六章 全ての真相

目を開ける。あの場所だ。

辺りを見渡す。すると、なぜか妹や友達がいた。

いや、当たり前か。

2人はまだ理解出来てないような表情で、ひとまず昼の作戦会議の続きをしようとした。

俺が気づいたことを2人に言おうとしたその時だった。

俺達の目の前に少女が現れる。

俺は軽く微笑んだ。そして、俺が話しだした。

「俺、分かったんだ。今起きている状況は夢なんかじゃ無い。

普通、寝る→悪夢→起きる、の流れだったら夢としか考えられない。

でも、もし、寝る→起きる→悪夢→気絶→起きる、だとしたらどうする?

そう、この悪夢は夢では無く、実際に起きていること。

ただ、それ以前の問題だった。

今、俺がいるこの世界、いやこの世界自体は作られた世界なんだ。って

この世界は君が作り上げた世界。

あの悪夢も君が生み出した悪夢。

そうして、君の気が済むまで、この世界を作って、壊してを繰り返してたんでしょ?

で、この世界は君が亡くなったあの日の世界。

もっと早く気づくべきだった。

朝、一緒に登校したはずの妹がなんで家にいたのか。

学校で話してたはずの友達がなんで前にいたのか。

そう、俺は元の世界で友達と帰っていた途中で、この世界と入れ替わったんだ。

俺はふと思い出した。君が亡くなったあの日、あれは夏休み初日の事。

俺は間違って学校に行ってしまって、家に帰っていた途中。

いつもの交差点で、横から来たトラックに君は撥ねられた。

俺はすぐに周りの大人に助けを求めた。

みんな救急車を呼んでくれたり、なんとかしようとしてくれた。

それでも、君は助からなかった。

俺は何も出来なかった不甲斐無さに、目の前が真っ赤に燃え盛るような感情を覚えた。

多分、この世界の悪夢って、俺のこの感情の事でしょ?

その時はそんな感情でいっぱいだったのに、今ではその事も忘れて、普段の日常に飽き飽きしてた。

ごめんね。君はここでずっと苦しんでたのに。」

そう言うと、彼女はこちらの方を向いて、泣きながらこう言った。

「ううん、私こそごめんね。

死んじゃったあの日から、私はずっとここにいた。

この世界は、自分の思う通りになって、すごく居心地が良かった。

生きていたころの世界はなんだかちょっぴり生きづらくて。

なのに、私もこの世界に飽き始めちゃった。

そんな時に君のことを思い出した。

会いたいな、何してるんだろなって思った時には、もう遅かった。

元の世界の君を、この世界に連れてしまった。

この世界は、良いところがいっぱいあるけど、1つだけ大変なことがある。

それがさっきの悪夢。

君の推理はほぼほぼ合ってた。

でも、違うところがある。

それは、私はこの世界を壊そうとしてるんじゃ無くて、守ろうとしてるってところ。

あの悪夢は私が作り出したんじゃ無い。

君の感情が作り出した"魔物"って呼ぶべきものかな。

本当にありがとう。私を見つけてくれて。

でも、ちょっと遅かったかな、もう"魔物"が手に負えなくなっちゃった。

ただ、君を連れてきてしまったお詫びとして、君だけは絶対に助ける。」

そう言うと、彼女は俺の手を取って、燦々と照りつける満月の方へと向かった。

「ここから帰れる。ごめんね、

私の我儘に巻き込んじゃって。

でも君といたこの3日間は

人生で1番幸せだったよ。

ありがとね、じゃあね。」

と彼女は行って、去ろうとした。

俺は彼女の手を取って、引き留めた。

「なんで俺を置いていくんだよ。

この悪夢は俺の感情だって言ってんだろ?

己のことなんて、

自分自身が1番つえーんだよ。

俺がいなくてどうする。

確かに、俺は別の世界の人間だ。

でもな、こっちの世界の妹や友達も、元の世界の妹や友達も、全員俺の大切な人なんだよ。

それすら守れないなんてなったら、

余計不甲斐無さが溢れ出てくるだろ。

せっかく助けようとしてくれたのにすまねぇな。

でも俺は逃げたくねえんだよ。俺自身から。

お前たちを救うためにもな!」

と笑って言ってやった。

彼女は泣きながらも笑い出した。まったく、と言わんばかりの表情を見せ、俺と手を握りしめながら、地上へと降りていった。

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