第8話 ひたすら逃避
――逃避というものは、ともすれば無間地獄にまで発展するものだ。
男は、学生時代に、学生の本分である学業から逃避した。学校という場所からも逃避し、無為に自室へ引きこもる青春を過ごした。こんなものが青春と呼べるかどうかは甚だ疑問だが……。
そして成人し、仕事からも逃げるというお決まりのコース。家庭からも逃げた。人間関係に関しては逃げるというより、最初から捨てていたという言い方が正しいのかもしれない。
ともあれ、今や何もかもから逃避してしまったこの男は、極悪非道なる非合法なことを犯しながら生活するしかない状況にいた。
結局は、警察――国家権力――からも逃げなければならない身にまで零落した。
とにかく、すべてから逃げなければならない人生の世過ぎ。
身も心も疲れ切った。厭だ。もう厭だ。
嗚呼、逃避生活からも逃避したい。
最終的には「自死」という究極の逃避が頭をよぎる。
逃避が楽であろうはずないことを思い知ったころには、もう遅い。引き返せない。
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