第45話:心の支え
お兄ちゃんがどうしてそんなことを言うのか知りたくて、答えを待っていた。
その時、教室のドアが開き、誰かが入ってきた。
「美月、ここにいた」
そのの声に、私は驚いて顔を上げた。
「蒼大、」
「…大丈夫?」
蒼大は心配そうに私を見つめた。
その瞳には、優しさが溢れていた。
「うん。大丈夫。もう歩けるよ」
私は足を少し動かしてみせた。
足の痛みはまだ残っていたけれど、蒼大を心配させたくなかった。
「違うよ。足じゃなくてさ、」
蒼大は私の目を見つめながら言った。
その言葉に、胸が締め付けられるような気持ちになった。
私のことを心配してくれてるんだ。
「…大丈夫だよ」
私は視線を落としながら答えた。
クラスの中に犯人がいるってことも、私が犯人だって疑われていることも、まだ不安だった。
だけど、平気なフリをした。
これ以上蒼大に心配かけたくない。
その瞬間、蒼大がそっと私の肩に手を置いた。
その温かさに、私は少しだけ安心感を覚えた。
「本当に大丈夫?」
蒼大の優しい声が、私の心に直接響いた。
「うん、大丈夫。ありがとう」
私のことを心配してくれる人がいる。
それだけで耐えられる。
「良かった。あ、みんな犯人探しはしないって」
蒼大の言葉に、私は少しだけ安心した。
クラスのみんなが協力してくれることが、私にとって何よりも嬉しかった。
「本当に?みんながそう言ってくれたの?」
私は蒼大の顔を見上げ、確認するように尋ねた。
蒼大は優しく頷き、微笑んだ。
「うん。みんな美月のことを心配してるよ。だから、無理しないでね」
心の中で、少しずつ不安が和らいでいくのを感じた。
「良かったぁ」
私はほっと息をついた。
「それから、佐々木さんが謝りたいって」
蒼大の言葉に、私は驚いて顔を上げた。
「え?」
佐々木さんがどうして、
「さっき犯人だなんて言ったから」
蒼大は少し困ったように言った。
「それは、私にも疑われるところがあったからで、別に謝られるような事じゃ、」
私は視線を落としながら答えた。
自分が疑われる理由も分かっていたから、佐々木さんを責める気にはなれなかった。
「勝手な憶測で美月を犯人だって決めつけた。謝るには十分な理由だと思うけど?」
蒼大は真剣な表情で言った。
その言葉に、少しだけ心が軽くなった。
「そうかな、」
私は少し困惑しながら答えた。
佐々木さんはほんとに納得したのかな。
「そうだよ。美月が犯人探しをしたくないって言ったから俺も我慢してるけど、そうじゃなかったら…」
蒼大の言葉に、私は胸が熱くなった。
私のために怒ってくれていることが、嬉しかった。
「ありがとう」
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