第5話

[ たちまち訳あり女子 ]


海学校内。


『終了の時間です。新入生は教室に戻って下さーい。』

校内には放送が流れていた、部活動勧誘をしていた生徒らは去っていく。

『流石は伝統だな』

『やっぱ野球部はカッコいいね!』

『えー、そう?サッカー部良かったよー!』

『吹部の一体感!凄く震えたー』

『どれも入ってみたいなぁ』

新入生らは先輩達の姿を見て感心していた。

瞬冶と明は部活勧誘を終えると、先輩達の姿の話をする。

(部活って凄い。)

『瞬冶ー!おーい!』

瞬冶は深く考えており、明はカマって欲しそうにしている。

ポンッという音が瞬冶の後頭部で鳴る。

『イテッ、明なんだよ?』

『凄えーかったな!な!』

『あぁ、そうだな、、、』

『特にー!、って瞬冶具合でも悪いのか?』

明は話を切り、心配をしている。

『見たか?あのバイオリン!』

『あー、あの一際目を引いていた女性の先輩だよな!』

『な、なんていうんだろう?』

瞬冶はアタフタしている。

『び、ビューティー?』

『そう!Beautiful、だったんだ。可愛いとはまた違う感じが目を引いた。』

『そうだよな、へぇー。瞬冶が言うならホントだな!』

『なんだよその信頼。』

『そだな!』

(やっぱり凄いなぁ先輩。)

校内は勧誘のお祭り騒ぎが終えているが、新入生らは新鮮な反応が伝統と言う理由なのだろう。


教室内。

瞬冶と明は会話をしつつ教室に戻り、満足そうに席に着く。

『いやーそれにしても凄かったな』

『迫力満点だよね』

ざわつき始めた。

『マネとかどうよ?』

『良いね、運動部だと忙しいけどそれ以上に得られる物が多くありそう。』

『俺、野球部ー』

『お、おれも!』

新入生からすると好感触であると分かる。やっぱり生徒達の熱意に何か湧き立つ物があると言えるだろう。

『どうだお前ら勉強になったか?』

そう言って先生が入ってきた。

一同は会話を止めた。

先生が手を前に出す。

『あぁいいよ、楽にしてもらってー。先生の体験談をー、ちょっと時間貰うね。』

(は?、はぁ)

生徒らは楽に聞く。

『先生の若い頃の話なんだがな、この学校では部活がさかんだろ?』

先生の話に一同は頷く。

『私たちの部活は陸上部で、実は山奥で合宿をやっていたんだよ。で、その夜。』

(え、なに合宿のその夜って)

周りがざわつく。

『突然クマが出たんだよ。みんなパニックで、私もその頃はあまり度胸も無く、こうやって皆をまとめることも出来ない生徒だったんだ。でも、私が入っている部活には凄い部長が居て、部員からは尊敬されている人でね。その時に皆をまとめ的確にクマへの対処方法などを説明し、後輩等を安全に逃がすことが出来たんだよ。でも、私はそれを見て流石と思って油断していたらクマは突然向かってきたんだ。私は腰が抜け死を覚悟した。だか、部長はクマへ勇敢には立ち向かったんだ、足は震えていたんだが身を奮い立たせクマを追い払おうと頑張っていた。部長の勇敢さが勝ち、ビックリして逃げちゃったんだ。勇敢な部長に感動してその後も合宿中は部長を「嵐部長」や「セイさん」なんて呼ばれていたなー。私は部長に命を救われた。その時の勇敢さや、助けたいという絆みたい思い、そして良い指導をしてくれた。忘れられないなー。』

振り返るように先生は話してくれた。

『私の話はまぁこんな感じかな?』

先生が話終えると、一人の生徒が発言した。

『その部長さんって有名な人ですか?』

紀亜だった。

(そう言われてみればなんか聞いた事ある話だな)

みんなは頭を抱えて考え込む。

『そうだね。流石は首席、日頃の情報収集が優れている。』

『いえいえ、ありがとうございます。』

皆は口を揃えて紀亜を褒める。

『名前はー、そう!五十嵐聖「いがらしせい」。』

皆がざわついている。

『あ、あの五十嵐聖ですか?』

『あれだろ?名指導官でスポーツの才がある人だろ?』

『その力とかで、フルマラソンを毎回完走って話は知ってるー。』

『現役バリバリだよね。』

『なー。』

あの紀亜や、瞬冶でさえも驚いている。

『瞬冶ー、その部長さん凄いな!』

明は目を輝かせ聞いてくる。

『あぁ、俺はこの学校の出身だとは知らなかったなー。明、この人は本物って言えるよ。たまたま動画サイトのオススメで運動してるのを見たんだ、その時、スポーツ全般が出来るというのを知ってさ。』

『へぇーなるほど!』

明は感心して瞬冶の話を聞いていた。

先生は皆の反応を見て、凄く嬉しそうにしていた。

『いやー色々叱ってもらったなー。』

昔を振り返る先生に皆はポカーンとしている。

『そうなんですね。』

紀亜が苦笑いし返答する。

『叱ってもらえる事は自分の悪い所を知れるとも言える。

部活で学べるのは目上の人への態度、協調性等色々なことだ。自分の未来の後押しだと思ってい挑戦してみても良いと思う。以上だ!』

数秒の間が起こる。

クラス内では自然と拍手が起きた。

皆が良いと言う海沢学園高校には、凄い先輩や歴史がある。新入生等はこれからどうなって行くのだろうか。

(やっぱ、海学は凄いな)

瞬冶は身にしみて実感した。

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