第10話 スライムさんの大冒険
私は騎士さま達が孤児院から帰った後孤児院の掃除をしていた。そこで私は肩に担げるぐらいの大きさの袋を見つけた。
「マザムさんこれどこにあったものですか?」
私はマザムさんに袋を見せる。するとマザムさんは驚いた顔をした。
「あら、大変。これリード様の持ち物だわ。」
どうやらリードさんが持ってきて忘れていった物らしい。
「騎士さま達ってどこに行ったんですか?私がこれ渡してきます。」
「きっと首都『ヒューマノン』に戻っている最中だと思いますが…行くには森を抜けないといけないから危ないと思います。」
「けど、大切なものだったら困っているでしょうし。行ってきます。」
「大丈夫ですか?朝、リード様が言っていた通り最近の森は危険ですし。何かあったら。」
心配するマザムさんを安心させるために私は怖いながらも胸を張って答える。
「大丈夫です!!尻尾巻いて逃げるのは大の得意分野ですから!!」
「それに俺達が守るから大丈夫だぜ!!」
私の後ろから声がして後ろを見るとそこには左手を顔に当て右手を上げたポーズをとるガキンさんと何かの本を大事に抱いたキズ―さんがいた。
「話は聞かせてもらったぁ。リチュ姉は俺が『ヒューマノン』まで護衛していくぜ!!」
「リチュお姉さんに恩返しもしたいからね。」
私を送り届けると言う二人に向かってマザムさんは腰に手を当て二人を止める。
「駄目よ!!森は危険だっていつも言ってるでしょ!!貴方達はここにいなさい!!」
「はっ?なんでだよ!!俺だって昨日特訓して強くなってるんだぞ!!」
「アンタ、化物に襲われたこと忘れたの⁉まだあの森にいるかもしれないんだよ!!」
マザムさんのその言葉に続いて私はマザムさんと同じように腰に手を当てて言う。
「そうですよ!それに私が見つけたときもオークに襲われていたでしょう?
森にはああいう危険な生物がうじゃうじゃいますよ?」
「り、リチュ姉まで…」
「で、でも僕達リチュお姉さんに恩返しが…」
「貴方達が安全にいることが恩返しです!言うこと聞けないなら一週間頭撫でませんからね!」
「うぅ…」
「おい!キズ―その程度で揺らぐんじゃねぇ!!」
私はキズ―さんとキズ―さんに怒るガキンさんに目線が合うようにしゃがんで笑顔を作る。
「それに、私は貴方達にもう二度も助けてもらってます。それでもまだ恩返しを、っと考えるのでしたらもっと大きくなってからお願いします。
それとこれを届けに行くのに止まってしまう私の仕事を手伝ってくれると私はとても嬉しいのですけど頼めますか?」
それに対してキズ―さんは小さくうなずいた。
「分かった。リチュお姉さんのお仕事しっかりやっておくからこっちは気にしないで行ってきて。
でも無事に帰ってきてね?」
「はい!それで、ガキンさんは?」
私は笑顔のまま答えるとガキンさんの方を向いた。
「っち、分かった分かったよ。」
ガキンさんはそういうとどこかに行ってしまった。
「あ!ガキン!!アンタ、リチュさんを見送りなさい!!
全くあの子は。あの子のことは後で叱っておくからね。気を付けていってらっしゃいリチュさん。」
マザムさんがそういうと私に向かって笑顔を見せてくれた。私もそれに対して笑顔で返す。
「はい、行ってきます。」
——————————
私は孤児院の従業員から『ヒューマノン』に向かう地図をもらい森の奥に進んでいた。
突如私の前に矢が飛んできて私の前の地面に刺さる。
「きゃっ!どなたです?」
私がそう聞くと森の中からゴブリン達がぞろぞろと姿を現した。
「ゴブリン族…背は人間族の子供程度の大きさで力も弱いですが団結力が強く集団での狩りを得意とする種族ですね…
逃げ場は…」
私は周囲を確認する。しかし全方位をすぐに囲まれた私が逃げ出す場所はなかった。
「キシャァァァァ!!」
矢が飛んできた方にいるドクロを頭にかぶったゴブリンが叫ぶと私の周りにいたゴブリンが一斉に飛び上がり私を手に持ったナイフで攻撃しようとする。
しめた!今のうちにスライムの姿に戻って下を通れば…
私はそう思って形を崩し始める。所で私の左側から小さな泡が無数現れ私を守るように私の周りを囲む。
その泡に当たったゴブリン達は泡がはじけると同時に仰向けに倒れる。
「これは…」
私はその光景を見て嫌な予想をする。そしてその予想が当たっていたことはすぐに証明された。
「あっち行けぇ!!ゴブリンども!!」
その叫び声とともにドクロを付けて杖を持ったゴブリン、人間族の中ではゴブリンウィザードと呼ばれる種類のゴブリンの横から金髪の少年が飛び出しゴブリンを攻撃する。
ドクロをかぶったゴブリンの首は中を舞い、地に落ちる。その光景を見て泡をくらって倒れたものを除くゴブリン達は全員逃げ出した。
ゴブリンは指揮官と兵士に分かれ、指揮官が倒れると兵士達は統率が取れなくなり逃げ出す。あのゴブリンウィザードが今回のゴブリン集団の指揮官だったらしい。
そんなことより私は目の前の少年に駆け寄る。
「ガキンさん⁉貴方、孤児院にいてくださいとあれほど…」
私が怒ってガキンさんの方に近づく。
「り、リチュ姉!!だって俺リチュ姉を助けたくて…
なぁ?キズ―。」
私はガキンさんが見ている方を見る。すると視線の先の茂みからキズ―さんが申し訳なさそうに出てくる。
「キズ―さん、貴方まで…」
「ぼ、僕は窓から抜け出すガキンを追いかけて…でも追いついたときにはリチュお姉さんがゴブリンに襲われてるからいてもたってもいられなくて…」
私はその答えを聞いて「はぁ」とため息をついてキズ―さんを手招きする。キズ―さんとガキンさんが私の前に来たところで私は二人を抱きしめる。
「助けてくださりありがとうございます。ですが…」
私は二人を抱きしめたまま立ち上がり、来た道を戻る。
「お二人は孤児院にいないといけません!!」
二人は暴れ私のお腹の部分に足が当たったりしたがあまりにも柔らかい体のスライムに…
「ぷはぁ、苦しいって殺す気かこのデカチチリチュ姉!!」
「リチュお姉さんお胸大きいから顔ふさがって息が出来ないよ…」
二人が私の胸の部分から顔を上げ言った。そうか、人間族は顔がふさがっていると死んでしまうのか。
私は「ごめんなさい。」と謝り一度二人を下ろしその後二人のお腹を抱え持ち上げる。
「いや、苦しくないけどこの持ち方はなんか嫌なんだが!!」
ガキンさんがまた叫んでいるけれど今度は大丈夫らしい。私は再び孤児院に戻ろうとして足を踏み出すところで…
「うわぁぁぁん!!」
二人とは違う子供の泣き声が聞こえてきた。
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