第9話 前衛もどきの作家もどきの

「前衛とは、才能なきクリエイターの墓場である」と喝破した評論家がいる……。


 そうかもしれぬ。

 ずいぶん昔、とある大学に通っていたころ、私は、前衛小説を作るということを目的にしているサークルに入ってしまった。


 しかし正直、他のメンバーたちの作品は読むに堪えなかった。まあ学生が書く小説など大抵はそうだが。


 私の作品は、自慰行為や排泄行為の模様を録音し、それを文章化するというものだった。高い表現力が求められるが、私なりに頑張った。しかし。

 正直、醜悪の極みであり、これはこれで読むに堪えない小説が出来上がった。


 懐かしく思い出されることではあるが、正直、良い思い出かと問われれば答えはもちろんノー。


 現実的に墓場に入ってしまったメンバーもいる。だが、そいつの顔を思い出せない。歳をとったものだ、といったありきたりの感慨を抱くくらいの年齢にはなった。


 革命の夢が破れた多くの若者の末路は、さほど大したドラマがない。

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