした



やがて濃淡な夜空に、流星群の雨がぽつぽつ遠慮がちに滴ってきました



お願いだから流れ星さん、このまま降り止まないでくださいーーもしもこの約束の夜が明けてしまったら、かれと会うことは一生叶わない気になってしまいまして、そう祈らずにはいられなかったのです




・・・・・・



けっきょく朝になっても、あの子は来ませんでした



次の日も、そのまた次の日も・・・




気づくと、冬がおりてきました



ほろほろと蛍のような雪が降ってきまして



この名もなき島を、余すところなくいたずらな銀の斑に染めてしまいます



かと思えば 陽炎をゆらゆら燃やされ、春の巡礼が煽られる番です



波のせせらぎを運ぶのどかな風は、思いを募らせる葦笛の音のように澄んでいてーー




そして



かれのいない初めての夏がやってきました




いくつもの季節が代わる代わる巡りまして、どれくらい虹の朝や雨の夜を越えたでしょう



あの子と会うことは



もう ありませんでした


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