第10話 アウト

 野球にて「アウト」という言葉があり、それすなわち「死」である。


 世界を代表する天才打者・男前田にとってそれは耐えがたいことであり、一切アウトにならない打率十割が彼の理想だった。実際彼は、十割バッターだった。

 野球ファンがあきれるくらいの天才的記録。


 しかしある日、男前田は、「令和のカミソリシュート使い」として名をはせるライバル投手・松平の投じた鋭い内角球を頸動脈に受ける。男前田は急所をかすめた死球によって大量出血。彼はその日のうちに絶命した。


 野球での死ではなくて実人生での死だった。

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