Little boy & Giant tree🌅
昔話をさせてください
この星のどこかの海に浮かぶ、小さな島の話です あんまり小さいから 名前もありません
その場所は、地図に載っていないから月と 太陽と 渡り鳥だけが知っていました
いつからでしょう そんな名もなき絶海の孤島に、密かに人が暮らしはじめて139万年は、経ったころの話です
自然と人が仲良かったころの話です 平穏な時の流れのなかで、争いなんて知るよしもなかったころのーー
緑豊かな山々にかこまれた村には、数えられるほどの島民が暮らしていました
村の隅っこにある丘 その頂上で、しずかに海を見渡すように佇む古い巨木こそ、わたしです
失礼とは思いながら背を向けている方角には、鬱蒼と茂った森が広がっております
それらの木々よりわたしは、何倍も年上で恐縮ながら、島の象徴として大切にして頂いている木でした
わたしを知らない雲や鳥やリスたちは、きっと無口なお爺さんだろうと敬遠し近寄ることはしませんでした いつからでしょう、木の実のひとつもなりません
ほんとうは控えめで可憐な少女のような内面でしたが だれも気づいていなかったのです
あの夏の正午、ひとりのおとこの子と出会うときまで・・・
そう、あの日ーーちょうどわたしがお日さまの澄んだ日差しに微睡んで、うとうとしていたときです
ゆっくり黄色く強まる日光は、優しい温度でわたしたちを、踊るようにきらきら照らしておりました
するとわたしのおへそ辺りからーーつまり、幹のことですーー何かがよじ登ってくる気配に、ぎょっと目を覚ましました
そんなことをするのはリスくらいのものでしょうけれど、生憎とわたしにリスの友だちはおりません
わたしと話をして下さる物好きな方と言いますと、お空で嫌われてあっちに行けと風に吹き飛ばされてきた雨雲くんや、渡り鳥のコオバシギさんくらいのものだからです
見ると、そこにいたのは見知らないおとこの子でした 人の年齢は詳しくありませんが、きっと七つか八つほどの幼さでしょう
急いでいるようすで、せっせせっせとわたしの身体をよじ登り、あっという間に首もとまで辿り着こうとしています
思い切って、わたしは尋ねましたーーそこでなにをしているの?
わわっーーおとこの子は驚きのあまり慌てて手を離してしまい、そのまま落ちて尻もちを着いてしまいました
痛てて、びっくりした・・・
ご、ごめんなさい、急に話しかけたりしちゃって きみ、怪我はない?
ううん、だいじょうぶ 骨が折れるような高さじゃないし・・・ぼくのほうこそ、勝手に登ってごめん
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