第3話「序章編1:船と嵐と奴隷島」
―それはまだモンスターと人間が争っていた頃の遠い昔のお話。
天より降臨せし闇の竜神・ウロボロスと光の竜神・バハムートは、魔界と人間の世界にそれぞれ勢力を置き、互いに領地を奪い合っていた。
魔界の覇者、大魔王サタン・ブルーブラッドと人間界の英雄、勇者バルドールがそれぞれの竜神と契約し、死闘を繰り広げた。
最終的に相打ちとなり、竜神たちは魔剣と聖剣に封印され大地に平和が訪れた。
しかし、大魔王を復活させ人間界の制服を企む魔界四天王は、新魔王たるブルーブラッド2世と共に密かに軍を集め、侵略を開始した。
勇者バルドールを失った人間達は冒険者ギルドを立ち上げ、モンスター達に立ち向かう勢力を作り、どうにか均衡を保っていた。
だが、いつかサタンが復活すれば勇者を失った人間達は地上からいなくなってしまうだろう。
異世界より召喚されし未熟な勇者よ。
仲間と共に困難を乗り越え、この世界に平和をもたらすのだ。
この世界から光が無くなることはあってはならないこと。
封印されし2体の竜を覚醒させ、真の力を開放し、この世界を救うのだ…!!
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脳内に映し出される【ドラグーン・ブレイド】のあらすじ映像。
かつて激戦を繰り広げた魔王と勇者の戦いの後がこの世界の舞台である。魔王復活を企む四天王た達を討伐しながら仲間を作って冒険する物語だ。
始まるとすぐに船の上に乗り、突如現れた竜巻と嵐により船は大きく揺れ、主人公であるボクはヴェルザンディと共に理不尽にも吹き飛ばされた。
「何もここまで再現しなくてもおオオオー!!」
主人公はまずこの嵐に巻き込まれて、最初の場所である。奴隷島まで飛ばされるのだ。
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―奴隷島―
「起きろ! 人間共! 仕事しろ!」
小汚い感じのオークが尚希とヴェルザンディを起こしツルハシを渡す。
「あの、ボクらはここに流れ着いたんですけど…」
「うるさい! 人間働く! 鉱石を掘れ! 働いたら飯ヤル!」
頭が弱い感じのしゃべり方をするオークはそう言って尚希達を作業場へと投げ入れた。
雑な感じだが、本編もこの奴隷島に流れ着くとオークに連れていかれて労働を強いられる。
「アンタら新顔かい?」
「このアビスメタルを掘るんだ」
労働者らしき2人のおっさんがアビスメタルを見せて掘り方を教えた。
「うう…! 女神の私がなんでこんなことをおおおお~」
「黙って掘れ!」
それから約5時間程作業した。全身に筋肉痛が走る。
「作業やめ! 食料を配る! 並べ!」
労働をした奴隷の人間達が武器を構えるオークたちに怯えながら食料を貰った。
この奴隷島は魔王軍が武器を確保するために武器製造の資材となるアビスメタルを確保するために領地にした島である。
人間達は近隣の国々や、襲撃した船から連れてこられた人間である。人間を労働者にしているのは加工前のアビスメタルが繊細な材質の鉱石の為、力が弱い人間が適しているからである。
魔王軍と勇者が戦っていた時代にはモンスターと取引して金銭を得ていた人間もいたという程の価値ある鉱石だ。
「はあ~…。やってられないわよこんなこと!」
「落ち着いて下さい女神様」
「尚希、良く落ち着いていられるわね」
「ゲームどうりならこの後脱出イベントがあるはずですから…」
尚希の言う通り、労働者のリーダーである老人ジョセフ・ユナスンの指揮のもと、モンスター達に反乱を企て脱出するイベントが発生した。
「反乱だー!」
「歯向かう奴は皆殺しにしろー!!」
モンスターは斧や槍、魔法攻撃を使って襲撃を抑えようとする。労働者達は貯めこんだ武器に使える棒や鉄製の鈍器、爆薬を使って戦う。だが、種族の地力の差があるため、足止めをしながら脱出する作戦を主に労働者達は戦っていた。
「これで逃げれるわね!」
「…女神様。ちょっと待ってください」
「?」
尚希は木の棒を持ってある場所に向かった。
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「はあ…はあ…」
「クソジジイ、あの世で我らに歯向かったことを後悔するんだな」
デーモン系統のモンスターがジョセフに暴力を振るい、流血させていた。
「どうせもうすぐ寿命を迎えるんじゃ。殺せ…!」
「ああ? 人間ごときがオレ様に命令するんじゃねーよ!!」
モンスターはジョセフを殴りつける。
「ぐふっ…!」
「楽にやらすかよ! ゆっくり痛めつけてやるぜ。恐怖の中で命乞いをしながらあの世に行けええ!!」
モンスターはそういって再びジョセフを殴ろうとしたが。
「ジョセフさん!」
「下賤なモンスターだわ…!」
「ぐぎゃアアアアアア!!!」
モンスターはヴェルザンディの魔法攻撃で消滅した。
「何をしている…! 早く逃げるんじゃ!」
「あなたを置いて逃げることは出来ません…!」
「皆で生きて帰るのよ!」
「! …すまん! 迷惑をかけるのお…!」
ジョセフは本来のシナリオでは先のモンスターに殺されて、主人公に形見であるペンダントを託して死んで、反乱の犠牲者になるはずだった。
だが、尚希は一度プレイしていたうえでそれはあんまりだと考え、同じゲームの世界でも、この世界では自分はある程度自由ができるので、少しくらいキャラクターを救ってあげてもいいんじゃないかと思った。
「生きてお孫さんに会いましょう…!」
奴隷島を脱出し、冒険が始まる大陸を目指した。
「気を付けてね。あなたは戦えないのだから…」
ヴェルザンディはそう尚樹に忠告した。
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