Little boy & Giant tree🌅🌅
どうやら、ほんとうに大丈夫のようでおとこの子はすくっと、立ち上がるとおしりの土汚れを手で払いました わたしはほっと、胸を撫で下ろしました
ところで、どうしてあたしの身体に登っていたの?
おとこの子はばつが悪そうにーーあのね、さっきまで村のみんなで石像をつくってたんだ。こんどは海沿いに並べるみたい。いまは休み時間で、友だちとかくれんぼしていて・・・
そうだったのね
村長からも言われてたんだ、あの丘の木は大切だから近寄るなって この島でいちばん歴史の深い木だからって 知ってたんだけど、つい・・・
おとこの子は話しながら声がしぼんでいき、つぶらな瞳に涙をいっぱい溜めこんでしまいました
だれだって過ちを犯すものよーーわたしは慎重に言葉を選びましたーーあなたは優しい人になるわ
ほんとうに? ありがとう・・・そっちも痛かったよね
ぜんぜん平気よ
もう若くもないと思って・・・
心配してくれてありがとう 確かにこう見えて、あなたのご先祖さまが産まれるずっとむかしから、生きているのよ だけど身体は丈夫なの
えっ、めちゃくちゃおばあさんじゃん! ジャイアント・ツリーだ!
うふふ そうね、だけど女性に年齢を尋ねることは、控えたほうがいいかな
どうして?
デリケートな問題だからよ いつまでも、おんなという生き物は若くありたいものなの・・・わたしだって、若いころはプルメリアの花や珍しい木の実を携えていたわ けれどもう、いくらか葉っぱを残しているだけ・・・月日を重ねるごとに、さまざまな現実が突き付けられてしまうの
ふうん・・・そっか、わかった 気をつけるようにするーーかれなりに解釈してくれたのでしょう、じっとわたしの話を聞くと、神妙な面持ちで数回頷かれました
・・・ところで、坊やーー
坊やじゃないよーーかれは静かに訂正しましたーーぼくはララク、きみの名前は?
ララク・・・すてきな名前ね 残念だけど、わたしに名前はないの
ララクは眉を寄せて訝しそうですーーそんなの変だよ、生き物はみんな名前があるんだから
いちおう、ここの島民は「希望のシンボル」と呼んでくれているみたいだけど
そんなの名前じゃないよ
わたしは黙ってしまいました ララクを満足させられる返答ができなかったことがちょっぴりショックでした
と、ずっと俯いていたかれは不意に、
・・・パスクア
え?
きみの名前 ぼくが考えたんだけど、パスクアってどうかな?
ああ・・・きっとだれにもわからないことでしょうーーでもそれでいいのですーーあのとき、どれほどわたしの心が幸せだったかなんて!
ありがとう うれしいわ、ララク ほんとうにうれしい・・・わたしはきょうからパスクアよ
ーーこのきもちを懸命に伝えようかと熱心に考えを巡らせましたが、やめました 言葉にした途端にすべて陳腐になってしまいそうで・・・シンプルな謝辞に留めておくことにしたのです
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