Little boy & Giant tree🌅🌅🌅



よろしくね、パスクアーーかれは素早く笑顔を引っ込めて、ちらり太陽の位置を確認しーーいけない、もう行かなきゃ! そろそろ作業にもどる時間だろうからーーそう言うと、あっという間に駆けて行ってしまいました



あっ・・・待ってーーわたしは情けないです、これほど長い間生きているのに また来てくれる? その一言が、喉元でみっともなく足踏みしてしまうのでした



ーーほんとうに伝えたいことにかぎって、声に出せないのです これは、人もおなじなのでしょうか?



そのとき、もう落ち葉より小さくなってしまったかれが、くるっと振り返りました



あのねっーーどうやら何かを伝えようか迷っているようすでしたが、手のひらをぎゅっと握りしめて、意を決したようです たどたどしく、けれど一生懸命に、声を一段跳ねあげてーー



うまく伝えられないけど、ぼく、パスクアのこと好きだよ べつにきれいな花を咲かせなくたって、その・・・すてきだと思うっ



全身の力を振り絞るような叫びでしたーーまっすぐな瞳のララクを前に、わたしは時が止まったような感覚でした




それから、毎日のようにあの子は会いに来てくれました



たくさんのお話をしましたーー連日連夜とつづく石像造りの愚痴、野鳥を一撃で仕留めて褒められたこと、村の掟、食物問題、家族、結婚、外の世界についてーーそれでも、話題が尽きるなんてことはありませんでした



たまにはわたしから会いに駆けて、抱きつきたいと思いながら それでも、そんな愛おしい心をおしえてくれたあの子に感謝する、そんな毎日でした・・・




夢みたいな時間だったのですーー大袈裟だと笑われるかもしれませんが、ほんとうにそうだったのです かれの一言一言が刺激的で・・・魔法の光合成となって、わたしの身体中に愛のブドウ糖を循環させてくれるのでした



ちょうどふたりの会う日数が、わたしに生えている枝の本数を超えたころでしょうかーー



黄みがかったオレンジの鮮明な夕映えはちょっとだけ温かさを孕んでおりましたが、あたりの空気はすでにすっかり冷え込んでしまっているといった具合でした



青白い月日は待ちきれないようすで、無数の星が瞬く夜のとばりを、東の水平線から引っ張り出してきております



・・・きょうはなんだか、昼から賑やかなようだけど何かあったの、ララク?



きのうの夜中、数ヶ月ぶりに雨が降ったからね 島のみんなってば、朝からどんちゃん騒ぎなんだーーあきれるよ いつもいがみ合ってる部族のおとなたちが、働くのもやめてお酒飲んでるんだもん



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