第5話 ⑸
「母さん、ご飯ちゃんと食べてる?」
「ええ、食べてるわよ」
「ヘルパーさんの話だと、なんか食べきれないような食材が冷蔵庫にあったらしいけど……んっ? この窓のところに置いてある物、なに?」
「ああ、それはおもてなし用のだから、動かさないで」
「おもてなし用?」
「そう。変にあちこち動かして、見えづらくなったら困るの」
「プリンにカステラにメロン、生ハムのサンドイッチ……なんだいこの変な組み合わせ」
「いいのよ、それで」
「テーブルに置けばいいのに。……あ、ちょっとテレビの音、大きくしてくれる?」
「これでいい?」
「うん、このくらいでいいよ。……☓町七丁目って、このあたりじゃないか。殺人かあ、怖いな」
「物騒ねえ」
「被害者は二十代カップルか。しかもまだ捕まってない……包丁でめった刺しって、通り魔かな。母さんも戸締りには気をつけてよ。知らない人が来ても、すぐには出ないでくれよ」
「わかってる、こう見えても警戒心は強いからね」
「ならいいけど……あ、誰か来た」
「ちょっと出てくれる? これからおもてなしの準備をしなくちゃならないの」
「しょうがないな……さっきから、おもてなしって一体何?」
「とっても大事な事。忙しいの」
「やれやれ、わかったよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます