第2話 ⑵


 ああ、ごめんなさい。


 わたしは、動く影が何ひとつ見えない窓に向かってわびた。


 なんてよこしまで勝手な思いをいだいてしまったのだろう。


 きっと何かわけがあるはずなのに、わたしは自分のことだけを考えてしまった。


 あのきれいな鳥はもう、この窓には戻ってこないかもしれない。


 どうしよう、どうしよう


 戻ってきて、戻ってきて


 お願い教えて、わたしはどうすればいいの?


 そうだ、とわたしは思った。


 あの鳥が好きそうなものを、窓辺に置いて置けばいいんだわ。


 どんなものが好きなのだろう。きっと素敵な物を食べるにきまってる。


 わたしの用意したご飯を とっておきのおもてなしを


 夢中でついばむ鳥が、目に見えるようだ。


 寂しくさせてごめんよ。もっと早く来ればよかった。


 ううんいいの。だってわたしたち、おたがいのことをよく知らないんだもの。


 そうなのだ


 わたしはあの鳥の名前も どんな暮らしをしているのかもまったく知らない。


 でも知らなくていい むしろ知らないほうがいい


 知ったらいろいろなことがきっと つまらなくなってしまうだろうから。


 わたしにはわかる。調べなくても全部わかる。


 そしてそれはきっと 間違ってはいない。 間違っているはずがない。


 ああ、この人はどうしてこんなにも自分のことがよくわかるのだろう。


 喜びにきれいな羽根をはばたかせる、鳥の姿が今からはっきりと目に浮かぶ。


 おもてなしをしよう


 わたしの想いのすべてをこめて。

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