第37話:疑惑の影


「美月!大丈夫?」

私に気づいた歩乃華が駆け寄ってきた。


歩乃華の顔には心配の色が濃く浮かんでいた。


「うん、大丈夫。ちょっと足をくじいただけ」


私は笑顔を作って答えたけど、内心はまだドキドキしていた。


「無理しないで。何か必要なことがあったら遠慮せずになんでも言って!」


「ありがとう。ところでさ、何事…?」

私は教室の中の騒ぎが気になって尋ねた。


「いや、それがさぁ」

歩乃華が言葉を濁した。


「何?」

私は不安な気持ちで聞き返した。


「誰かの仕業なんだってさ」

歩乃華の言葉に、私は驚きを隠せなかった。


「え、誰かの仕業…?」

私は信じられない気持ちで聞き返した。


「それって誰かがわざと倒したってこと?」

心臓がドキドキと早鐘を打ち始めた。


「それ以外考えられないんだよ」

クラスメイトの一人がが真剣な表情で答えた。


「どうして?」

私はさらに不安になった。


「あれはただ前に倒れたんじゃない」

彼の言葉に、私はますます混乱した。


「え?どういうこと、」

私は理解できずに問い返した。


「ネジで止めてあったところが外れて倒れたんだよ」


彼の説明に、私は驚きを隠せなかった。


「ネジが緩んでただけなんじゃ」

私は必死に反論した。


「本番直前まで点検してたからそれはありえないよ」

その言葉に、私は言葉を失った。


「じゃあ、本番中に誰かがわざとネジを緩めたってこと?」


そんなの、一体誰がなんのために…?


「だから、そうとしか考えられないんだって」

彼の言葉に、私は恐怖を感じた。


「一体誰が?」

私は震える声で尋ねた。


「それが…あの」

歩乃華が言葉を詰まらせた。


「ほとんど同じ場所に置いておくだけだから、最初と最後にしか人がいなくて。その担当は俺だった。だけど誓って俺はそんなことしてない!」


彼の説明に、私はますます混乱した。


「大道具の人達が責められるの嫌だからそんな風に言ってるだけじゃないの?」


誰かが反論した。


「なんだよ!俺たちが嘘ついてるって言いたい訳?」


誰かが怒鳴り声を上げた。


「いや、そうじゃなくて。そもそも一体なんのために?自分たちの劇を台無しにして得する人間なんていないじゃない」


「それはそうだけどさぁ」

誰かが不満そうに言った。


大波乱が起こっていて、私も何が何だか分からなかった。


「もしかして、ドレス破いたやつが同一犯なんじゃね!?」

突然、誰かが叫んだ。


「ドレス!そうだよ!その事件があった」


私はその言葉に驚いた。


「犯人はおいといて、どうしてこんなことをする必要が?どうしても劇を台無しにしたかった理由って何?」


「他のクラスのやつとか?」


「いや、他のクラスの奴がいたらおかしいからすぐに分かる。誰も他クラスのやつを目撃した人はいない」


「じゃあ誰がなんのために」

私はますます混乱した。


「ただの嫌がらせ…とか」

誰かが呟いた。


「嫌がらせ…?」

私は信じられない気持ちで聞き返した。


嫌がらせをするためだけにこんなことを…?



「もしかして…美月ちゃんの事を嫌いな誰かがわざと、劇を台無しにするようにしたんじゃ?」


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