第2話 契約完了数十秒で戦いとかふざけんなよ

「———ぐぅぅぅぅぅ……!!」

『そうだ、耐えろ。その痛みさえ乗り越えれば、オレの力を使えるからよォ』


 魔眼を右目に近付けた瞬間———右目が燃えるような熱さを持ち、俺は感じたことないけど……目を鋭利なモノで突き刺されるような激痛に襲われた。

 だから、俺に他人事のように言う魔眼にはちょっと殺意が湧くのも仕方のないことなのだ。

 

 無茶言うなよこの性悪魔眼……!!

 こちとらこの世界で15年生きてるっつっても剣で斬られたこともねーんだよ!

 痛すぎて普通に死にそうなんだが!?


 俺は右目を押さえつつ、地面に倒れてのたうち回りながら激痛に耐える。

 ちょっと洒落にならないくらい痛過ぎて、今も尚聞こえているはずの足音とかも全くと言っていいほど聞こえなかった。


「無理無理無理マジで痛い! おい、いつになったら終わるんだよ!?」


 右目を押さえるという、一見厨二病がやるような格好で痛みで悶える俺に。



『———あと3分』

「マジで、ふざけんなてめぇ……!!」



 性悪魔眼が楽しそうに嗤った。



 





「———……やっと、終わったか……」

『ケケケッ、生きるか死ぬか五分五分だったんだが……上手くいったようだなァ』


 痛みと熱が収まり、地面にぶっ倒れたまま抜け殻のように脱力した俺だったが、魔眼の衝撃発言に一気に身体に力が入った。


「五分五分!? お前、半分は俺が死ぬと思ってたのかよっ」

『ケケケッ、結局何もなかったんだしいいじゃねェか』


 絶対そういう問題じゃない。

 幾らなんでもそれは最初に言ってもらわないと困る。

 ただ……。


「…………なぁ、魔力が馬鹿みたいに増えたんだけど。これから俺、爆発すんの?」

『ケケケッ、それも面白そうだなァ。だが違う、それはオレの魔力がテメェの魔力と結合したからだな。今のテメェの魔力はざっと数千倍だぜェ?』

「数千倍とかちょっとレベチ過ぎて意味分からんわ! てか良くポンッってならずに持ち堪えてんな俺の身体!?」

『ついでに身体の強度も上がってるぜェ。試してみな』


 何だそのチート能力、この世の全努力した武術家とかアスリートに謝れ。

 てか俺的には全く変わった感じはないんだけど。


 魔眼の言い分に疑心を抱きつつ、魔眼が置いてあった机に近付く。

 軽く中指の第1関節で木製の机を叩いてみるも……まぁちゃんと堅い。

 ホントに強くなってのかよ……何て更に不審感を募らせながら———机に拳を握って撃ち込んだ。



 ———ドゴンッッ!!



 とてもじゃないが、ただの人間の出せる音ではない音が出た。

 花火が打ち上がる時の爆発音と同等以上と言っても過言ではない。

 そんな音が、ただの人間の拳が机にぶつかっただけで起きたのだ。


 机は案の定というべきか、木っ端微塵。

 もはや机の痕跡すらなく、机だったモノの木くずが地面に散乱していた。


 人間業とは思えない惨状を前に、俺は思わず零す。


「…………エグすぎんだろ。パワーアップにしてもパワーアップし過ぎだろ」

『ケケケッ、テメェのお気に召したようで良かったぜェ。それじゃあ———次に行こうかァ?』

「は? 次っ……て…………」


 まるで何かの力によって阻まれていたと言わんばかりに雪崩込んできた大量の盗賊の姿に、俺は尻すぼみに声が小さくなっていくのを自覚する。

 盗賊達は烈火の如く怒り狂っており、剣や短剣、槍に弓など……盗賊らしからぬ武器まで装備していた。


「テメェ、一体どんな力を使いやがったああああああっ!!」

「え、は? 別に何の力も……」

「嘘付けッッッ!! 俺達全員が結界みたいなモンに遮られてこの部屋に入れなかったんだぞ!! お陰で頭にキレられたわ!!」

「「「「「そうだそうだ!!」」」」」


 ドチャクソに逆ギレじゃねーか。

 てかそれよりどうやって結界なんか張ったんだよこの魔眼……。


『ケケケッ、その内テメェも使えるようになる。ただまずは……オレの言葉を復唱しろ。———『契約者のめいにより開眼せよ———【邪神眼アイ・オブ・カタストロフ】』ってな』


 …………。


「———嫌だ」

『…………は?』


 初めて魔眼が困惑の声を漏らした。

 そんな魔眼に、俺は遠い過去の消し去りたい黒歴史を思い出して、羞恥に顔を手で隠しながら続けて言い放つ。


「嫌に決まってんだろ! なんだよその厨二的な詠唱、無理無理超恥ずい! それは間違いなく俺に1番ダメージが行くね。羞恥で死ぬ気しかしない」

『いやでもテメェ……本当に死ぬぜ?』

「他になんか無いのかよ? てかこの歳になってそんな恥ずかしい言葉をこんな大勢の前で言わねぇといけないとか、黒歴史を晒すのと同義だろ」


 俺はこれでも精神的には30年生きているのだ。 

 確かに身体に引っ張られて精神年齢はもっと低いかもしれないが……それにしても厨二病は疾うの昔に卒業している。

 だが、結局は言わないといけないわけで。


「……これは絶対墓まで持ってく。誰にも聞かせられない」

『何でも良いけどよォ……早くした方が良いぜ?』


 んなこと分かってるっつーの。

 よし、覚悟を決めろケイト……!




「———契約者の命により開眼せよ———【邪神眼アイ・オブ・カタストロフ】……ッ!!」

 


 

 羞恥でどうにかなりそうな中、右目から真紅の輝きが放たれた。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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