第29話 条例違反

 ロックンローラー然とした男が都内某所を歩いていた。繁華街だ。

 紫煙をくゆらせて歩いていた。もちろん、周囲の人々は厭な顔をしている。

 そこへ区役所の職員である若い男がやって来た。ロックな男に声をかける。

「あの……ここは禁煙区域です。煙草を吸うことは禁じられています」

 ロック男はギラリと目を光らせ、職員を見やった。そして答えた。

「これはマリファナだ、馬鹿」

 職員はたじろいだ。白昼堂々マリファナを街の通りで吸う人間などいるのだろうか。確かに一般的な煙草とは違うニオイがしないでもないが。

 ロックな男はたたみかけるように、もう一度言った。

「馬鹿め!」

 職員は、衆人環視のなかで罵られることに立腹しつつも、とにかく路上喫煙をする者を止める責務を果たすために、もう一度注意した。

「と……とにかく、喫煙はやめていただきたく……」

 言い終わらないうちに、自称マリファナ吸引男は絶叫。

「馬鹿がああああああっ!!」

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