世界の敵たる魔眼使い〜ゲームのモブが自我持ちの魔眼を手に入れた結果、第3陣営が出来上がった〜
あおぞら@書籍9月3日発売
第1章 自我持ちの魔眼と厨二病少女
第1話 喋る魔眼とか聞いたことねぇよ
『———ケケケッ。よォ、オレの適合者』
そう言ったのは、誰か。
勿論そんなことは分かっているが、理解が追い付かない。
まさか———魔眼が喋ってるなんて。
しかも、見た目は、まんま人の目からくり抜かれた様な完全な眼球だ。
魔眼だと分かるのは、机に置かれた瞳孔が異様に紅くて紋様があるから。
膨大な魔力を内包する魔眼は、机の上でギョロッと俺に目線を合わせる。
『ケケケッ、初めましてだなァ。会いたかったぜェ。だが説明している暇はねェ、今直ぐオレをテメェの右目に近付けろ』
「いやいやいや待て待て待て。何でこんな超絶怪しいモンを顔に近付けねーといけねーんだよ。そもそも魔眼が喋るとか聞いたことねーよ」
俺は声を潜め気味に言ってその場から数歩離れ、魔眼に怪訝な瞳を向ける。
だが、そんな様子を魔眼はケラケラ笑う。
『ケケケッ、そんなビビんなよなァ? 合わせて30年生きてんだろォ?』
「!? おまっ……何でそのことを知ってんだよ……」
『テメェに話し掛けてる時点で、もう殆ど結合は終わってんだよ』
そう、何を隠そう俺———ケイトは、転生者だ。
しかも前世では高校1年生……つまりは15歳で死んでしまった。
この世界に転生してから既に15年経っているので、魔眼の言う通り合わせて30年生きている。
———【代行者戦線】という名のゲーム世界で。
【代行者戦線】とは、主人公が光の女神の代行者となって、敵である闇の女神を討ち滅ぼすというゲームだ。
光の女神は人族と亜人族、闇の女神は魔人族と魔物族、といった種族に自身の力の一部を与えてこの世界の支配権を巡って争っている。
闇の女神が勝つと人族と亜人族は悉く滅ぼされてしまい、光の女神が勝てばお互いの和平が成り立つ。
だから魔人族と人族のハーフである主人公は、光の女神の味方になることに決めるのだ。
その時に、本来生まれつき能力を持っている他の者とは違って、ハーフだった弊害で何の力も持っていなかった主人公は直接光の女神と契約を結ぶ。
———と、ここまで話したが……不思議なことに俺も何の力も持っていない。
別にハーフでも何でもない、純粋な人族だ。
ケモミミも長耳も禍々しい角もないただの人間。
唯一言えば珍しい黒髪黒目である……といった所以外に他と違う点はない。
ま、自分でもそこそこのイケメンで鍛えてるから体格も良いとは思うけどね!
無能だからか全くモテたことないけど!
…………ホント何でだろうね。
別に俺は何も悪いことなんざしてないのに……酷いよ光の女神さん。
しかも不運は続くというモノで……今の俺はとある盗賊団に捕まっている。
現在この魔眼と話している場所もめちゃくちゃ敵陣の真っ只中である。
何なら盗賊団のリーダーの部屋。
『それで、どうするんだァ? オレと契約を結んでこの場から逃げるか、このまま死んでいくか……テメェが好きな方を選べ』
そう言いながらも『まァ実質選択肢は1つしかねェけどなァ……』と嗤う。
つくづく性格の悪い魔眼だ。
魔眼に性格がある時点でちょっと何言ってるか分からないけど。
……マジでどうしようかな。
癪だが……コイツの言う通り、俺にこの場に留まったところで死ぬしか道はない。
ただ、この性悪な魔眼と契約を交わした後に何が起こるのかも未知数なので、素直に頷けもしない。
うんうん唸りながら俺が迷っていると。
「———あのガキが逃げたぞッッ!! 今直ぐ見つけ出せ!! あのガキは力がねぇからそう遠くは行ってないはずだ!!」
そんな怒号が耳朶に触れる。
どうやら俺が魔眼の助言の下、閉じ込められていた部屋から逃げたのが遂にバレたらしい。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ……バレたら殺される……!!
でもこの魔眼も絶対危ねぇに決まってるし……いやでも……。
俺は焦燥感に駆られながら、ドタドタと無数の足音がする方と魔眼の間で何度も視線を往復させ……。
「———ああああもうクソッ。分かった、契約する。もうどうにでもなれ、どうせここに居ても死ぬだけだしな!!」
『ケケケッ、賢明な判断だぜェ。それじゃあ———オレを右目に近付けろ』
真紅の瞳孔を持つ魔眼を机から掻っ攫って———ヤケクソ気味に右目へと近付けたのだった。
———この時の俺は知らない。
「ケイトっ、私と……あっ———わ、我と恒久なる契約を交わすのだ!」
「交わしません。俺は契約が嫌いなんだよ」
「なんでぇぇぇ……」
「ケイト様、貴方は私達の長なのです。そのように無防備な姿を晒してはいけません。仕方ないので、私が代わりに貴方の身の回りのことを全てやりましょう」
「ごめん、ちょっと意味が分かんない」
———まさかこの契約のせいで自分が第3陣営の長になり……光の女神陣営と闇の女神陣営の何方とも敵対することになるなんて。
———まさか難ありな美少女や美女と関わらないといけなくなるなんて、思ってもいなかったのだった。
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この作品はコメディーあり、シリアスあり、厨二病要素ありのはちゃめちゃな物語です。
是非とも宜しくお願いします!
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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