第12話 大都市『ヒューマノン』
リチュと、ガキン、キズ―の、三人は、『エキドナ』の持ってきたリアカーに、乗る。
「『飛ばすから、
『特にリチュちゃん、お主は、あー、えーと、風の抵抗を、受けやすそうじゃしな。』」
『エキドナ』が、誤魔化すように笑い、走り出す。
その速さは、風のようで、三人は吹き飛ばされないように、荷台の縁を掴む。
リチュはさらに、体の形が崩れないようにする。
「うにゅにゅにゅにゅ。」「は、速い。」「おい、もっとゆっくり、移動できないのか!」
リチュ、キズ―、ガキンが、それぞれの反応をする。
走る速度を緩めず、振り向く『エキドナ』
「『お主ら、口を閉じていないと、舌噛むぞ?』」
「だったら、もっと、ゆっくり走れぇー」
森の中に、ガキンの声が響く。
——————————
『エキドナ』は、『ヒューマノン』の前、森の出口で止まる。
「『お主ら、到着したぞ。』」
『エキドナ』が、振り返り、三人を見る。
ガキンと、キズ―は、疲れ果て倒れていた。
リチュにいたっては、青色に戻って、液体と化していた。
「『お主ら、大丈夫か…』」
体を元に戻し、『エキドナ』の心配に答えるリチュ。
「え、ええ、なんとか…
お二人は、大丈夫ですか?」
リチュは、ガキンとキズ―を揺らす。
「うう、気持ち悪い。」「おろろろろ。」
キズ―さんは、頭を抱えて立ち上がる。
ガキンに至っては、荷台の外に吐き出した。
「『すこし、張り切りすぎたかの。』
『申し訳ない。』」
「いえいえ、こんなに早く着いたんです。
それじゃあ、私達はもう行きますね。」
リチュは、ガキンとキズ―を抱え、荷台から降りる。
「『うむ、中まで行けず、すまんの。』
『妾、こんな姿じゃから、人間族から怖がられるのじゃ。』」
「大変ですね…」
「『ま、妾は長寿じゃし、認められるまで待つぞい。』
『お主を真似て、豊胸マッサージでも始めてみるのも、ありじゃの。』」
「ちょ、ちょっと、私がスライムって事、バレますので、真似てとか、言わないでください…」
『エキドナ』は、リチュの小声の注意に、「あっ」と、自分の口を手で隠す。
「『おっと、すまんの。』」
「気をつけてくださいね…それじゃあ、行ってきます。」
『ヒューマノン』に向かって走るリチュ。
『エキドナ』は、涙を流し、右手を振る。
左手には、サラシしか着けてない姿のどこから取り出したのか、ハンカチを持ち、それで涙を拭う。
「『行ってらっしゃい。』
『我が子の旅立ちは、こんなにも嬉しいのじゃの。』」
――――――――――
三人は『ヒューマノン』に着くと、リードを探す。
そんな彼らを、上品な服に身を包んだ二人の女性が、すれ違いざまに悪態をつく。
「なぁに?あの子達。田舎者?」
「服も顔も、泥で小汚いし、どこから来たのかしら。」
ガキンは、その悪態に怒り、女性を追いかけようとする。
「あいつら、ふざけやがって!」
キズーは、彼を後ろから抑える。
「待って、ガキン。
こんな場所で、暴れないで。」
その光景に、周りが騒がしくなる。
「ガキンさん、落ち着いて、実際私達汚れてますし。」
リチュも、ガキンを落ち着かせる。
「何があった?」
騒ぎを聞き付けたリードが、駆け寄る。
そして、顔を上げたリチュに気づく。
「あれ?貴方は…」
――――――――――
「わざわざ、忘れ物を届けに来てくれたんですね。
ありがとうございます。」
リチュは、リード達のいる城にお邪魔して、リードの忘れ物を渡す。
リードは、リチュから袋を貰い、感謝する。
しかし、その後怖い顔になる。
「しかし、リチュさん。
子供達を連れてくるのは、良くないですよ。
言ったじゃありませんか。今の森は、危険と…」
怒られたリチュは、落ち込む。
「はい、すみません。
止めたんですけど、ついてきてしまって。」
「とか何とか言って、本当は、わざと連れてきたんじゃないの?」
リズが、壁に寄りかかり、リチュを睨みつける。
「まだ言ってるのか!
そのつもりなら、ここまで来ないだろう!!」
タンクが、リズに怒鳴る。
「はいはい、そうですか。」
リズは、そう返すと、その場を立ち去る。
「すまない、リチュさん。
どうか、気にしないでくれ。」
タンクに、そう言われて、頭に疑問符を浮かべるリチュ。
「ま、今日はもう遅いですし、泊まっていってください。
王様には、私から伝えておきますから。」
リードは、そう言って、その場を後にする。
――――――――――
夜、暗い町を、鮮やかな光が差す。
その町の、片隅にある小さな建物中に、1匹のゴブリンが入る。
「ハロー、お客様。
本日はどんなご依頼で?」
中には、黒い長方形の物体があり、その面から、青い髪と青い唇のピエロの映像が映る。
スラリとした長身の彼は、丁寧に頭を下げ、ゴブリンからの話を聞く。
「ほうほう、人間族の味方をするスライムですか…
了解しました。
本来、スライム族は業務外ですが、人間族の味方をするとなれば、良いショーを見せてくれそうですから。」
ゴブリンの話を手帳にまとめた彼は、深々とお辞儀をし、そこで映像が消える。
ゴブリンは、悪魔のように笑った。
スライムさんの生存戦略 HAKU @HAKU0629
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