第5話 ⑸


「母さん、ご飯ちゃんと食べてる?」


「ええ、食べてるわよ」


「ヘルパーさんの話だと、なんか食べきれないような食材が冷蔵庫にあったらしいけど……んっ? この窓のところに置いてある物、なに?」


「ああ、それはおもてなし用のだから、動かさないで」


「おもてなし用?」


「そう。変にあちこち動かして、見えづらくなったら困るの」


「プリンにカステラにメロン、生ハムのサンドイッチ……なんだいこの変な組み合わせ」


「いいのよ、それで」


「テーブルに置けばいいのに。……あ、ちょっとテレビの音、大きくしてくれる?」


「これでいい?」


「うん、このくらいでいいよ。……☓町七丁目って、このあたりじゃないか。殺人かあ、怖いな」


「物騒ねえ」


「被害者は二十代カップルか。しかもまだ捕まってない……包丁でめった刺しって、通り魔かな。母さんも戸締りには気をつけてよ。知らない人が来ても、すぐには出ないでくれよ」


「わかってる、こう見えても警戒心は強いからね」


「ならいいけど……あ、誰か来た」


「ちょっと出てくれる? これからおもてなしの準備をしなくちゃならないの」


「しょうがないな……さっきから、おもてなしって一体何?」


「とっても大事な事。忙しいの」


「やれやれ、わかったよ」

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