第18話「聖剣編7:名工コルテスのお使い」

 楽しい一晩を過ごした後、尚樹はヴェルザンディ達をつれてある場所に向かっていた。ブリダッタスの一等地にある豪邸と大きな作業場を構える名工、ジャン・ベルーガ・コルテスの元にだ。


ブリダッタスでの目的は彼から聖剣を作ってもらい、プレアデスを退治するのためのクエストに行くことだが、コルテスはこのゲームのクソゲー要素の一部であるため、尚樹は覚悟を決めて向かった。


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「さあ、魔界四天王のプレアデスをやっつけるためにも絶対聖剣を手に入れるわよ!」


意気揚々とヴェルザンディは皆の士気を高めコルテスのもとに向かっていった。しばらく歩いていくと、ひと際目立つコルテスの豪邸が見えてきた。

豪邸の隣にある作業場に行くと40代後半の眼鏡をかけしかめっ面をした男がいた。

「なんだあお前ら?」

「僕は尚樹と言います。コルテスさんでお間違いないですか?」

「そうに決まってんだろ! ここが俺の家じゃなかったらだれがここに住んでいるんだよ!?」


コルテスは喧嘩口調で尚樹につめよる。


「ちょっとちょっと! 私達はケンカしに来たんじゃないのよ! あなたに聖剣を作ってもらいたくて来たのよ」

「聖剣?」

「ええ! 許可証だってあるわ!」


ヴェルザンディがそう言ってハロルドからもらった許可証を見せる。


「ああ? お前らのようなヒヨッコ共がこの名工コルテス様に聖剣を作れとは何様のつもりだ!?」

 許可証を見せてもコルテスはケンカ腰であり、より一層機嫌を悪くする。


「許可証があればあなたが作ってくれるって…」

「うるせー! 今日は機嫌が悪いんだ! こんなもんこうしてやる!!」


そう言ってコルテスは許可証を奪うと両手でビリビリに破いた。


「きゃああ! 何するのよ!?」

「許可証が…!」

「とっととここから出ていけ! てめえらなんかに聖剣なんざ作ってやんねからな!」


そう言ってコルテスは作業場の戸を閉めた。


「ちょっと何するのよ! それでもアンタ名工なの!?」

「ヴェルザンディさん!開けちゃだめです!」


ヴェルザンディが納得いかず無理やり戸を開けると。コルテスはバケツに水を入れて2人にぶちまけた。


「帰れ帰れ! 二度とその顔を見せるな!!」


そう言ってコルテスは戸を閉めた。


実はこれはゲーム通りのシナリオであり、コルテスは許可証を持ってきても作ってはくれず機嫌が悪いという理由で主人公達を追い返すのだ。ちなみにもう1度戸を開けて話そうとするとさっきのように水を掛けられる。

 コルテスは気難しい職人らしいがプレイヤーからは気難しいの意味を間違っているんじゃないかと言われている。だがこのコルテスが聖剣編のイベントのメインともいえるので彼に作ってもらう許可を得れるまで先に進めないのだ。


「仕方ありません。町に戻って他の方法を集めましょう」

「そうですね。2人共濡れているので着替えないといけませんし」

「ハックション!」


皆は一度町に戻ることにした。というかこれが正しい攻略方であり、長いお使いの始まりであった。


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―ブリダッタス城下町・ビネガーの町


尚樹達は聖剣を得るため情報収集にいったが町の人々から聞いたのは


「コルテスの野郎しか聖剣を作れねえよ」

「あのコルテスのバカしか聖剣は作れない諦めるんだな」

「二度と聖剣の話を出すな! コルテスのクズ野郎の顔を思い出す!」


道具屋・鍛冶屋は皆コルテスに対して憎悪に近い感情を出して否定的な意見ばかりだった。

聖剣は不滅の金属である『オリハルコン』で作る必要があり、そのオリハルコンを加工する技術の持ち主はコルテスしか今の所存在しないのだ。かつては5人ほどいたらしいが、寿命や行方不明など特殊な技術の持ち主として魔王軍にも狙われていたので貴重な人材なのである。

 そのため他の刀鍛冶職人は皆コルテスの元に教えを請いにいったが、コルテスのあのねじ曲がった正確とパワハラ染みた暴力に耐えきれず皆コルテスの元から去っていった。


「俺の息子は3年くらい奴の元にいたが、…今じゃ世間が怖くなって引きこもったまんまさ…」


武器屋の店主・ナミノリはため息をついて話していた。聖剣を作れるようになってもっと人の役に立ちたいといっていた息子は突然帰ってきたと思ったら、鍛えられた肉体は痩せこけ、表情は無になり、目の色は輝きを失っていた。

 今は回復しつつあるが、外にはでずナミノリの鍛冶仕事を手伝うだけの日常を過ごしているようだ。


「気持ちはお察しします。ですが、僕達はどうしても聖剣が欲しくて…」

「うーん…。そういやコルテスが贔屓にしているキャバクラがあるんだが…」


ナミノリによると、そこにはコルテスがお気に入りにしているキャバ嬢がいるらしい。だがコルテスが客ともめて1か月程出禁にされているようなのだ。


「『シズク』っていう子なんだがもしかしたらその子から頼まれたらあのコルテスのアホも動くかもしれない。このことは絶対に他のやつにバラすなよ。情けないが奴は一応国が認めた鍛冶屋だからなあ。しかも奴はあの勇者バルドールの元仲間だ」

「ええ!? あんなやつが!?」

「シっ! 大きな声を出すな!」


ヴェルザンディは驚いていたが、尚樹はプレイ済みで知っていた。


かつてこの世界を守った勇者バルドールとその仲間達。

剣士、ジャン・ベルーガ・コルテス

賢者、アンジェラ・ゼルベット

魔法使い、ジーナ・アーティス


この4人が魔王軍と戦い、勝利した勇者パーティだ。後に彼らは物語に関わってくる人物である。



「とにかく、コルテスの事はこれ以上関わりたくないからな。これ以上のことは話せん」


そういって店主は店に戻った。


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