第46話:友情の絆
「え?俺はまだ何もしてないけど、」
蒼大は困惑した表情で答えた。
「私の代わりに怒ってくれて。なんかスッキリした」
モヤモヤしていた気持ちが、全部どこかに飛んでった。
「そっか、」
次瞬間、教室のドアが再び開き、歩乃華が入ってきた。
「美月!やっと見つけた」
そう言うと私の方に駆け寄ってきた。
歩乃華の顔には心配の色が浮かんでいた。
「歩乃華、」
肩が上下し、息が荒いのが伝わってきた。
「なかなか戻ってこないから心配したんだよ。私だけじゃなくてみんなも」
「ごめんね、」
あまりにも長話をしてしまってみたいだ。
「えっと…その、大丈夫?」
歩乃華は心配そうに私を見つめた。
その瞳に、優しさが溢れていた。
「うん、大丈夫だよ」
私は微笑みながら答えたけど、歩乃華は納得していない様子だった。
「…ごめん」
歩乃華は視線を落としながら言った。
彼女の肩が少し落ち、声が小さくなった。
「え?どうして歩乃華が謝るの?」
私は驚いて尋ねた。
歩乃華が謝る理由が分からなかった。
「こういう時、なんて慰めたらいいのか分からなくて、」
歩乃華は困ったように笑いながら答えた。
「ふふ、その気持ちだけで嬉しいよ。ありがとう」
そう思ってくれるだけで、そばに居てくれるだけで嬉しい。
「無理はしないでね。何かあったらすぐに言って。私が美月の足になるから!」
「歩乃華…。ありがとう」
みんな、当たり前のように私が犯人じゃないって信じてくれて、味方でいてくれる。
「当たり前だよ。友達なんだから」
歩乃華の言葉に、私は胸が熱くなった。
友達の存在が、こんなにも心強いものだと改めて感じた。
「そろそろ教室戻ろうかな」
私は立ち上がる準備をしながら言った。
今ならもう大丈夫だと思った。
どれだけ疑いの目を向けられようが、犯人扱いされようが、
信じてくれる人がいる。
それだけで何とかなるように思えたから。
「うん。みんな美月のこと待ってるよ」
歩乃華は優しく微笑みながら答えた。
「行こっか。立てる?」
蒼大が心配そうに尋ねた。
私は頷きながら立ち上がった。
足の痛みはまだ少し残っていたけど、平気なフリをした。
蒼大は歩乃華に目を向けた。
「歩乃華ちゃん。先に教室に戻って、美月が見つかったって報告してくれる?」
歩乃華は一瞬驚いたけど、すぐに頷いた。
「うん、分かった。美月、無理しないでね」
そう言うと、教室に向かって走り出した。
「お兄ちゃんも話聞いてくれてありがとう」
自分の気持ちを吐き出せたおかげで、気が楽になった。
「どういたしまして」
そう言うと優しく頭を撫でてくれた。
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