第2話
[ たちまち訳あり女子 ]
校内、体育館前。
『はぁー』
『はぁ、ま、待ってよー』
『放せって言ったのお前だろ!てぇ、間に合ってねぇし』
二人は全速力で学校に向かっていた。
体育館前に着いて入学式が始まっているようだ。
『って!また呼んだでしょお前って!』
『ごめんって。しかしーどうしたものか?』
(中はどうなってんだ?様子がわからないな。)
窓はカーテンで締め切られ体育館内は見えない。
(どうするかぁ)
『うーん』
『あのー、私の名前をー』
『あ、そうだったな。』
彼女は目を輝かせて『うん!』と喉を鳴らした。
『私の名前はー。』
その時、突然体育館で人の名前が呼ばれたかと思うと彼女はそれに反応し体育館の扉を「はーい!!」と言いながらド派手に開け放った。
『お、お前何やって、んだよ』
小声で言うが彼女には届いてない。
名簿を読む先生や参列していた保護者も『なにごとぉ?』と会場全体がざわつく。
変な間の後、彼女が口を開いた。
『私、「源紀亜・みなもときあ」です!ここに居まーす!』
彼女は胸を張り、今後も語り継がれる凄いレベルの自己紹介をして魅せた。
(は?!何してんだよ)
彼女の行為に瞬冶はポカーンと立ち尽くす。
周囲のざわつきが静まると入口側に身を向け先生が話す。
『きあさん返事は良いのですが、、遅刻です。後そこのきあさんの後ろに居る、えーと瞬冶さんもです。』
『『すみません』』
二人は頭を軽く下げ会場へ恥じながら席に着いた。
入学式後、校内。
新入生の入学式が終わり、校内は遅刻者の話題でいっぱいである。その遅刻者二人は同じクラスだった。
『げっ!み、源さんクラス同じクラスか』
『なによ『げっ!』って。もう、あまり迷惑はかけないようにー。』
彼女は俺へ嫌そうな顔をする。
クラスは28人制で少ないが1から3組あり、1年生だけで70人もの生徒が在籍している。
二人はクラスへ入っていくと教室内では同じクラスの生徒らが待ち構えていた。
『おっ!遅刻夫婦じゃないですか』
『よ!やっぱり出来てるのか?!』
『凄かったわー、二人とも。』
色々な反応が飛び交う。
『ち、違う。勘違いだよー、なぁ?きあさん。』
(誤解だー!)
俺は誤解を解こうとしたが、彼女はそうではなかった。
『夫婦だなんて、、、そんなぁ事ないですよー』
『お、おい。ま、まて』
(え、照れるなよ!)
『『キャー!』』
『『まじか!』』
クラス中がおめでたい雰囲気になると、それにお調子者らが食いついた。
『ヒューヒュ』
『まんざらなさそうだぜ!』
『お似合いですよ』
二人は逃げ場が無くなり、瞬冶はどう処理するか頭を抱えていた。
『もぅ、二人とも困ってるでしょ。』
瞬冶への助け舟が出た。
(先生?助かったー。)
『ほら、二人に早く。』
『『すみません』』
担任らしき先生がお調子者らを止めた。
『ほら、皆席に着け。ホームルームを始めるぞ』
『『はーい』』
一同は席についた。
瞬冶は先生の話を聞いていると隣の席の子が肩をポンッと手を当ててきた。
(ん?なんだ。)
『さっきはごめんな、そっとするべきだったと思う。』
『いいよ、誤解が解けたら一番良いんだけどね』
『だよな。自己紹介まだだったね、「木野明・きのあきら」。よろしく!』
(きの君かぁー、明るいな)
『お、おう。木野ね!』
『さんを付けろじゃん!でこすけ!』
『◯ねー!て!それあれだよな』
古い掛け合いを瞬冶と明はしていた。
『やっぱおもろいね!』
『ありがと、名前まだだったよな?』
『知ってる。好一瞬冶だろ?有名だぜ俺の事は「あきら」で良いよ!』
先生の話を後にして、二人は世間話に夢中だった。
『だよな。勉強はそこそこだね。』
『まぁ、勉強は任せれないからな!』
『お互い頑張ろう』
『おう!』
すぐに打ち解け、仲良くしている所を彼女はにらむ。
(びっくりしたー、まだなんかあるのか?)
瞬冶は視線にビクリとして、ため息をすると机に伏せる。
『んー女子ってわかんねぇ』
『なーそうだよ。て、なんか決めちゃってますね。よ!モテ男!』
バンッと黒板を叩く音の後に先生が怒鳴った。
『そこの二人!話しすぎですよ!』
『『すみません』』
周囲では笑いが起きた。
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