第7話 魔法の基礎勉強
リードさんに褒められた私はその後、キズ―さんの行った方向へ向かった。そこにはキズ―さんを含む多くのローブを着た子供達とリズさんがいた。
「あ!リチュお姉さんも来たんだ。」
キズ―さんが私に気づいて私の方に近寄って来たので私はキズ―さんの頭を撫でながら質問する。
「キズ―さん達はここで何をしているんですか?」
「僕たちはリズお姉さんに魔法について教わってるんだ。」
「魔法…」
確かマナを利用して攻撃とかを行うあの行為のことだったよな。スライム族はマナを栄養にはしているがそれ以外の目的でマナを使っていない。魔法を覚えればスライム族も威嚇や抵抗ぐらいは出来たりするのだろうか。
「私も魔法を学んでみたいです。一緒に勉強してもよいですか?」
私がリズさんに聞くとリズさんは驚いた顔をしたが「ああ、構わない…ですよ?」と言ってくれた。
——————————
「それでは改めて魔法についての勉強に戻る。
魔法を使うには空気中にあるマナを使うことは前回話したが狙った魔法を使うにはそれ用のマナを使う必要があったな。ということでお前たちに問題だ。炎の魔法を使いたい場合、何のマナを使えばよかったか?」
「はい、炎の魔法を使うには火のマナを使います。
他に水の魔法は水のマナ、風の魔法は風のマナ、大地の魔法には土のマナを使います。」
リズさんの問題にキズ―さんが手を上げて答える。
「ふむ、正解だ。他のマナもな。
まぁ、当然と言われれば当然だが念のためな。
さて、キズ―君が答えてくれたマナだがそれらの違いはどうやって確認すればいいかは分かるか?」
リズさんのその質問に子供達は考えだす。
「色で見分ければ良いのでは…?」
「色?」
私の回答にキズ―さんを除く皆さん不思議そうな顔をする。もしかして、人間族ってマナの色が見えないのかな。
「ああ…えーと…」
「場所でマナの量は違うのは分かるんだけどそれじゃあないよね?」
私が皆さんの視線に対してどう回答するか悩んでいると先程まで悩んでいたキズ―さんがリズさんの質問に回答する。
「あ、ああ。そうだな、確かに場所によってマナの量は違いはするがそれでは場所によって最も多いマナを使うことしかできないからな。
まぁこれに関してはしっかりとした正解があるかと言われると無いのだが。
例えば火のマナが多い空間は他の空間より暖かいし水のマナが多い空間は湿っている。風のマナの多い空間は乾いているし、土のマナが多い空間は少し粘々した感覚がある。
これは私の判断基準だがまぁマナによっての性質の違いを覚えることが大切だ。」
リズさんは答えた後自らの手に赤いマナ、火のマナを集め始め森の広い所に火の玉の魔法を放つ。
「さて、続いて実践に移ろうか。
お前たち一人ずつ己の出したい魔法を言ってからその魔法を出してみろ。
個人差の大きい『形』については気にしないから『属性』のみに集中したまえ。」
「それじゃあ僕から…最近練習している大地の魔法で。」
キズ―さんが手を上げ前に出る。リズさんは腕を組みそれも見守る。
「分かった。ではやってみろ。」
キズ―さんはリズさんの言葉にうなずき腕を頭の上にあげ、掌にマナを集め始めた。
だが私はマナが集まる途中に違和感に気づき呟く。
「あれ?風のマナの方が土のマナより多くなってます。それに火のマナも土のマナと同じぐらい集めてます…」
キズ―さんが腕を振り下ろすと集めたマナが彼の掌から離れ、地面で小さな人の形になろうとする。しかしマナ達はその後バラバラに離れていった。
「あれ?」
「ふむ、土のマナより風のマナのが多くなっていたな。
狙ったマナを集めるのが難しいなら最初は風のマナの多い高い位置ではなく低い位置でマナを集めたら土のマナのが多くなって大地の魔法ができるかもしれないな。」
「はい…」
キズ―さんはがっかりしたように頭を下げる。
私はリズさんの言葉に疑問を感じた。確かに土のマナより風のマナのが多くはなっていたが、火のマナがあと少し集められたら土のマナの量より多くなっていた。そこの指摘が無いことが私には不思議だった。
その後もいろいろな子供達が魔法を行うがリズさんが『もう少しで目的のマナを超えていた』ことに関しては指摘をすることが無かった。一応その状況でも狙った魔法を使えている者もいたのであまり問題にならないことなのだろうか。
「最後にリチュさん…でしたっけ?おま…貴方は?
魔法の練習をしますか?」
リズさんが私の方を向いて質問をする。私は前に出て答える。
「やってみます。」
えっと今までのマナの動きを見る限り、魔法の出し方はまず最初に特定の場所に必要なマナを集める、その後そのマナ同士をこすり合わせるようにして激しく動かさせつつ放つ。
マナは多少物が動くだけでそれに合わせて動いていることは分かるしマナの回収の仕方はスライム族の食事だから分かっている。問題は吸収を止めるだけでマナが離れていくか…
「それでは炎の魔法を使います。」
私はそう言って手の部分から火のマナだけを狙って吸収を始める。マナ美味しい…ってそうじゃなかった。集めたマナは出さないと…
私は少し体の中に入ってしまったマナも手に送ろうと自分の中のマナを手の部分に送る。
「あれは⁉」
リズさんが何かを呟いていたが魔法を集めることに集中している私には聞き取ることが出来なかった。
「えい!」
私は手をまえにだし体の中に入ってしまったマナごと一気に手に送り出す。その勢いで火のマナを体から出す。
火のマナは体の外に出た瞬間激しく動き手のひらから火柱を出すことができた。
「おぉ!!」
私は火柱に驚いて人間族の形から元の形に戻りかけた。
火柱が消えると子供達が私の所に走り寄ってきた。
「リチュお姉さんすごい!あんなの初めて見た。」
キズ―さんが私を褒める。私は「へへっ」と笑ってキズ―さんの頭を撫でる。
顎に手を置いたリズさんの真剣な眼差しを受けながら———
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