友達のなり方

杉 司浪

友達って何だっけ。

 大学を卒業して、社会人になった。社会人は友達って言うより、同期。社会人になってはじめて知人ができた。お互いに地元が一緒で意気投合した。二人で飲みに行ったり、ドライブもした。毎日続く内容のないメッセージ。1ヶ月が過ぎても、お互いの距離は縮まらなかった。

 大学生間の友情は、下心(友情)で成り立っていた。一線を越えても、仲良くやっていた。4年もその様な環境にいたせいで、男女の友情のつくり方を忘れてしまった。社会人になった今、相手とどう距離を縮めて良いのかわからない。相手も友達という関係を気にしているようで、頻りに会話の中で友達だからと言った。

 ある日、その友達の家で一緒に映画を観た。二人で隣に並んで、お酒を片手に古い映画を楽しんだ。特に触れ合うことも見つめ合うこともなく、映画は終わった。この距離感ではなく、もう一歩相手の心に踏み込みたい気持ちになった。この人とするセックスはどんな感じなのか、どんな顔をするのか、少し気になってしまった。

 相手にその気があるのかはわからない。家に呼んだ時点で、おそらくその気はあると思う。もしくは、本当に友情を成立させる気なのか。一歩踏み込もうが踏み込まなかろうがこれからの対応は変わらない、それを相手は知らない。お互い探り探りのこれは、果たして友情と呼べるのだろうか。お互いに微妙に心を開けていないこの状況は何なのか。一線を越えることで打ち解けることができるなら喜んでしよう。

「どうする?映画終わったよ。」

相手からの問いに戸惑った。どうする?この先があるのか?

「どうしよっか。」

「家まで送るよ。」

ここで一線を越えるとおそらく友情は崩壊する。どちらかが好きになる、あるいはこの関係が嫌になるだろう。しかし、ここで帰るとお互いに距離は縮まらないまま。

 これはどちらかが一歩踏み出さなければ、いつか終わる友情な気がした。

「まだ帰りたくないかな。」

相手も別に嫌そうな様子ではない。お互いに声をかけないまま、ただ沈黙が続いた。

「やっぱり、帰ろうかな。明日も仕事だし。」

「そうだね、送るよ。」

お互いに沈黙が耐えられなかった。きっと、この人とは友情は成立しないなと感じた。そうなると、一線を越えた方が仲良くなれる気がした。どちらとも帰る用意をせず、座ったままだった。

「ちょっとだけ、近づいてもいい?」

「あ、うん。いいよ。」

少し肩が触れた。

「もうちょっと一緒にいようよ。」

お互いに肩が触れたまま、いつものように聞いて欲しい話をたくさんした。しかし、その先には進まなかった。以前よりは少しだけ、心が近づいた気がした。1時間程たった頃には、下心なんて消えていた。

「そろそろ帰ろうかな。」

「そうだね。」

帰りの車の中で何となくまだ帰りたくない気持ちを持ちつつ、終始楽しく会話した。

「今日はありがとう。またそのうち。おやすみ。」

「うん。そのうち。おやすみ。」

二人の友情は成立したと言ってもいいのではないだろうか。軽いボディタッチで心はぐっと近くなった。


 それから1週間後、ドライブの後で一緒に夜のファミレスで食事をした。食事中、お酒を飲みたいという話になって、また友達の家に行った。行く途中にコンビニでお酒を6缶買い、DVDレンタルのお店に行き、新作映画を3つレンタルした。一晩で観ようという話になって、お泊まりが確定した。

 友達の家に着くと、友達が先にお風呂に入った。タンクトップにスウェットパンツで出てきた友達は、意外と細身でくっきりと出た鎖骨が妙にエロかった。後からお風呂に入り、先ほどまで誰かがシャワーを浴びていたという形跡に少し興奮した。借りたパジャマは、タンクトップにスウェットパンツ。友達とは色違いで、なんだか恋人みたいだなと思った。

 せっかくお風呂に入ったのに、ふたりでベランダで煙草を吸った。つい、煙草を吸う横顔が綺麗で頬にキスしてしまった。友達はびっくりして目を見開いたが、何事もなかったかのように煙草を吸い続けた。部屋に戻り、暗い部屋で映画を見た。一作目はホラー映画で、怖いというよりびっくりする映画だった。びっくりする度にふたりで驚き抱き合った。お互いにビビリだねと笑い合った。抱き合ったまま、布団に寝転んだ。見つめ合い、どちらからともなくキスをした。それはからは止めることなんでできなかった。ゆっくりと舌で唇をなぞられ、こちらも舌で返す。口の中には煙草の心地よい苦さが広がり、相手がこちらの顔を話さないように相手の首に腕を回した。相手の細い綺麗な手がタンクトップの中にゆっくりと入ってきた。こちらもそれに応えるようにタンクトップの中に入り、相手の細い腰に手を這わせた。いつまでキスをしていたのかは興奮して覚えていない。

「脱いで。」

「そっちも脱いで。」

ふたりで服を脱ぎ、裸の体温が気持ち良くて離れたくなかった。熱い吐息の中、お互いに体を受け入れ交わった。腰に心地よいぞわぞわが広がり、手を握り合いながら何度も感じた。行為が終わる頃には朝日が窓から差し込んでいた。

「気持ちよかった。」

「気持ちよすぎて終わりたくなかった。」

裸のまま抱き合って眠った。起きてからのことなんてこれからのことなんて考えないようにした。

 これは汚く醜い友達のなり方。

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友達のなり方 杉 司浪 @sugisirou

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