五章 動き出す物語の刻
目が覚める。当たり前だがベッドの上だった。
スマホをつけると、6:00の表記が。
外はまだ薄暗い時間帯だ。
俺は気分転換がてら、家の周りを散歩する事にした。
閑静な住宅街、特にこれといって特徴はない。
生まれ育った街。まあ、それほど地元愛はないんだけど。
1時間くらい歩いて、家に帰った。
すると、家族は全員起きていて、朝の支度をしていた。
そろそろ時間の余裕も無くなってきたので、俺も学校の準備を始めた。
「行ってきます。」
俺は妹と一緒に学校へ向かった。
学校で友達に再会した。昨日の夢の話をするためだ。
教室に入ると、友達が待っていた。
「昨日の夢、覚えてる?」と訊くと、彼もまた同じ夢を見たと言う。
やはり、妹も同じ夢を見たらしい。
俺たちは、夢の謎を解き明かすべく、夢の中で起こったことを書き出していくことにした。
まず、夢の場所はこの街だと分かった。
全てが真っ赤な炎で燃え尽くされた後の。
次に、何か分からない"ソレ"に追いかけられた場所は、いつも通学で使う交差点だと考えた。
そして、少女と出会ったのは、恐らくこの学校の屋上なのでは無いか、という結論になった。
2人が意気投合する中、俺は1人下を向いて黙っていた。
それから、俺達は夢に出てきた場所に行ってみる事にした。
まずは、少女と出会った学校の屋上。
そして、この街をぐるぐると回った。
すると、少し歩いたパン屋の近くで
「夢の中で目が覚めたらここにいた」
と妹が言い出した。
そのまま歩いていると、外れの神社についた。
そこで友達が
「俺は夢の中でいつもここにいた。」
と言った。
みんなこの街が舞台の夢なのかとは思っていたけど、どうやら開始位置は違うらしい。
そんな事を言っていると、あの俺達が追いかけられた交差点へと着いた。
俺達は顔を見合わせて頷く。
「ここって、あの事件があった…」
と友達と妹が口を揃えて言った。
そこで俺はこう言った。
「ごめん、2人に隠してたことがあるんだけど。」
俺は言葉を続ける。
「俺たちが夢の中で出会った少女なんだけど、もしかしたら、幼馴染の、あの子かもしれない…。」
友達と妹は驚いた表情を浮かべた。なぜなら、彼女はこの交差点で、数年前に事故で亡くなっているからだ。
「でも、どうして彼女が夢に出てくるんだ?」
友達が疑問を投げかける。
「何か伝えたいことがあるのかもしれない。」と俺が言うと、
「それなら、次の夢で彼女に会ったら、直接聞いてみよう。」と妹が提案した。
それから、俺はずっととある事について考えていた。
そのとある事というのは、この事件が始まった際に感じた"違和感"の事だ。
思い出せそうで思い出せない。もどかしい。
そんなこんなで気づけば夜になっていた。
ひとまず、今日は解散して、また集まろうと言う事になった。
友達と別れ、妹と家に帰る。
その瞬間、俺の脳裏に"あの時"の情景が浮かんだ。
はっとした俺は、家に着くや否や、自分の部屋に行き、あの時のことを一から思い出すことにした。
そうして、やっと気づくことができた。
俺は自分自身を殴りたくなった。
どうして気づかなかったのだろうか、こんな分かりやすい違和感に。
固定概念に囚われすぎていたのだろう。
そこで俺は、元々の固定概念を捨て、全て考え直していった。
時間も忘れ、気づけば辺りは真っ暗の深夜になっていた。
そして、俺はとある結論に行き着いた。
「そうか、そう言うことだったんだ。
今度こそは絶対にこの悪夢のような物語を終わらせる。」
と意気込み、俺は眠りについた。
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