第11話 夜に欠ける

 夜中に爪を切ると親の死に目に会えない――という迷信じみたものが昔からあるらしい。

 だが。とある少年は、それを承知で、爪を切るのは決まって夜中だ。


 少年は両親を憎み、疎ましく思い、早く死んでほしいと願っていた。今まで色々とあった。あんなゴミのような両親など、この世から消えてほしい。両親の死に目に会うなど面倒なだけだった。


 ――確かに少年は、親の死に目に会うことはなかった。

 夏の終わりに、夜の街を歩いていた少年はトラックに轢かれて即死した。誰にも看取られることなく。


 そして、少年の両親はまだ生きている……。

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