第43話:涙の温もり

「お兄ちゃん…っ、」


涙をこらえきれず、ぽろぽろと涙を流した。

お兄ちゃんの言葉が嬉しかったから。


「あぁもう。泣かないでよ」


お兄ちゃんは困った顔をしながらも、私の涙を拭い、優しく抱きしめてくれた。


「安心してつい、」


お兄ちゃんの胸に顔を埋め、泣きながら言った。

お兄ちゃんの温もりが、私を包み込んでくれた。


「まぁ、俺の知らないところで泣かれるよりかはいいんだけどさ」


お兄ちゃんは少し困ったように笑いながらも、優しく私を抱きしめ続けた。


いくら涙を止めようとしても、どうしてか止まらなかった。


涙が次から次へと溢れてきて、心の中の不安や悲しみが止めどなく流れ出していた。


「ごめん」

そう言って離れようとした。


私が泣き続けることでお兄ちゃんに迷惑をかけているのではないかと思ったから。これ以上お兄ちゃんを困らせたくなかった。


それに、お兄ちゃんの優しさに甘えてしまっている自分が情けなく感じた。


だけど、お兄ちゃんは優しく言った。


「いいよ。落ち着くまでこうしといてあげる」


その言葉に、私はさらに涙が溢れてきた。


お兄ちゃんの優しさが、心に深く染み渡った。


「俺が怒ったと思って立ち上がったりしたの?」


お兄ちゃんの胸に顔を埋めたまま、私は小さく頷いた。


あの時は、足の痛みなんてどうでもよかった。


「馬鹿だなぁ。それぐらいで怒るわけないのに」

お兄ちゃんは優しく微笑み、私の背中を撫でてくれた。


その手の温もりが、心に安心感を与えてくれた。


「お兄ちゃんはいつも、私の事信じてくれるもんね、」


お兄ちゃんの胸に顔を埋めたまま、小さな声で呟いた。


「美月…?」

お兄ちゃんは私の顔を覗き込んだ。


「ん?」

涙を拭い、お兄ちゃんの顔を見上げた。


「…足、痛いでしょ」

お兄ちゃんは心配そうに私の足を見つめた。


「うん…、」

少しだけ顔をしかめた。

足の痛みがまだ残っていた。


「保健室行く?連れていくよ」


お兄ちゃんは優しく私の手を握り、立ち上がろうとした。


「大丈夫。時間が経つと治まってくると思う」

首を振り、お兄ちゃんの手を引き止めた。


「そっか。…ねぇ、」

お兄ちゃんは私の手を握り直し、私を見つめた。


「何?」


全て見透かされているような気がするのは、気のせいだろうか。


「どうしてそんなに不安がってるの?」


お兄ちゃんは私の目を見つめ、真剣な表情で尋ねた。


その言葉に、胸が締め付けられるような気持ちになった。


「それは…」

視線を落とし、言葉を詰まらせた。


"私が疑われてるから"

なんて、言えるわけない。


「まさか…今回の件、美月が疑われてる訳じゃないよね」

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